まちづくりとは何か?取り組み事例・成功事例・仕事内容などを紹介
まちづくりは、地域活性化にもつながる大切な取り組みの1つです。また、自治体主導ではなく、地域住民が主体となって活動することが求められます。
さらに、まちづくりに携わるのは自治体職員だけでなく、さまざまな業種の人たちが関わることがポイントです。
そこで本記事では、まちづくりの定義や課題、貢献できる仕事、取り組み事例などを紹介します。
▶監修・解説:北川哲也氏
補助金や許認可の手続きを専門とする行政書士事務所Link-Up代表 北川哲也氏。
2011年に29歳で開業し7年間個人事務所として中小企業向け行政書士サービスを展開。2018年春に株式会社Link-Upを立ち上げ、士業サービスでカバーしきれないコンサルティングや顧問サービスをスタート。公益社団法人茅ヶ崎青年会議所の2021年度理事長や認定NPO法人NPOサポートちがさき参画など活動多数。
まちづくりの定義とは?
「まちづくり」の定義は、様々な有識者が複数の視点で表現していますが、わかりやすくまとめると、「身近な居住環境を改善」し、「地域の魅力や活力を高める」ということです。
つまり、暮らしに密着した住環境を整備しながら、地域の魅力と活力を高めるための総合的な取り組みです。
戦後に深刻化した公害や都市集中を背景に、住民自らが声を上げる運動として始まりましたが、いまでは住民参加型のボトムアップを重視し、自然や文化を守りつつ新たな産業や観光を育てるなど、多面的な活動へと広がっています。
さらに、外部人材や新しいアイデアを取り入れ、コミュニティを再生し続けるプロセスも「まちづくり」の大切な要素です。
まちづくりに貢献できる仕事・職業・働き方
行政や企業、NPO・一般社団法人など、多岐にわたる分野でまちづくりに関わることができます。
新規事業や観光誘致はもちろん、既存産業をブランド化し、発信する取り組みも重要です。また、住民と密接に関わり、コミュニティ面を強化する役割も欠かせません。
それぞれの仕事で必要となるのは、自分の専門性を地域のどこに活かすかを考える視点と、他者と連携して課題に挑むコミュニケーション力です。
地域プロモーション(ライター・デザイナーなど)
地域の歴史や自然環境を新たな切り口で紹介し、外部からの関心を高めるのがプロモーションの要です。
● ライター:取材や執筆を通じて、企業や店舗の魅力を文章で表現
● デザイナー:ロゴやチラシ、ウェブデザインでビジュアルを統合
SNSや動画など多角的メディアを活用し、イベントやキャンペーンを企画するケースも増えています。
こうした活動を重ねれば、地域のブランド力が高まり、観光客や企業誘致にもつながるでしょう。
地域おこし協力隊・地域振興スタッフ
任期制で地方の課題解決を担い、外部の視点を活かして地域を変える存在です。人口減少が進むエリアでは、空き家再生や高齢者支援、イベント運営などに携わり、住民との交流を密に行います。
こうした実践を通じて、人間関係が深まり、よそ者の目線で新しいアイデアを提案できるのが強みです。
一方で、地域に溶け込むためには、文化や慣習を理解する努力が必要ですが、連携が進めば移住促進や地域ブランド強化など、目に見える成果も期待できます。
観光ガイド・旅行プランニング
地域全体を舞台にした「体験」を作り出す仕事です。ガイドは地元の歴史や行事を案内し、旅行プランナーは宿泊・飲食店や工芸家、農家などと連携して独自のプログラムを組み立てます。
近年は農泊やエシカルツーリズムといった持続可能な旅も注目され、美しい自然や文化を尊重した企画が求められています。
また、映画ロケ地巡りやスポーツ大会と組み合わせるなど、多彩なプランが可能です。観光客と住民の相互理解を深め、地域経済を下支えする重要な役割を担います。
地域活性化コンサルタント・企画職
データ分析やヒアリング調査を組み合わせて地域の状況を把握し、まちづくりの戦略を提案・実行する専門家です。
人口動向や経済指標といった定量情報だけでなく、住民へのインタビューなど定性面も踏まえ、最適解を導きます。たとえば、移住者向け制度やテレワーク拠点の整備、観光地の多言語化施策などを幅広く検討します。
また、行政・企業・NPOと調整しながら、プロジェクトを効率的に進める推進力が求められます。最終的には住民との信頼関係を築き、理想と現実のギャップを埋める要となるでしょう。
設計事務所のプランナー
大規模再開発から古民家リノベまで、都市計画やまちの未来像を形にするプロフェッショナルです。
道路や公共施設の配置、ゾーニング計画などに法的知識が不可欠なうえ、住民説明やワークショップで多様な意見を取り入れ、現実的なプランを描きます。
近年はコンパクトシティやスマートシティの考え方が注目され、IT企業や環境団体との連携が増加しています。
デザイン力に加え、ソフト面を含めた街づくりのコーディネート能力が問われるでしょう。
地方自治体職員・公務員
行政の立場から、インフラ整備や福祉、文化振興まで幅広く手がけるのが自治体職員です。
たとえば、以下のような取り組みに携わります。
● 国や都道府県と連携し、補助金や助成金を活用した事業を展開
● 住民アンケートや議会などを通じた声を政策へ反映
しかし、DX推進や民間との協働をリードできる人材が不足気味です。
地域間競争が激化する中、公務員には柔軟な発想と連携力が期待されています。公の視点で地域を支え、まちの活力を生み出す根幹を担う存在といえるでしょう。
まちづくり系NPO・一般社団法人の職員
営利を目的とせず、住民が主体的に動くまちづくりを支援する組織で働きます。
たとえば、NPOや社団法人の取り組みとして、以下が挙げられます。
● 子ども食堂やコミュニティスペース運営など、草の根レベルの取り組みを支援
● 資金調達にクラウドファンディングや企業とのコラボを活用
● 住民参加型のワークショップやセミナーを主催し、具体的な解決策を実践
行政・企業が動きにくい領域で住民のアイデアを形にし、地域活性化の新たなモデルを作る柔軟性が大きな特徴です。
まちづくりの取り組み事例
地域の特性や課題によって、まちづくりのアプローチは大きく異なります。
高齢化の進むエリアでは福祉サービスを強化し、ベッドタウンでは商業エリア再生やコミュニティイベントが盛んです。
いずれの場合でも、行政だけでなく住民やNPO、企業が協力し合い、アイデアを具体化していくことが成功のポイントとなります。
ここでは、多彩な手法で成果を上げている自治体の事例を取り上げます。
兵庫県加古川市
兵庫県加古川市では、高校生が中心となった「地域デザイン講座」が実施され、NECのプロボノ支援を受けながら多彩なアイデアを生み出しています。
高齢者向けの交流スペースや新たなイベント企画など、若い世代ならではの発想が市民の関心を集め、持続可能なまちづくりのきっかけになっています。
ICTの活用や地元企業との連携も進み、高校生主体のプロジェクトが市全体を活性化させるモデルとなっています。
茨城県つくばみらい市
高砂熱学工業との包括連携協定に基づき、公共施設や学校の空調改善、災害時対応を見据えたエネルギーシステム開発などを推進中です。
広報紙で活動報告を共有し、住民への理解促進を図っている点も特徴です。
企業側は地域連携による新たなビジネスモデルを模索し、自治体は先進技術を導入できるWin-Winの好例として注目を集めています。
新潟県燕市
「まちあそび」「まちこらぼ」のコンセプトで、多世代が参加できるラジオ番組づくりやワークショップ、スイーツイベントを多数開催しています。
地元企業との共同プロジェクトで新商品開発や観光誘致も活性化しています。
こうした「遊び」を核にしたイベント群が、住民の愛着を育て、外部から訪れる人にも新鮮な体験を提供している点が特徴です。
徳島県神山町
IT企業やクリエイター誘致で地方創生を実現した先進事例として知られます。
廃校や空き家をオフィス・作業スペースに改装し、移住者と住民の交流を促進しています。また、農業ノウハウの共有や古民家再生など、多方面にわたる成果が生まれています。
人口5000人ほどの小さな町が、新たな働き方とコミュニティづくりで国内外の注目を集める成功例です。
埼玉県横瀬町
官民連携プラットフォーム「よこらぼ」を核に、企業や大学、NPOと協力して空き家活用やイベント企画を推進しています。
小規模自治体ながら、空き家を宿泊施設やワークスペースに転用するなど、新しいアイデアがスピーディーに実現しています。
定期的な情報共有と成果の公開を通じて、多くの関係者が共通目標を持ち、課題解決を加速させる仕組みを築いているのが特徴です。
沖縄県石垣市
観光地として知られる石垣市では、ワーケーションによる交流人口拡大に力を注ぎ、第5次総合計画でテレワーク拠点や宿泊プログラムを整備しました。
南国の自然を楽しみながら仕事ができる環境をアピールし、移住希望者やリピーターを増やしています。
観光だけに頼らず、多彩な働き方を受け入れる柔軟なコミュニティづくりが注目されています。
長野県池田町
ワイン用ぶどう栽培を柱に、農業と観光を融合させた地方創生を進めています。
土地改良事業で作付け環境を整え、ワイナリー新設や農家の転換を支援し、地元産ワインをイベントでPRするほか、若手農家の育成や新規就農促進にも成功しました。
また、景観保全や文化継承とも連動しながら、観光客へのブランドアピールを強化し、地域経済を支える大きな柱となっています。
まちづくりへの取り組みの課題や問題点
まちづくりは、多様な利害関係者が関わるため、住民参加不足や財政難、専門人材不足など複雑な課題を抱えやすいのが実情です。
また、まちづくりに一定の成功を収めている自治体と、まちづくりが思うように進まない自治体には、以下のような違いが見られます。
行政と民間が連携して進める際にも、意思決定スピードや成果指標の考え方が異なり、調整不足による摩擦が生まれるケースがあります。
DXが遅れれば情報発信や住民参加も限られ、せっかくの施策が十分に広がらない可能性もあります。
こうした問題を克服するには、柔軟な制度設計や多方面への情報共有が欠かせません。
住民参加とコミュニケーション不足の課題
住民が当事者意識を持たなければ、まちづくりは机上の空論に終わりがちです。しかし、開催時間や世代間ギャップなどで意見が集まりにくく、プロジェクト開始後に反対意見が噴出するリスクもあります。
それを解決する1つの手段として、以下のアイデアが有用です。
● 夜間・休日の対話イベント:働き世代や子育て中の家庭も参加しやすい
● オンラインアンケート:忙しい人や遠方在住の声も吸い上げられる
このように、多様なチャネルを活用して幅広い層の意見を集め、地域の多様性を反映した計画を目指すことが重要です。
財政基盤・資金調達の困難
大型の事業を進めるうえで、限られた自治体予算や補助金に依存していると、制度変更や申請手続きの煩雑さで停滞しがちです。
民間投資を呼び込むには収益性や将来的ビジョンを明確に示す必要があり、クラウドファンディングやふるさと納税でも同様に、魅力的なプレゼンテーションが不可欠となります。
資金不足はプロジェクト拡大の大きな制約ですが、逆に新たなアイデアや主体を巻き込み、地域全体で工夫を凝らすきっかけにもなり得ます。
行政と民間連携の摩擦・調整不足
行政は法令順守や予算管理に時間がかかり、民間企業は市場競争でスピードや柔軟性を重視するため、歩調が合わない場合があります。
補助金の配分や成果指標をめぐって双方の思惑がすれ違えば、プロジェクトが停滞しがちです。
初期段階で目的や役割を明確にし、定期的に進捗を確認する場を設けることが、円滑な連携とWin-Winの関係構築に欠かせません。
専門人材不足と組織体制の弱点
都市計画やICT、マーケティングなど多分野の知識を持つ人材が不足すると、優れた構想も実行段階でつまずきます。
外部人材を招へいしようにも、受け入れ態勢や住環境の整備が不十分だと定着が難しいでしょう。
また、自治体内部でセクションが縦割りになっていると、総合的にプロジェクトを指揮できるリーダーが育ちにくいという問題も起こります。
大学との連携やオンラインでの専門家活用、コーディネーター配置など、多面的な対策が求められます。
デジタル化遅延と情報発信の課題
SNSやウェブサイトを活用した情報発信が一般的になった一方、ITインフラやリテラシー不足で取り残される地域もあります。
行政サイトが古いままだったり、高齢住民にオンラインの知識が浸透していなかったりすれば、意見交換や最新情報の共有が滞る可能性が高いです。
紙媒体とデジタルを併用し、住民が気軽にアクセスできる仕組みづくりを進めると同時に、IT人材の育成やサポート体制を整えることが今後の大きな課題です。
まちづくりには地域資源の活用と発信が重要
地域特有の自然や文化、産業などを見いだし、外部に効果的にアピールすることで、まちづくりが継続的に活性化していきます。
たとえば、以下のような例が挙げられます。
● 伝統工芸や郷土料理など唯一無二の魅力をデジタルで発信し全国へPR
● 空き家や歴史的建造物をリノベーションし、地域ブランディングの基軸に
● オンラインで資源情報を共有し、住民と観光客の声を施策へ反映
魅力ある資源を商品化や観光コンテンツへ展開すれば、新たな雇用と収益を生み出すだけでなく、住民が自ら地域を再認識するきっかけにもなるでしょう。
ハード面の整備だけで終わらず、住民一人ひとりが地域の宝を再発見し、発信し続ける文化を育むことこそが、本当の意味での「住み良いまち」を形成する重要なポイントになるのです。
最新のトレンドや製品・サービスの情報を入手するには、展示会への参加が効率的です。
自治体・公共Weekは「自治体DX」「地方創生」「スマートシティ」「防災」「インフラメンテナンス」「福祉」につながる製品・サービスを求めて、全国から自治体や官庁、公共機関が来場する展示会です。その場で商談も可能で、課題解決に意欲的な自治体と繋がることができます。
年に1回、東京ビッグサイトで開催しております。ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか?
【出展社・来場者募集中!】
全国から自治体関係者が来場する日本最大の展示会
【出展社・来場者募集中!】
全国から自治体関係者が来場する
日本最大の展示会
▶監修・解説:北川哲也氏
補助金や許認可の手続きを専門とする行政書士事務所Link-Up代表 北川哲也氏。
2011年に29歳で開業し7年間個人事務所として中小企業向け行政書士サービスを展開。2018年春に株式会社Link-Upを立ち上げ、士業サービスでカバーしきれないコンサルティングや顧問サービスをスタート。公益社団法人茅ヶ崎青年会議所の2021年度理事長や認定NPO法人NPOサポートちがさき参画など活動多数。