自治体の地域PR成功事例まとめ
~観光客の増加・関係人口の創出・定住促進につながった取り組みを徹底紹介



はじめに

自治体の地域PRは、観光客を増やすだけでなく、関係人口を増やしたり、移住につなげたりと、目的が多様化しています。それゆえに、目的が曖昧なままだと効果につながりにくくなります。

この記事では、
・地域PRが重要な背景
・全国の事例
を観光客や関係人口の増加、定住促進などの多様な目的を中心に紹介します。



自治体の地域PRにおいて、押さえておくべき背景


都市部への人口集中

都市部への人口集中が続くことは、自治体の地域PRが注目される大きな理由の一つです。総務省統計局によると、東京圏を構成する東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県はいずれも転入超過となっています(参照*1)。

人口集中は、地方における担い手不足や地域サービス維持の困難などといった課題をもたらします。自治体は、人口の流出を防ぎ、流入を増やすための情報発信と受入体制づくりを進める必要があります。
そのため、地域PRは、観光の誘客だけでなく、関係人口の創出や移住検討者の獲得など、地域の持続性を支える施策として位置づけられやすくなっています(参照*2)。


テレワークの広がりによる二地域居住の推進

もう一つの背景は、テレワークによって二地域居住をする人々が増えたことです。国土交通省によると、雇用型就業者のテレワーカー割合は、首都圏で3割を超えています(参照*3)。
国土交通省は、地方への人の流れの創出・拡大を目的に、二地域居住の環境整備を制度面から後押ししています(参照*4)。

さらに国の総合戦略でも、地方創生テレワークの導入・定着による「転職なき移住」の推進が掲げられています。地方自治体は、二地域居住・ワーケーション・週末滞在などがしやすい環境であることをPRすることで、人口減や経済的な課題へアプローチすることが可能になります(参照*2)。


観光・関係人口・定住促進、目的別で異なるPR

地域PRには、大きく分けて
・観光客の増加
・関係人口の創出
・定住の促進
という、三つの目的があります(参照*5)。

観光客増加のための地域PRは、「来てもらう」だけでなく、地域内での満足度や消費される内容まで設計する視点が重要です。魅力訴求と同時に「体験の質」「現地の受入能力」「データで改善する仕組み」まで含めて考える必要があります(参照*6)。

次に、関係人口の創出のための地域PRについてです。内閣府地方創生推進室によると、関係人口とは「特定の地域に継続的に多様な形で関わる」人々のことです(参照*7)。

このPRでは、短期の来訪よりも、長期的な接点を増やす視点が必要です。関係人口は「きっかけ・土壌づくり」と「受入地域での取組」を両輪で進め、窓口設置や情報発信、具体の活動につなぐコーディネートが重要だとされています(参照*7)。

定住促進の地域PRは、イメージ訴求以上に、移住の意思決定を支える情報の提供が重要です。移住検討段階に応じて「仕事」「住まい」「暮らし」「移住相談」「自治体窓口」などの情報提供・相談支援を整備する必要があります。PRでは「暮らせる根拠(仕事・住居・支援・相談導線)」を揃え、比較検討しやすく提示することが大切です(参照*2)。


観光客の増加につながった自治体の地域PR事例


■DMOとの共同による、データを活用した観光施策の設計

長野県山野内町、島根県の事例

DMO(観光地域づくり法人)とは、観光庁によると、地域の「稼ぐ力」を引き出しつつ、観光地経営の視点で戦略を策定し、関係者と協働して観光地域づくりを進める、司令塔としての機能を備えた法人です。地域の観光戦略における、データ収集・分析、戦略策定、プロモーションを支えています(参照*8)。

長野県山野内町志賀高原では、観光協会サイトに宿泊・飲食・体験等の直販機能を備え、取引データをマーケティングに活用することで、直販売上・利益確保と誘客促進につなげています。さらに、消費データも活用し、域内の回遊やリピートの促進にも成功しています。観光協会が、観光地経営を担うDMOとして、直販・データ分析・商品改善・再来訪促進を担いつつ、地域の観光事業を束ねている点がポイントです(参照*9)。

また、島根県では一般社団法人隠岐ジオパーク推進機構が提供する観光ポータルサイト「隠岐の島旅」を通じて予約決済や在庫管理を可能にし、来島前に体験商品等の予約を促すメール配信を行っています。認知→検索→予約→来島という流れの把握と、データによる観光施策の立案が可能になるため、一度の観光を訪問機会の増加につなげるPRになっています。ここでは、隠岐ジオパーク推進機構が予約・在庫・決済を一元化し、事業者横断の集客とデータ還元を行い、観光施策を設計しています。(参照*10)。


■地域内での移動や滞在日数を伸ばすコンテンツの設計

広島県尾道市と愛媛県今治市・上島町、徳島県小松島市・勝浦町の事例

観光による経済効果などを高めるためには、観光客数の増加だけでなく、地域内の移動を増やすことや滞在日数を伸ばす取り組みが重要になります(参照*11)。

広島県尾道市と愛媛県今治市・上島町は、しまなみ海道を周遊するサイクリストの利便性向上を狙い、スマートフォンアプリ「SHIMANAMI JAPAN」を活用した情報発信を行っています。アプリには観光情報検索・ルート検索・地図表示に加え、レンタサイクル予約やSNS投稿、プッシュ通知によるレコメンド配信機能を実装し、主要サイクリングロード外のエリアへも誘導する設計です。あわせて、レンタサイクルのオンライン予約システムとキャッシュレス決済の導入も進め、予約確認・決済の待ち時間短縮など旅行者の利便性向上と、事業者側の業務効率化につなげています(参照*12)。

徳島県小松島市と勝浦町は、自地域が「目的地化されず通過点になっている」という課題を踏まえ、通過型観光から滞在型観光への転換を目標に、PRを行っています。両自治体は、体験商品の新規造成・磨き上げに加え、宿泊・飲食・体験を組み合わせた旅行商品の造成、OTA掲載などの情報発信強化で周遊と滞在を促進しています。域内拠点との連携や官民協議会による受入体制の整備も盛り込み、PRと商品設計を一体で進める点が特徴です。(参照*13)。


■旅行者の満足と住民の快適な生活の両立

京都府京都市、北海道美瑛町の事例

観光の地域PRは、旅行者の満足だけを追うと、混雑やマナー問題で住民の負担が増えることがあります。続けていくには、住民の暮らしと折り合う形で観光を設計し、その方針も含めて伝える必要があります。

京都市は、市バス混雑・観光地の過度な混雑・マナー問題が課題です。そこで、デジタルマップ等でのルート誘導、交通混雑緩和の情報発信、観光効果の見える化による市民共感促進、「京都観光モラル」の実践促進などを組み合わせています。短期の集客だけでなく、住環境への影響を抑えながら観光の継続性の確保を目指しています(参照*14)。

北海道美瑛町は、地域住民の生活エリアと観光エリアが重複し、渋滞やマナー違反が生活に影響している点を踏まえ、町を中心に協議会を発足しました。駐車場改修やトイレ増設、混雑可視化カメラの調査、デジタルサイネージによるマナー啓発など、観光客の受入環境を整えつつ、マナーの浸透を図っています(参照*15)。


関係人口の創出につながった自治体の地域PR事例


■マッチング・コミュニティ型で継続接点を作る

岐阜県飛騨市、富山県氷見市の事例

関係人口づくりにおいては、地域と人をつなぎ、関わりを続けやすくする「場」を作ることが重要です(参照*16)。

岐阜県飛騨市は「飛騨市ファンクラブ」を運営し、市外の人とつながり、交流や活動を生むコミュニティを育てています。会員数は1.6万人超とされ、会員の声から生まれたさまざまな取り組みも展開されています。さらに、市民・事業者の困りごとや仲間募集を“参加プログラム”として掲載する「ヒダスケ!」を運営し、地域と関わる入口を常設することで、来訪・再来訪の機会を作っている点が特徴です(参照*17)。

富山県氷見市では「ヒミタスカルチャー事業」を行っています。氷見市のファンクラブ会員が、市民の「ちょっとした作業や困りごと」を手伝い、地域の人と直接関わることで、関係を深める仕組みになっています。さらに、参加者には市と依頼主から特典(お礼)が用意されています。地域のお手伝いを、労働ではなく、交流と文化体験として設計している点が特徴です(参照*18)。


■イベント・参加型プログラムで巻き込む

香川県丸亀市、三木町の事例

関係人口を増やすには、地域を訪れるきっかけ作りと、行動の記録が必要です(参照*16)。

香川県丸亀市は、若者の流出抑制や移住者増に加え、関係人口の創出を目的に、市民活動団体との協働で「まるがめ体験ツアー」を実施しています。地域の案内役を丸亀市民が担い、暮らしの空気感や地域の人との接点を参加体験として設計している点が特徴です(参照*19)。

香川県三木町は、「ふるさと住民票事業」を実施しています。登録者を対象に町内でツアー型イベントを開催し、町への愛着や関わりの深化、今後の来町促進を図っています。さらに、特産品があたる抽選なども行っており、町内外にかかわらず、継続して関係しつづけることができる設計になっています(参照*20)。


■企業連携・人材還流を生む

山形県西川町、島根県の事例

関係人口は、企業との連携で一気に増加することがあります。また、企業との連携は、発信だけでなく事業や投資につながる場合があります(参照*16)。

ITサービスを提供する株式会社キッチハイクは、関係人口に関するデータの集約と可視化を行うオールインワンシステム「つながるDX」を提供しています(参照*21)。
活用例として山形県西川町では、ファンクラブサイトの立ち上げと入会応援キャンペーンを実施し、入会者へのポイント付与、特産品が当たる抽選を実施しました。ファンクラブは2週間で300人以上の新規登録を達成しました。(参照*21

島根県は、島根の関係人口サイト「しまっち!」による、地域外の参加者と県内の地域団体をつなぐ交流イベント「しまっちんぐ」を開催しています。「しまっちんぐ」をきっかけに、島根県壱岐市(壱岐島)と株式会社LIGがマッチングしました。LIGのスタッフが島のさまざまな場所で仕事をする「どこでもオフィス」に取り組み、島の魅力を新しい目線で発見・発信しました。その活動を通じてLIGは、廃業していた古い宿泊施設を購入・リノベーションし、「LAMP壱岐」を開業しました(参照*22)。


定住・移住促進につながった自治体の地域PR事


■移住プロモーション動画・SNSで認知を獲得

兵庫県豊岡市、宮崎県小林市の事例

移住の地域PRは、生活のイメージを持てるか情報を伝えることが鍵になります(参照*23)。そのため、動画やSNSを活用する自治体が増えています。

兵庫県豊岡市は「飛んでるローカル豊岡」という統一ブランドのもと、移住相談・住まい・仕事までをワンストップサービスで提供する体制を構築していると紹介しています。その結果、移住ポータルサイトは月間5万PV、地域おこし協力隊の定着率は66.7%、2016年度からの累計移住者数は374組683人にまで達しました(参照*24)。

宮崎県小林市は、移住促進PRムービー「ンダモシタン小林」を公開しています。「ンダモシタン」は現地の方言で「おやまあ!/なんということだろう」という意味です。長く小林市に暮らすフランス人男性が案内役となり、豊かな自然やきれいな水、満天の星空、食、人の温かさ、トラクター渋滞といった「小林あるある」を紹介しています。公開後には、移住相談件数が増加しました(参照*25)。


■空き家活用・住まい支援と一体で移住導線を作る

栃木県栃木市、京都府南丹市の事例

移住は、住居が決まらないと前に進みません。地域の魅力をPRするだけでなく、住まい支援も一体となって考える必要があります。

栃木市は、市の「空き家バンク」で売買・賃貸物件を紹介し、定住・二地域居住希望者とのマッチングを行っています。さらに、空き家バンク登録物件を対象にリフォームや家財処分の補助を用意し、「見つける→直す→住む」までをパッケージ化しています(参照*26)。

京都府南丹市では、地域団体が空き家を改修し、地域交流スペースを併設した移住体験施設(お試し住宅)として運用しています。移住希望者が、移住を検討する段階で地域との接点を持てる点が特徴です(参照*27)。


■移住定住ポータル運用・Web広告で検討者を獲得

大阪府泉大津市、鳥取県の事例

移住の検討者は、最初から自治体名で検索するとは限りません。「子育て」「仕事」「家賃」などの条件から探し始めることも多いです(参照*23)。そこで、必要な人に情報を届ける手段として、Web広告を使う自治体もあります。

大阪府泉大津市は、移住・定住特設サイトへの流入を増やすため、20~30代の子育て世代に狙いを定めて広告配信を行っています。市のブランドメッセージ「あたらしいがあるらしい 泉大津」の訴求とイメージ向上を目指しています。表示回数・クリック率・流入数・流入者属性を定期分析し、配信設定を改善することで、移住見込み層へ継続的に情報を発信している点が特徴です(参照*28)。

鳥取県では、ふるさと鳥取県定住機構の提供する移住定住ポータルサイト「鳥取来楽暮」にて、県外の20~40代の若者・子育て世代へ訴求しつつ、移住イベントのLPアクセスと申込増を狙ったWebプロモーションを実施しています(参照*29)(参照*30)。


その他、ユニークな地域PRの事例


■市職員の採用PRを“音楽MV化”

滋賀県長浜市の事例

滋賀県長浜市は、職員採用PRソング「We Want Ones-長浜市役所で働こう-」とMVを作成し、市公式YouTubeで公開しました。若手職員中心のチームが、作詞・作曲から撮影・編集まで行い、市役所業務の内容を紹介しています。公開後3日で再生1万回を突破し、翌年度の一般事務職の受験者数が75人から132人(約1.8倍)に増加しました(参照*31)。


■サテライトオフィスの誘致

徳島県の事例

サテライトオフィスとは、他事業所やシェア・コワーキング等を就業場所としてテレワークを行うために、本来の勤務地から離れた場所に設けられた拠点のことです(参照*32)。

徳島県は、公式サイト「Tokushima Working styles +」上で、サテライトオフィス誘致の情報を掲載しています。利用形態(滞在型/循環型)や開設の相談窓口まで明記しており、進出企業と地元企業・住民の関わりから新しい取組(イノベーション)が生まれている事例も紹介しています。(参照*33)。


おわりに


自治体の地域PRが重要になる背景としては、都市部への人口集中と、二地域居住の増加が、挙げられています。

自治体の地域PRは、関係人口・観光・定住促進で目的が変わり、必要な仕組みも変わります。地域の魅力をただ発信するだけでなく、受け入れ方法や、関係継続のための接点、データでの検証まで含めて設計することで、効果を上げることにつながります。

成果を出している地域PRには、単なる魅力発信にとどまらず、データや窓口、予約・参加など行動の継続を促している点がポイントです。明確な目標設定と、地域間での協力が必要になります。

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参照


(*1) 統計局 住民基本台帳人口移動報告 2025年結果

(*2) デジタル田園都市国家構想 – デジタル田園都市国家構想総合戦略|デジタル田園都市国家構想

(*3) 国土交通省 令和6年度テレワーク人口実態調査-調査結果

(*4) 地方振興:二地域居住の推進 – 国土交通省

(*5) 令和5年度版 全国シティプロモーション実態調査 結果報告書 2024年3月 シティプロモーション自治体等連絡協議会

(*6) 観光庁 新たな観光立国推進基本計画(案)の概要等について

(*7) 「関係人口」について

(*8) 観光庁 – 観光地域づくり法人(DMO)とは | 観光地域づくり法人(DMO) | 観光政策・制度 | 観光庁

(*9) 長野県山ノ内町 志賀高原エリアにおける観光プラットフォームを活用したCRM実証プロジェクト 志賀高原観光DX推進コンソーシアム

(*10) 国土交通省 スマートアイランド推進カタログ

(*11) 国土交通省 第I部 観光の動向

(*12) 国土交通省 観光分野のDX推進に向けた優良事例集~地域一体で進める観光DX~

(*13) 内閣官房 地域再生計画

(*14) 国土交通省 1.地域概要

(*15) 国土交通省 1.地域概要

(*16) 内閣府 関係人口の創出・拡大について

(*17) 『ヒダスケ!-飛騨市の関係案内所-』プログラム登録のご案内 – 飛騨市公式ウェブサイト

(*18) ヒミタスカルチャー事業/氷見市

(*19) 「まるがめ体験ツアー」レポート【令和7年度 提案型協働事業】 – Marugame Happy Life – 丸亀市公式ホームページ

(*20) ふるさと住民票の特典・サービス|三木町役場

(*21) AIS | 一般社団法人 行政情報システム研究所 – 2023年12月号 トピックス データ一元管理による関係人口の可視化アプローチ | AIS | 一般社団法人 行政情報システム研究所

(*22) しまっちんぐ|国土交通省

(*23) 内閣官房 地方移住の検討段階に応じた支援情報

(*24) デジタルと人的支援が融合した移住促進豊岡市のUIターン促進と関係人口拡大の新戦略(自治体インタビュー)|まちの掲示板|一般社団法人 自治体DX推進協議会

(*25) 小林市PRムービー第1弾「移住促進PRムービー“ンダモシタン小林”」公開/宮崎県小林市公式ホームページ -Kobayashi City-

(*26) 栃木市空き家バンク

(*27) 近畿地方整備局 近畿管内における空き家活用事例

(*28) 泉大津移住PR

(*29) 鳥取県移住定住ポータルサイト

(*30) 令和7年度鳥取県移住定住促進Webプロモーション業務委託仕様書

(*31) 長浜市 職員採用PRミュージックビデオ(We Want Ones-長浜市役所で働こう-)

(*32) 厚生労働省 テレワーク導入状況

(*33) 徳島サテライトオフィスプロモーション



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