自治体の人手不足を解決するには?最新施策と先進事例を解説



この記事のまとめ

自治体の人手不足は、職員数の減少と業務の高度化が同時に進むことで、住民サービスの維持に影響を及ぼしています。解決には、業務の合理化、広域での連携、外部との協力を組み合わせる考え方が有効です。要点は以下のとおりです。

  • 市町村では一般行政職員や技術職の不足が広がり、上下水道分野の調査では約9割の団体で職員不足が課題となっています。
  • 解決の方向性として、DX・AI活用、広域連携・共同利用、官民連携が挙げられます。
  • 先進事例では、県単位での共同運行管理や包括的民間委託が具体的な取組として進められています。
  • 導入時は、自治体が手放してはいけない機能を明確にし、個人依存を避ける組織づくりが欠かせません。


自治体で深刻化する人手不足の現状

自治体の人手不足は、職員数全体の減少と、技術職・専門職への不足の偏りという2つの面で進んでいます。


職員数減少と定員管理の実態

自治体の人手不足は、職員数の実数として明確に表れています。

国民健康保険分野では、市町村の国保担当部局の職員数が平成30年の16,894人から令和7年の15,376人に減少し、国保連の職員数も5,099人から4,954人へと減っています。市町村では、人口減少の影響などにより、一般行政職員や保健師を含めた人材不足が深刻化しており、将来的に保険者としての事務の実施に支障を来すおそれがあります(参照*1)。

上下水道分野の全国調査では、約9割の地方公共団体で職員不足が課題となり、採用活動においても約8割の団体で十分な人材を確保できていない状況が示されました。人材確保に向けたノウハウや戦略が不十分な団体も多く、時間的・人員的な余裕や予算が乏しいため、確保の取組を積極的に進めることが難しい実態があります(参照*2)。

これらの数字は、単年度の欠員ではなく構造的な減少局面にあることを示しています。自らの自治体で同様の減少傾向が起きているか、どの部局に集中しているかを確認することが対策の前提となります。


技術職・専門職に集中する不足

職員数全体の減少に加えて、特定分野への偏りも顕著です。

インフラの老朽化が進む一方で、多くのインフラを所有する地方公共団体の土木部門職員数は減少しており、ノウハウの蓄積や適切な維持管理の実施、公共施設等総合管理計画や個別施設計画の策定に課題が生じています(参照*3)。

地域公共交通の分野では、人口5万人未満の地方公共団体の84%で地域交通専任担当者が不在となり、特に中小規模の市町村で人材とノウハウの不足が課題となっています。地域公共交通の司令塔となる地方公共団体の機能や役割が適切に発揮されるよう、支えていく必要があるとされました(参照*4)。

技術職や専門職の不足は、一般事務よりも代替が難しく、外部からの補充にも時間がかかります。したがって、対策を検討する際は、部門ごとの職員構成と担い手の年齢分布を整理することが出発点になります。


人手不足が引き起こす主な原因

人手不足の背景には、生産年齢人口の減少という構造要因と、業務の多様化・処遇面の課題が重なっています。


少子高齢化と生産年齢人口の減少

自治体の人手不足の根本には、働き手そのものが減少している構造があります。

生産年齢人口が減り続ける現状では、新技術の実装を通じた人手不足への対応が不可欠であり、規制がイノベーションの創出を阻害する要因になってはならないと指摘されています。人手不足が顕在化するなか、デジタル技術を活用した生産性の向上と、新技術の実装による社会課題の解決が求められています(参照*5)。

この構造は民間だけの課題ではなく、自治体でも同じ労働市場から人材を採用する以上、影響を直接受けます。採用競争の激化が続く前提で人員計画を見直すことが検討の起点となります。


業務の多様化・複雑化と処遇の課題

職員が減る一方で、担うべき業務は増え、処遇面の課題も重なっています。

社会インフラに関連する分野で働くエッセンシャルワーカーの年間平均賃金は、それ以外の職種と比べて約100万円低く、50歳代後半ではその差が約200万円に広がるなど、賃金の処遇面で課題が浮き彫りとなっています。賃金を理由に業界を離職する割合も高い状況です(参照*2)。

地域公共交通のように、業務の司令塔役を担うべき部署に専任の人材を置けていない実態もあります(参照*4)。

業務量の増加と処遇の見合わなさは、離職と採用難の双方に影響します。人員計画とあわせて、担当を集約するか外部と組むかという業務設計の議論が必要となります。


解決策の全体像と考え方

解決策は「合理化・広域化・多角化」の3方向で整理し、自治体が残す機能と外部に委ねる機能を切り分けることが土台となります。


合理化・広域化・多角化の3方向

解決策を整理する際には、大きく3つの方向を押さえておくと見通しが立ちます。

エッセンシャルサービス分野では、事業効率化の考え方として「合理化」「広域化」「多角化」の3つで整理されています。合理化は業務効率化や省力化、広域化は連携範囲の拡大、多角化は複数の事業展開を指します(参照*6)。

行政サービスの効率化に向けてはAI・AXを大胆に推進すべきとされ、業務プロセス全体をAIネイティブ化することで6割から9割の業務削減が実現できるようになるとの見方があります。デジタル技術の活用や既存の行政区域にとらわれない広域的な連携、国・都道府県・市町村間の役割分担の見直しを通じて、行政の合理化・効率化を一層推進していく方向が示されています(参照*7)。

自らの自治体で検討する際は、どの方向に重点を置くかを最初に整理することで、施策の重複や抜けを防ぎやすくなります。


手放す業務と残す業務の切り分け

解決策を進めるうえで欠かせないのが、自治体が担い続ける機能と外部に委ねる機能の切り分けです。

自治体が少なくとも手放してはいけない機能として、行政目的に照らした優先順位付け、業務要件を定義する力、関係部門を巻き込み変革を意思決定する力の3つが挙げられています。逆に、それ以外の定型的・反復的・専門的運用については、標準化やBPOの余地が相応にあり、自治体DXの実践とは、この切り分けを精緻に行うことでもあるとされました(参照*8)。

この考え方は、DXにも広域連携にも官民連携にも共通する土台です。自部署の業務を「意思決定に直結するもの」と「定型的な運用」に分け、後者から段階的に見直すことが実務の入り口になります。


解決策1:DX・AI活用による業務効率化

DX・AI活用は、業務の見える化から始め、窓口対応や内部事務のデジタル化へ広げるのが基本的な流れです。


BPRと業務可視化による改善

DX・AI活用の出発点は、業務を見える化し、無駄や重複を洗い出すBPRです。

多摩市では、令和5年度からBPRの取組のひとつとして、業務委託による支援を受けて業務の見える化を実施してきました。令和7年度は、この2年間で得られたノウハウをもとに実践的な事務改善につなげ、令和6年度から試行導入している生成AIも、検証結果を踏まえてルールの策定を行い、情報保護等に十分留意しつつ全庁への活用の拡大を図る方針を示しました(参照*9)。

業務の可視化は、単なる工程の記録ではなく、削減・自動化・外部委託の判断材料となります。まず一つの部署で業務棚卸を行い、削減余地の大きい業務から順に着手することが具体的な進め方となります。


窓口DXと生成AI・RPAの活用

業務効率化のもう一つの柱が、窓口対応や内部事務でのデジタル活用です。

寝屋川市は、市民サービスの利便性向上に向けた行政サービス改革を進めており、駅前拠点「寝屋川市サービスゲート」を開設し、市民の利用頻度が高い窓口機能を集約しています。「書かない・待たせない・動かさない」窓口づくりを推進しており、寝屋川市サービスゲートでは、遠隔窓口を通じて年間約3,000件の手続きを支援しています(参照*10)。

西宮市は、西宮市DX推進指針に基づき、自治体システムの標準化、生成AIの活用、手続きのオンライン化、窓口DXなどを進めています。さらに、東京大学大学院との連携により、ローカルな環境で動作するAIモデルを使った問い合わせ対応、屋外広告物のAI検知、ウォーカブルなまちづくりのためのAIシミュレーションに着手し、市民の利便性向上と内部事務の効率化を両立させた抜本的な変革を目指すとしています(参照*11)。

窓口DXは、市民の待ち時間短縮と職員の作業削減を同時に狙える領域です。来庁件数の多い手続きから優先度を付け、遠隔窓口や生成AIの適用範囲を検討することが実務的な選択肢となります。


解決策2:広域連携と共同化・共同利用

広域連携は、事務の共同実施から、デジタル人材や調達の共同利用まで対象を広げながら進められています。


事務の共同実施と広域リージョン連携

単独の自治体では抱えきれない業務を、複数の自治体で共同処理する動きが広がっています。

国民健康保険分野では、都道府県内の各市町村における住民サービス等に大きく差異が生じないよう、事務の標準化、広域化及び効率化によって住民サービスを向上しつつ均てん化することが重要であるとされています。特に、被保険者数の減少により、今後も保険者の小規模化が進む市町村にとって、事務の標準化・広域化・効率化を進めることは、市町村の事務負担軽減に大きく寄与し、住民サービスの向上・均てん化に資すると考えられています(参照*1)。

広域連携は、小規模自治体ほど効果が出やすい領域です。既存の一部事務組合や協議会の対象業務を棚卸し、拡張できる分野を確認することが第一歩になります。


デジタル人材・調達の共同利用

デジタル人材や調達の共同利用も、広域連携の重要な柱です。

長崎県は「ながさきSociety5.0推進プラン」を策定し、県・市町が一体となったスマート行政の実現に向けた取り組みを加速しています。「県市町デジタル人材共同利用事業」では、自治体職員に寄り添いながら課題整理や方針検討をサポートする体制を構築し、自治体サービスの向上を目指しました(参照*12)。

多摩市は、自治体間競争で限られた資源を奪い合うのではなく、自治体間連携での取組が重要になるとし、東京都や近隣自治体との共同研究、GovTech東京等を通じた物品やサービスの共同調達により、スケールメリットを活かした調達コストの低減に取り組むとしています(参照*9)。

デジタル人材の共同利用は、単独採用が難しい専門人材へのアクセスを可能にします。都道府県や近隣自治体との共同枠組みが自地域に既にあるかを確認し、参加条件と対象業務を整理しておくと参加の判断がしやすくなります。


解決策3:官民連携と外部委託の活用

官民連携は、包括的民間委託やBPOに加え、民間の知見を制度的に取り込む枠組みへと広がっています。


包括的民間委託とBPO

官民連携の代表的な形が、包括的民間委託とBPOです。

奈良市は、民間企業のノウハウや創意工夫を活用した「包括的道路維持管理業務委託」を行い、令和7年10月1日に「道路管理コールセンター」を開設しました。これまでは、市職員が現場を確認したうえで入札、契約、工事と手続きを踏むため、工事までに時間を要していましたが、包括的民間委託により、予防保全を行うとともに、通報に対して事業者が迅速に対応できるようになり、時間短縮と業務効率化が図れるとしています(参照*3)。

情報システム部門では、定型的・反復的な運用負荷の一部を標準化して外部に委ねる「情シスBPO」の活用が有効な選択肢となります。アウトソーシングによって職員が本来業務に集中できる環境をつくるとともに、自治体のICTガバナンスを強化することが狙いとされました(参照*8)。

包括的民間委託とBPOは、対象業務の範囲と責任分界の設計が成否を分けます。既存の個別委託を洗い出し、包括化できる範囲を探ることが検討の起点となります。


連携促進団体と民間ノウハウの活用

民間側の知見を仕組みとして取り込む枠組みも整いつつあります。

地域交通に関する課題解決に積極的に取り組む民間企業や団体の活動を促進し、蓄積された知見やリソースを活用していくことが効果的であるとされ、これらの団体を「連携促進団体」として位置づけて支援し、地方公共団体の司令塔機能が十分発揮されるようにする方針が示されました(参照*4)。

連携促進団体のような制度的な受け皿は、個別自治体の交渉負担を減らします。対象分野で活用できる制度や団体があるかを確認し、既存の委託契約との整合を取ることが実務の論点となります。


分野別の先進事例に学ぶ

先進事例として、地域公共交通の共同運行管理とインフラ維持の包括委託が挙げられます。いずれも、単独の自治体では担いきれない業務を広域化や官民連携で補う取組です。


地域公共交通:共同運行管理の事例

公共交通の分野では、県単位や広域での運行管理の共同化が進んでいます。

静岡県が2026年度に実施する「令和8年度 静岡県公共ライドシェア等共同運行管理業務委託」では、県内7市2町が参画を予定する公共ライドシェア等の運行管理を、県単位で共同化する国内初の取り組みが行われます。参画を予定するのは、伊東市、島田市、掛川市、藤枝市、御前崎市、菊川市、牧之原市、東伊豆町、川根本町です(参照*13)。

鳥取県鳥取市では、6つの主体によって運行されている公共ライドシェアについて、ある自動車メーカーが運行管理を一元的に実施しています。石川県の奥能登地域では、全国でAIオンデマンド交通を提供している民間企業が、能登町、穴水町、輪島市、珠洲市の4市町において共通の交通の導入で協力しています(参照*4)。

運行管理の共同化は、専任担当者を置けない中小市町村にとって有効な選択肢です。隣接市町村での既存の共同運行事例を確認し、自地域で拡張できるかを検討することが具体的な入り口となります。


インフラ維持:包括委託の事例

インフラ維持の分野では、包括委託によって予防保全型の管理に転換する動きがあります。

奈良市では、社会インフラの老朽化が進行するなか、慢性的な土木職不足の現状で、限られた人員・予算のなかで市内の膨大な道路施設を維持管理するため、適切な点検等を実施したうえで必要な修繕等を行う「予防保全型管理」への転換が必要とされています。奈良市への道路の修繕等を求める通報電話は年間約2,600件(令和6年度)、令和2年7月から開始したスマートフォン等で位置情報とともに通報する「道路損傷等通報システム」での通報は年間約1,000件となっています(参照*3)。

通報件数の規模は、個別対応の限界と包括委託の必要性を裏付ける具体的な数字です。自地域の通報件数や修繕案件数を把握すれば、包括委託の適用可能性を検討する材料になります。


解決策を進める際の注意点と失敗回避

解決策を進める際には、個人依存とアウトソーシングの誤用に注意が必要です。DX部門に突出した人材がいて、その人を起点に改革が進む例があるものの、個人依存は危ういと指摘されています。重要なのは、その人の力を組織の力に変えることであり、業務設計を伴わないアウトソーシングは、かえって現場の管理負荷を増やし、DXを停滞させる要因になりかねないとされました。自治体が持つべき機能と、外部に委ねるべき機能を分けて考える必要があります(参照*8)。

責任の所在についても明確化が欠かせません。本来は市町村が実施すべき事務を国保連に委託する場合には、責任の所在を明確にしておくべきであり、あくまで専門性が高い分野において国保連が有するノウハウを活用すべきとされています。市町村が担うべき基本的な事務、すなわち事業の企画・立案、保険料の賦課、給付決定等の行政処分については、市町村で確実に実施できる体制を維持することが重要とされました(参照*1)。

外部委託や広域化を進める前に、自団体の意思決定機能と責任分界を文書で整理しておくことが失敗回避の基本となります。


おわりに


自治体の人手不足は、職員数の減少と業務の高度化が同時に進む構造的な課題です。解決には、DXや広域連携、官民連携を組み合わせつつ、自治体が手放してはいけない機能を明確にする視点が欠かせません。

先進事例では、共同運行管理や包括的民間委託が具体的な取組として進んでいます。自地域での適用にあたっては、業務の切り分けと責任の所在を丁寧に設計し、個人依存に陥らない組織づくりを進めていくことが求められます。

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参照


(*1) 自治体の事務負担軽減に向けた都道府県国民健康保険団体連合会の役割強化に関する会議の「中間とりまとめ」について(周知)(◆令和08年03月19日事務連絡)

(*2) 上下水道における 人材確保・育成に関する今後の方向性

(*3) プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES – 道路維持管理業務の包括的民間委託を開始

(*4) 第221回国会 国土交通委員会 第8号(令和8年5月13日(水曜日))

(*5) 一般社団法人 日本経済団体連合会 / Keidanren – 経団連:2025年度規制改革要望 (2025-09-16)

(*6) 加賀商工会議所 – 生活維持役務等効率化促進事業費補助金(6/25締切)

(*7) 内閣府ホームページ – 第5回記者会見要旨:令和8年 会議結果

(*8) Yahoo!ニュース – 住民利便と職員負担軽減を「同時に実現する」自治体DXの実践(ZDNET Japan)

(*9) 多摩市公式ホームページ – 令和7年度施政方針(令和7年2月阿部市長)|多摩市公式ホームページ

(*10) プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES – 年間約3,000件の手続きを遠隔窓口で支援。寝屋川市が進める「動かさない窓口」の導入事例を公開。

(*11) 令和8年度西宮市施政方針|西宮市ホームページ

(*12) プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES – パーソルワークスイッチコンサルティング、長崎県「県市町デジタル人材共同利用事業」業務委託を受託

(*13) プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES – 静岡県7市2町の公共ライドシェア等共同運行管理業務を受託、エスプールグローカル



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