自治体における資源循環の取り組み|リサイクルの最新事例



はじめに

大量生産・大量消費を前提とした社会のあり方が、天然資源の枯渇や気候変動といった問題を深刻化させています。こうした状況のなかで、自治体が資源循環やリサイクルの仕組みをどう設計し、循環型社会の形成につなげていくかは、地域の持続可能性を左右する課題です。

取り組みが不十分な場合、施設の老朽化や人口減少と重なり、ごみ処理コストの増大や環境負荷の拡大を招きかねません。本記事では、国の政策から素材別の取り組み、住民参加の工夫、そして今後の課題まで、押さえるべきポイントを順に見ていきます。



資源循環と循環型社会の基本


循環型社会の定義と3R+Renewable

循環型社会とは、天然資源の消費を抑えながら、環境への負荷をできる限り低減する社会を指します。この概念は平成12年に制定された循環型社会形成推進基本法に基づいており、同法のもとで循環型社会形成推進基本計画が策定され、関連施策が進められてきました(参照*1)。

循環型社会を実現するうえで柱となるのが、発生抑制(リデュース)、再使用(リユース)、再生利用(リサイクル)の3Rです。さらに近年は、資源の採取から利用、再利用、廃棄に至るライフサイクル全体を視野に入れ、限りある資源を有効に活用しながら多様な価値の創出と環境負荷の低減を両立する考え方が広がっています(参照*2)。

3Rに加えて「再生可能資源への切り替え(Renewable)」を組み合わせることで、化石資源由来の素材を減らし、循環の質そのものを高める方向へ施策が広がっています。自治体がこれらの優先順位を踏まえて施策を組み立てることが、地域における循環型社会の土台となります。


循環経済への移行が求められる背景

使い捨てを前提とする大量生産・大量消費型の経済活動は、大量廃棄型の社会を生み出してきました。環境省は、こうした構造が天然資源の枯渇や大規模な資源採取による生物多様性の損失など、さまざまな環境問題と密接に関係していると指摘しています(参照*3)。

この認識を受け、政府は2024年8月に第五次循環型社会形成推進基本計画を閣議決定しました。同計画では循環型社会の形成に向けた施策の方向性や数値目標が示されています。さらに同年末には、関係閣僚会議で「循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行加速化パッケージ」がとりまとめられました(参照*3)。

こうした一連の動きは、従来の「ごみを処理する」という発想から「資源を循環させる」という発想への転換を政策レベルで加速させるものです。自治体にとっては、国が示す方向性を自地域の条件に合わせて具体化することが求められます。


国の政策と自治体の役割


循環型社会形成推進基本計画の方向性

循環型社会形成推進基本計画は、国全体の資源循環に関する目標と施策の方向性を定める計画です。環境省の資料によると、これまでの取り組みにより資源生産性や入口側の循環利用率が大幅に向上し、最終処分量は大きく減少しました。しかし近年、循環利用率は横ばいまたは減少傾向にあり、取り組みをさらに強化する必要があります(参照*1)。

2024年8月に閣議決定された第五次計画では、循環型社会の形成に向けた施策の方向性と数値目標が明記されました。加えて同年末には「循環経済への移行加速化パッケージ」がとりまとめられ、政策の推進力が高められています(参照*3)。

自治体は、この国の計画が掲げる数値目標を踏まえたうえで、地域の実情に応じた具体策を設計する役割を担っています。循環利用率の停滞を打開するには、国と地方の両輪で施策を動かしていく必要があります。


地域計画と交付金制度の仕組み

自治体が資源循環の施設整備を進める際に活用できる仕組みのひとつが、循環型社会形成推進交付金制度です。環境省はこの制度について、廃棄物の3Rを総合的に推進するため、市町村の自主性と創意工夫を生かしながら、3Rに関する明確な目標設定のもとで広域的かつ総合的に廃棄物処理・リサイクル施設の整備を推進し、循環型社会の形成を図ることを目的としています(参照*4)。

交付金の申請にあたっては、市町村が地域計画を作成し、リサイクル率などの目標値を設定することが前提となります。プラスチック資源循環促進法に基づく分別収集や再商品化の体制整備、指定ごみ袋の有料化といった措置もこの地域計画に位置づけられます(参照*4)。

交付金制度は単なる財政支援にとどまらず、自治体に対して計画策定と目標管理を促す枠組みでもあります。施設整備と政策目標を連動させる点が、この制度の特徴です。


自治体に期待されるコーディネーター役

資源循環を地域で実装するうえで、自治体には住民・事業者・周辺自治体をつなぐコーディネーターとしての機能が求められています。環境省が提唱する「地域循環共生圏」は、2018年の第5次環境基本計画に初めて位置づけられた概念です。地域資源を活用して環境・経済・社会を良くしていく事業を生み出し続けることで地域課題を解決し、自立した地域をつくるとともに、地域の個性を生かして地域同士が支え合うネットワークを形成する「自立・分散型社会」を示す考え方です(参照*5)。

この考え方のもとでは、廃棄物を処理するだけでなく、それを地域資源として活用し、新たな産業や雇用に結びつけることが目指されています。自治体は計画をつくるだけでなく、関係者間の利害を調整しながら事業を動かす推進役を果たすことが期待されています。


素材・分野別の取り組み事例


プラスチック一括回収と再商品化

プラスチック資源を容器包装とそれ以外に分けずにまとめて回収する「一括回収」は、住民の分別負担を軽減しながらリサイクル量を増やす手法として広がりつつあります。環境省はプラスチック資源循環促進法に基づき、分別収集と再商品化のための体制や施設の整備、分別基準の策定、指定ごみ袋の有料化による分別排出の促進などを地域計画に盛り込むことを求めています(参照*4)。

栃木県宇都宮市では、プラスチック一括回収に関する実証事業が行われました。この事業ではコスト分析やCO2排出量の分析を含む効果検証のほか、回収したプラスチックの組成調査、中間処理施設に対する実証試験・改修事例の把握、収集車への影響確認が実施されています(参照*6)。


生ごみ・バイオマスの循環利用

生ごみを焼却処分するのではなく、堆肥やエネルギーとして地域内で循環させる取り組みが複数の自治体で行われています。山形県長井市は人口約3万人の田園都市で、地域農業の発展を目指して早くから生ごみの循環利用に着手しました。市街地に住む約5,000世帯が週2回生ごみを分別排出し、委託業者が収集した生ごみは市営の堆肥センターでもみ殻と牛ふんを混ぜて堆肥化されます。80日かけて製造した堆肥は農協が委託販売し、市内の農家が利用しています(参照*7)。

福岡県大木町では、持続可能なまちづくりの一環として廃棄物系バイオマスを資源と位置づけ、液体肥料と電力を生産する施設を整備しました(参照*8)。

長井市が堆肥化、大木町がエネルギー回収と、同じ生ごみでも地域の産業構造に応じて出口の設計が異なります。いずれの事例も、生ごみを「廃棄物」ではなく「地域資源」として扱う点に共通の考え方が表れています。


小型家電・金属資源の回収強化

使用済みの小型家電にはレアメタルや貴金属が含まれており、回収量の拡大が課題とされています。環境省は第五次循環型社会形成推進基本計画のなかで、スマートフォン、PC、電子たばこなど資源価値の高い小型家電や電池含有製品について回収率向上のための目標を設定し、国民参加を促すことで再資源化に取り組むとしています(参照*1)。

また、小型家電リサイクル法に基づく使用済み小型家電の回収量を増やすため、自治体・認定事業者・小売事業者など関係主体の連携事例が環境省から公表されています。加えて、GIGAスクール構想のもとで配備された端末の適切な再利用や再資源化に関する取り組み事例も掲載されています(参照*9)。

小型家電は1台あたりの資源量は少ないものの、種類が多岐にわたるため、回収の仕組みを多様に用意する必要があります。自治体がどの関係主体と連携し、どの回収拠点を設けるかが、回収率の差につながるポイントです。


広域処理と官民連携の手法


広域化による施設集約と高効率発電

複数の施設を統合して処理能力を集約する広域化は、老朽化対策とエネルギー回収の効率向上を同時に実現する手法です。秋田県横手市では、市内に3か所あった焼却施設がすべて老朽化していたため、それらを1か所に統合した新施設を整備し、集約化と高効率発電を同時に達成しました(参照*8)。施設の数を減らすことで維持管理コストを抑えつつ、1施設あたりの処理規模を確保して発電効率を高める構造になっています。

広域化の検討においては、収集運搬距離の増加や地域間の費用負担の調整といった論点もあり、自治体間の合意形成が欠かせません。横手市の事例は、市内完結型の集約ですが、複数市町村にまたがる広域化ではさらに調整の範囲が広がります。


民間委託・民設民営の活用モデル

施設整備や運営を民間事業者に委ねる手法も、自治体の資源循環において選択肢のひとつとなっています。香川県三豊市では、民設民営の施設「バイオマス資源化センターみとよ」が稼働しています。この施設では三豊市から処理委託を受け、市内の家庭系・事業系の可燃ごみを、密閉空間で好気性発酵を行う手法であるトンネルコンポスト方式で処理しています(参照*8)。

また、自治体と企業が資源循環の課題について直接意見を交わす場として、環境省は全国6地域で「資源循環自治体フォーラム(地方版)」を開催しています。このフォーラムでは先進的な自治体や企業の取り組み事例の情報共有に加え、資源循環のテーマごとに自治体と企業が意見交換できる機会が設けられています(参照*10)。

民設民営は初期投資を抑えられる反面、契約条件や処理品質の管理が長期にわたって求められます。自治体にとっては、公設公営・公設民営・民設民営のなかからどの方式が地域条件に合うかを見極めることが、施設整備における判断の分かれ目です。


住民参加と分別精度の向上策


分別区分の見直しと周知の工夫

リサイクルの質と量を高めるには、住民が正しく分別できる仕組みづくりが欠かせません。兵庫県西宮市では、令和8年度に破砕選別施設を設置するにあたり、効率の良い再資源化が可能な機械の導入や処理ラインの見直しとあわせて、わかりにくい分別の整理やさらなる資源化の推進を考慮した区分の検討を行いました(参照*11)。

徳島県上勝町は、2003年のゼロ・ウェイスト宣言から17年をかけて、町民一人ひとりがごみ削減に努めリサイクル率80%以上を達成しました(参照*12)。

住民にとってわかりやすい分別の仕組みを用意することが高いリサイクル率につながります。


リチウムイオン電池混入防止の対策

分別精度の向上において、近年とりわけ深刻な問題となっているのがリチウムイオン電池の混入による発煙・発火です。再生処理施設の事業者団体の報告によると、令和7年度の発煙・発火件数は118件で前年度から横ばいの水準にあり、最大で270分間のライン停止が発生しました。累計では144時間の停止となり、再生処理工程に大きな影響が生じています(参照*13)。

一方、対策も進みつつあります。平成31年に実施されたアンケートと令和6年度のアンケートを比較したところ、小型充電式電池の分別収集を開始している市町村の割合は30.2%から57.7%へ増加していました(参照*13)。

分別収集を実施する市町村は増えているものの、発煙・発火件数が減少に転じていない現状は、回収ルートに乗らない電池がまだ多く混入していることを示唆しています。自治体が回収拠点を設けるだけでなく、住民への周知を徹底し、混入を入り口で防ぐ施策の強化が欠かせません。


推進上の課題と今後の展望


人口減少・施設老朽化への対応

自治体の資源循環体制を維持するうえで、人口減少と施設の老朽化は避けて通れない課題です。環境省によると、生産年齢人口は2032年に6,971万人と7,000万人を割り、2070年には4,535万人まで減少する見通しです(参照*1)。

施設面では、2023年時点で一般廃棄物処理施設の全体の4分の1以上が建設から30年を超えています(参照*1)。人口が減ればごみの量も減る一方、施設の更新や運営に必要な人材と財源の確保は難しくなります。広域化や民間活用といった手法と組み合わせながら、将来の人口・ごみ量を見据えて施設配置と運営体制を再構築する必要があります。


循環利用率停滞の打開策

資源生産性や最終処分量の削減が進む一方で、循環利用率は横ばいまたは減少傾向にあり、この停滞をどう打開するかが次の課題です。環境省はこれらを高める取り組みを一段と強化する必要があるとしています(参照*1)。

現場レベルでも課題は明らかです。山形県長井市では生ごみの分別排出自体は成功しているものの、事業費の負担が大きかったり、参加農家の数が増えず高齢化していたり、認証野菜の消費が伸びなかったりといった問題を抱えています(参照*7)。

循環利用率を上げるには、回収と再資源化の仕組みだけでなく、再生品の需要側まで含めた循環全体の設計が求められます。自治体が地域内の産業や消費者とどうつながり、再生資源の出口をつくるかが、停滞を打破する鍵となります。


おわりに


自治体の資源循環の取り組みは、プラスチックの一括回収から生ごみの堆肥化、広域処理による施設集約、リチウムイオン電池の混入防止まで、素材と地域条件に応じて多様な形をとっています。いずれの事例にも共通するのは、国の計画や交付金制度を活用しながら、地域ごとの課題に合わせた仕組みを設計している点です。

人口減少や施設老朽化、循環利用率の停滞といった構造的な課題は、一つの施策だけで解決するものではありません。住民の分別行動から官民連携の手法、再生品の需要づくりまでを一体的にとらえ、循環型社会の形成に向けた取り組みを着実に積み重ねていくことが、各自治体に求められています。

【出展社・来場者募集中!】
全国から自治体関係者が来場する日本最大の展示会

【出展社・来場者募集中!】
全国から自治体関係者が来場する
日本最大の展示会


参照



■関連する記事