地方創生2.0とは? 背景と自治体に求められる取り組みを解説



はじめに

人口減少が想定を超える速さで進み、東京圏への一極集中が続くなかで、地方創生2.0という新たな政策の枠組みが動き出しました。これは単なる地域活性化策ではなく、日本全体の活力を取り戻す経済政策であり、多様な幸せを実現する社会政策として位置づけられています。

この記事では、地方創生2.0の定義と背景、政策の全体像、そして自治体に求められる取り組みの具体的なポイントを整理します。現場で何を確認し、どのような行動につなげるべきかを把握するための手がかりとしてご活用ください。



地方創生2.0とは何か──定義と基本理念


地方創生2.0の定義と「1.0」との違い

地方創生2.0は、10年前に始まった地方創生の取り組みを刷新する政策です。地方創生2.0基本構想では、10年前の「1.0」ではなく全く新しいものにするという意味を込めて名付けたとして、「令和の日本列島改造」として力強く進めていくと述べています(参照*1)。

石破前首相は2024年12月の会見で、これは単なる地方の活性化策ではなく、日本全体の活力を取り戻す経済政策であり、国民の多様な幸せと楽しい地方を実現する社会政策であると述べました。あわせて、これまでの10年間の反省を踏まえたうえで新たな取り組みを進めると表明しました(参照*2)。

1.0との違いを読み解くには、政策の位置づけ自体が「地域活性化策」から「経済政策かつ社会政策」へ変わった点に着目するとよいでしょう。自治体の担当者は、基本構想で示された考え方と自地域の課題を照らし合わせ、どの分野で取り組みを更新できるかを確認してみてください。


「強い」「豊かな」「新しい・楽しい」地方という目指す姿

地方創生2.0が目指す地方の姿は、経済の強さだけではありません。内閣官房は、地方創生2.0を「我が国の活力を取り戻す経済政策であり、多様な幸せを実現するための社会政策であり、そして地域が持つ本来の価値や楽しさを再発見する営み」と定義しました(参照*3)。

つまり「強い地方」は経済の活力、「豊かな地方」は暮らしの多様な幸せ、「新しい・楽しい地方」は地域の本来の価値の再発見に対応しています。自治体が取り組みを設計する際には、この3つの視点が欠けていないかを確認し、経済・暮らし・文化の各面から計画を点検することが求められます。


地方創生2.0が生まれた背景──人口減少と東京一極集中の現状


加速する人口減少と生産年齢人口の縮小

日本の人口減少は、予測を上回る速さで進んでいます。地方創生2.0基本構想によると、我が国の人口は2008年をピークに減少局面に入りました。2024年10月1日現在の人口推計では約1億2,400万人となり、2014年の約1億2,700万人から10年間でおよそ340万人減っています(参照*1)。

石破前首相も、人口減少は想定を超えるペースで進んでおり、人口減少と生産年齢人口の減少という事態を正面から受け止めたうえで、人口が減少しても経済成長し社会を機能させる適応策を講じていくと述べました(参照*2)。

自治体としては、まず自地域の人口動態と生産年齢人口の推移を数値で把握し、そこから逆算してどの分野の取り組みが急務なのかを特定する必要があります。


若者・女性の東京圏への流出と地域間格差

東京圏への一極集中は、地方創生の取り組みが始まった2014年以降も解消されていません。内閣官房は、2014年に地方創生の取り組みが本格的に始まって以来、全国で好事例が多く生まれた一方、東京圏への一極集中や地方の人口減少などの課題は未だ残っていると述べています(参照*3)。

また、地方創生2.0基本構想では、各地域において若者や女性も含め、産官学金労言士等の多様な関係者が「若者や女性にも選ばれる」地域となるために自ら考え、行動を起こすことが必要ではないかと問題提起しています(参照*1)。

地域間格差を縮める第一歩として、自治体は若者と女性が転出する理由を具体的に調査し、どの生活条件や就業条件に不満があるのかを洗い出すことが欠かせません。


これまでの地方創生10年間の成果と反省

地方創生1.0の10年間には、地域の活性化につながる好事例が数多く生まれました。しかし、それらが全国に広がったかといえば、そうではありませんでした。地方創生2.0基本構想は「好事例の普遍化は、なぜ進まなかったのか」と問いかけ、地方公共団体は国・都道府県・市町村という「縦」のつながりだけでなく、他の町といった「横」の関係を改めて意識する必要があるのではないかと指摘しました(参照*1)。

この問いかけは、自治体の取り組みを見直すうえで重要なものになります。近隣自治体との横の連携が機能しているか、好事例を共有する仕組みがあるかを点検し、具体的な改善策を洗い出すことが地方創生2.0の出発点になります。


政策の5本柱──地方創生2.0基本構想の全体像


安心して働き暮らせる生活環境の創生

地方創生2.0基本構想は5つの柱で構成されています。その第1の柱が「安心して働き、暮らせる地方の生活環境の創生」です(参照*1)。

国土交通省も令和7年度関係予算のなかで「国民の安全・安心の確保」「持続的な経済成長の実現」「地方創生2.0に資する個性をいかした地域づくりと分散型国づくり」を3本柱に掲げ、令和6年度補正予算と合わせて切れ目なく取り組みを進めるとしました(参照*4)。

自治体は、医療・福祉・教育・交通など住民の暮らしに直結する分野で、現行サービスの充足度を数値で確認し、不足があれば国の予算措置と連動した計画を立てることが求められます。


稼ぐ力を高める地方経済の創生と人・企業の地方分散

第2の柱は「稼ぐ力を高め、付加価値創出型の新しい地方経済の創生」、そして第3の柱は「人や企業の地方分散」です。地域創生2.0基本構想は、地方イノベーション創生構想として産官学の地方移転と都市・地方の交流等による創生を掲げました(参照*1)。

石破前首相は、文化・芸術・スポーツなど十分にいかされてこなかった地域資源を活用し、高付加価値型の産業・事業を創出していくと表明しました。さらに、半導体やGX(グリーン・トランスフォーメーション)といった戦略分野での大規模投資を加速し、国全体に波及効果を及ぼしていく取り組みも進めると述べました(参照*2)。

自治体は、自地域にどのような未活用の資源があるかを棚卸しし、企業誘致や産業振興の取り組みと結びつける計画を検討してみてください。


新時代のインフラ整備・AI活用と広域リージョン連携

第4の柱は「新時代のインフラ整備とAI・デジタルなどの新技術の徹底活用」、第5の柱は「広域リージョン連携」です(参照*1)。デジタル庁も重点計画の中で「地方創生2.0(地域におけるデジタル・新技術の徹底活用)」を掲げています(参照*5)。

広域リージョン連携は、自治体が単独で課題に向き合うのではなく、近隣の地域と協力して取り組む考え方です。基本構想が「横」の関係の再認識を促している点とも重なります。

自治体は、デジタル技術の導入状況を自己点検するとともに、近隣自治体との広域連携の枠組みを具体的にどう構築するかを議論のテーマに据えるとよいでしょう。


自治体に求められる取り組み──実践のポイントと注意点


若者・女性に選ばれる地域づくりと職場改革

地方創生2.0のもとで自治体が真っ先に向き合うべき取り組みの一つが、若者・女性に選ばれる地域づくりです。基本構想も、各地域の多様な関係者が「若者や女性にも選ばれる」地域となるために自ら考え、行動を起こすことが必要ではないかと問いかけています(参照*1)。

具体的な事例として、宮城県気仙沼市の取り組みが挙げられます。気仙沼市では、市が中心となり商工会議所や中小企業などの関係者を巻き込みながら賃金格差の是正で成果をあげています。社内に男女格差がないと考えている経営者にデータを示し、女性社員の率直な意見を伝えることで、イメージと実情の違いへの気づきと納得が生まれ、働き方や職場の改革が地域で進んでいくと紹介されました(参照*2)。

この事例からわかるように、データに基づく客観的な現状把握と関係者への共有が、職場改革の出発点になります。自治体は、地域の企業に対して男女間賃金や労働環境のデータを可視化する機会を設け、対話の場を用意するところから取り組みを始められます。


データ活用による政策立案(RESAS・RAIDA等の実装)

自治体が客観的な根拠に基づいて政策を立案するうえで、データ活用の仕組みが欠かせません。基本構想でも「RESAS等の情報基盤を活用した客観的なデータの分析も重要ではないか」と指摘されました。RESAS(リーサス)とは、地域の経済や人口などのデータを地図やグラフで確認できる国の情報基盤です(参照*1)(参照*6)。

内閣府地方創生推進事務局のビッグデータチームは、地方創生の推進に向けた取り組みを支援するため、地域のデータ利活用拡大に向けた普及促進活動を実施しています。地域の担い手を対象に、システムや研修、ワークショップなどの手段を用いて全国の政策調査員や情報提供サイトを通じた普及活動を行っています(参照*7)。

さらに、生成AIを活用したデータ分析支援機能(RAIDA-AI)も提供されています。対象地域を選択すると自動でデータ分析を開始し、結果から得られる考察の内容を文章で表示します。分析結果をもとに、優先的に取り組むべきと考えられる地域課題を提案することで、データ分析業務や政策立案に向けた検討を支援する仕組みです(参照*8)。

自治体の担当者は、まずRESASで自地域の人口・産業・観光のデータを確認し、次にRAIDA-AIで課題の優先度を把握するという手順で、取り組みの方向性を絞り込むことができます。


関係人口の創出とふるさと住民登録制度の課題

関係人口とは、その地域に住んではいないものの、地域と継続的に関わる人のことです。地方創生2.0では、定住人口だけでなく関係人口の拡大も重要な取り組みと位置づけられています。その具体策の一つが「ふるさと住民登録制度」です。

ふるさと住民登録制度の利点は、地域と継続的に関わる人を可視化し、自治体が相手に応じた情報発信や参加案内を行いやすくなる点です。地域の担い手確保や地域経済の活性化を促進することが期待されます(参照*9)。

ただし、自治体から寄せられた意見には懸念も含まれます。同調査では意見が大きく5つに分類されました。制度設計・運用への要望や懸念として曖昧さ・説明不足・事務負担・柔軟性の欠如、財源措置やインセンティブの不足(登録者側と自治体側の双方)、地域間競争と不平等の拡大(都市部への登録集中への懸念)、制度そのものへの賛否、政府からの説明・支援・事例共有の要請です(参照*9)。

自治体がこの制度を活用する際は、事務負担と財源確保の見通しを事前に確認し、登録者へ提供できる具体的なメリットを設計したうえで導入を検討する必要があります。


自治体の取り組み事例──好事例から学ぶ実践のヒント


企業の地方移転支援と本社機能の分散

企業の本社機能を地方へ移す動きは、地方創生2.0の柱の一つである「人や企業の地方分散」を体現する取り組みです。内閣府地方創生推進事務局は、本社機能の地方移転・拡充を後押しすることで、地方での雇用創出を通じた新たな人の流れを生み出すことを目指しています。国や地方自治体の支援策を活用しながら地方移転・拡充に取り組んだ企業や、地方自治体による支援の好事例を紹介しています(参照*10)。

また、データ活用による地域連携の事例もあります。福岡県南部のうきは市には温泉などの観光資源があり、もともと福岡市への観光PRを行っていました。しかし、データ分析により想定よりも福岡市からの観光客が少ないことが判明しました。その結果、佐賀や大分を含む近隣地域と連携したPRに力を入れる方針へ転換しました(参照*7)。

自治体が企業誘致や観光振興に取り組む際は、データで想定と実態のずれを把握し、連携先を見直すという手順が参考になります。


農山漁村における経済・生活環境創生の取り組み

農山漁村の課題に対しても、地方創生2.0に連動した取り組みが進んでいます。農林水産省は2025年2月、農山漁村における課題解決を図るため「『農山漁村』経済・生活環境創生プロジェクト」を創設しました。関係府省庁、地方公共団体、郵便局、民間企業、教育機関、金融機関等が参画して、地域と企業のマッチングや連携のあり方を議論する「農山漁村」経済・生活環境創生プラットフォームを立ち上げました(参照*11)。

現場の事例として、愛媛県西予市の百姓百品グループがあります。このグループは「地域の課題を農業で解決する」をミッションに掲げ、地域の課題を持続可能な事業として位置づけています。販売・生産・福祉に関わる3つの組織が連携する形で課題解決に取り組むソーシャルビジネスを展開しています(参照*11)。

農山漁村を抱える自治体は、国のプラットフォームへの参画を検討しつつ、地域内で販売・生産・福祉など異なる分野をまたぐ連携体制を構築できるかどうかを検証してみてください。


おわりに


地方創生2.0は、人口減少と東京一極集中という10年越しの課題を正面から受け止め、経済政策と社会政策を一体で進める枠組みです。自治体には、データに基づく現状把握、若者・女性に選ばれる職場や地域の整備、そして広域連携の推進が求められています。

基本構想の5本柱と自地域の条件を照らし合わせて優先度の高い取り組みから着手すること、そして好事例を共有しながら自治体どうし学びあうことが、2.0時代の自治体に欠かせない行動指針です。

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