人口減少で自治体財政はどうなる?課題と今後の対策
はじめに
日本では全国的に人口が減り続けており、その影響は自治体財政に直結しています。住民が減れば自治体の税収は細り、一方で高齢化による社会保障費やインフラの維持管理コストは膨らみます。こうした収支の両面から圧力がかかる中で、自治体財政の持続可能性をどう確保するかが問われています。
人口減少が進む地域では、税収減と歳出増が同時に起こり、財政の硬直化が避けられません。この記事では、人口動態の変化から自治体財政の歳入構造、具体的な財政課題、自治体間の格差、そして今後の対策まで、順を追って解説します。
人口減少の現状と地方への影響
地方と都市部の人口格差
人口と企業の集中により、東京都への転入超過が継続しているとされています。総人口が全国的に減少していく見通しの中で、東京都の人口は今後さらに高まると見込まれています。加えて、大法人の本店が東京都に集中する傾向があり、東京都以外に支店を持たず東京都のみに納税する法人も増えています(参照*3)。
人口と企業の両方が東京に集中することで、地方の自治体はさらに税収基盤が弱まります。人口が流入する自治体とそうでない自治体が併存する構造は、自治体財政の格差拡大につながります。居住地域や関心のある自治体が、流入側・流出側のどちらに当たるかを確認しておくと、今後の財政の動きをつかみやすくなります。
自治体財政の仕組みと歳入構造
地方税・地方交付税の役割
自治体財政の根幹をなす歳入は、地方税と地方交付税の2つに大きく分けられます。総務省の資料によると、国税と地方税を合わせた租税の徴収額は122兆81億円で、前年度比1.3%増となっています。租税総額に占める割合は国税が63.4%、地方税が36.6%です。ただし、地方交付税や地方譲与税、地方特例交付金等を国から地方へ交付した後の実質的な配分割合は、国が45.4%、地方が54.6%へと逆転します(参照*4)。
地方交付税は、自治体間の財源の偏りを調整し、どの地域でも一定の行政サービスを提供できるよう財源を保障するための固有財源です(参照*5)。地方税だけでは歳入が足りない自治体にとって、地方交付税が果たす穴埋めの機能は大きいといえます。
国庫支出金と地方債の位置づけ
自治体財政は地方税と地方交付税だけで成り立っているわけではありません。地方自治の考え方からは、行政活動に必要な経費は地域の住民が負担する地方税収入で賄うのが望ましいとされています。しかし現実には、人口1100万人を超える東京都から人口200人余りの東京都青ヶ島村まで約3300の自治体が存在し、経済力の差は非常に大きくなっています(参照*6)。
こうした自治体にとっては、国庫支出金や地方債が歳入を補う手段になります。ただし、地方債は将来の元利償還が歳出を押し上げるため、発行に頼りすぎると財政の自由度が低下してしまうリスクがあります。
人口減少がもたらす財政課題
税収減と社会保障費の増大
人口減少は自治体財政の歳入と歳出の両面に圧力をかけます。歳入面では、地方交付税の算定に使われる基準財政需要額の算定項目に、人口や人口に連動する指標である世帯数や子どもの数などが多く含まれています。単位費用の水準を維持したとしても、人口が減ればこれらの項目に係る財政需要は減少していく見込みです(参照*3)。
歳出面では、高齢化に伴う社会保障給付の増加が財政負担を大きくしています。一方で、社会保障給付が高齢者の比較的多い地方に移転されれば、地域間格差の縮小につながる側面もあるとされています。これまで国から地方への歳出移転の役割を担っていた公共事業が削減される中、社会保障給付がそれに代わる移転の役割を果たすようになっています(参照*1)。税収が減り社会保障費が膨らむ構造の中で、歳入と歳出のバランスがどう変わるかを追い続けることが求められます。
インフラ老朽化と維持管理コスト
人口減少下であっても、一度つくったインフラは維持し続けなければなりません。埋設から50年を超えて標準的な耐用年数を過ぎている下水道管は、全国で約3万kmに及んでいます。下水道管全体の約7%にあたり、8年後にはこの長さが約9万kmまで膨らむと指摘されています。自治体が管理するインフラの更新には地方債を発行することになりますが、市町村の経常収支比率はすでに9割を超えており、元利償還金の5割程度を交付税で補ったとしても自治体財政の悪化は避けられない可能性があります(参照*7)。
人口減少とインフラの老朽化が重なると、人口1人あたりのインフラコストが増加していく見込みです(参照*3)。住民が減っても道路や水道管の総延長がすぐに短くなるわけではないため、1人あたりの負担は重くなります。自治体ごとにインフラの老朽度合いと更新計画を照らし合わせ、今後の財政負担を見積もることが欠かせません。
経常収支比率の硬直化
経常収支比率は、毎年決まって入ってくる財源のうち、人件費や扶助費、公債費など毎年決まって出ていく経費にどれだけ使われているかを示す指標です。この数値が高いほど、臨時的な事業や新たな投資に回せる余裕が少なくなります。
経常収支比率は高止まりしており、新規施策の余地が小さくなっています。総務省の資料によると、2022年度の経常収支比率は、臨時財政対策債の減少に伴う経常一般財源等の減などにより、前年度から4.3ポイント上昇して92.4%に達しました(参照*5)。9割を超える水準は、歳入の大部分が固定的な歳出に充てられていることを意味します。人口減少による税収減と社会保障費の増大が続けば、この比率はさらに上がり、自治体財政の柔軟性が失われます。
自治体間の財政力格差と税源偏在
交付団体と不交付団体の構造的な差異
地方交付税を受け取っている交付団体と、受け取らない不交付団体では、追加的な行政サービスを行う際の財政上の条件が大きく異なります。たとえば、不交付団体である東京都は、基準となる財政収入を超える追加的な財源を確保する努力をしなくても追加的なサービスの提供が可能です。これに対し交付団体は、標準を超えたサービスを提供するために独自の財源確保の努力が求められます(参照*8)。
ふるさと納税の拡大もこの格差に影響を与えています。不交付団体では住民のふるさと納税が全額外部に流出する形になり、財政的な負担につながっています。ふるさと納税の規模が拡大し続ける中で、今後ますますこの傾向が強まることへの危機感が示されています(参照*9)。交付・不交付の区分が行政サービスの質にどう影響するかを把握しておくと、自治体財政の構造的な差異を理解しやすくなります。
東京一極集中と行政サービス格差
税源の偏在は数字に明確に表れています。人口1人あたりの税収額で見ると、地方税全体では最大と最小の自治体で2.3倍の格差があります。地方法人二税に限れば格差は6.3倍に達し、特別法人事業譲与税を含めても3.6倍です。地方税源は、偏りが出やすい構造であるため、税収が増える局面では格差がさらに拡大する仕組みになっています(参照*3)。
税目によって格差の大きさは異なります。総務省のデータでも、法人関係二税は東京都が指数257.0であるのに対し奈良県は40.5と約6.3倍の開きがあります。一方、地方消費税は福島県の109.5に対し奈良県が87.9で約1.2倍と比較的小さい格差にとどまっています(参照*4)。法人課税に依存するほど格差が広がりやすい構造であるため、どの税目の比重が高いかによって自治体財政の安定度は変わります。
財政健全化に向けた対策
広域連携と公共施設の統廃合
人口減少下で自治体財政を維持するには、個々の行政区域にとらわれない広い視点が求められます。限られた人員と予算の中で効率的にインフラや公共施設の維持管理を行うために、既存の行政区域に拘らない広域的な視点でインフラのマネジメントを行っていくことが必要だと指摘されています(参照*3)。
規模が小さすぎる自治体では各種の行政費用が大きくなる傾向があり、ある程度の規模を持つことで重複する行政事務の削減などを通じた効率化が可能になります(参照*1)。公共施設についても、人口減少による利用需要の変化を踏まえ、全体の状況を把握したうえで更新・統廃合・長寿命化などを計画的に行い、財政負担を軽減・平準化することが求められています。そのための手段として、公共施設等総合管理計画の策定が各自治体に促されています(参照*10)。
自治体DXによる行政効率化
職員数が減る中でも行政サービスの質を保つために、デジタル技術の活用が進められています。より少ない職員数で質の高い行政サービスを提供するため、デジタル技術や人工知能(AI)・ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)の活用、オンライン申請などの窓口改革、自治体の基幹業務システムの統一・標準化といった内部改革に取り組み、自治体DXを一層推進して業務の効率化を徹底していく必要があります(参照*7)。
人口減少が進めば、住民1人あたりの行政コストは上がりやすくなります。国土交通省はまちづくりの方向性として、医療・福祉施設や商業施設、住居などがまとまって立地し、公共交通でアクセスできる「コンパクト・プラス・ネットワーク」を示しています(参照*11)。デジタル化とまちの構造の見直しを組み合わせることで、自治体財政への負担を抑えることができます。
おわりに
人口減少は税収減と社会保障費の増大を同時に引き起こし、自治体財政を歳入・歳出の両面から圧迫します。インフラの老朽化や経常収支比率の上昇が加わることで、財政の柔軟性はさらに失われやすくなります。
広域連携や公共施設の統廃合、自治体DXの推進、そして国と地方の役割分担の再設計は、いずれも自治体財政の持続可能性を左右する取り組みです。居住地域の歳入構成やインフラの更新計画を確認し、今後の財政の動きを読み解く手がかりとして活用してみてください。
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参照
(*1) 内閣府ホームページ – 第4節 高齢化・人口減少と地方財政 – 内閣府
(*2) https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001979556.pdf
(*4) 総務省 – 地方財源の状況
(*5) 総務省 – 地方財政の概況
(*6) 内閣府ホームページ – 第4節 地方財政の課題 – 内閣府
(*7) 衆議院 – 第217回国会 本会議 第6号(令和7年2月18日(火曜日))
(*8) 人口減少時代、国と地方の財政の新たな役割分担とは―財政的責任をあらためて明確化する|NIRA総合研究開発機構
(*9) 東京財団 – 歪み続けるふるさと納税(3)ふるさと納税の資金フローと都市部自治体の苦悩 | 研究プログラム | 東京財団
