自治体で取り組む、二つの働き方改革

現在日本では、民間企業や地方自治体など問わず、働き方改革に取り組んでいる組織が増えてきています。しかし、組織やその組織に所属する人たち、業務領域によって、働き方改革への取り組みも様々。

 

自治体で働き方改革に取り組むという場合

 

●  自治体内で取り組む働き方改革

●  地域で活躍してくれる企業に対しての働き方改革支援

 

この2つがあります。

 

今回は自治体の取り組み事例と、株式会社ワーク・ライフバランスのメソッドなどを交えながら、「自治体で取り組む、二つの働き方改革」というテーマでお届けします。



働き方改革とは?

厚生労働省によると、働き方改革とは、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少という問題や、育児や介護との両立など、働く人たちのニーズの多様化といった課題を解決するため、働く人個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く人一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しているとされています。

 

現在はコロナの影響もあり、テレワークやリモートワークの導入、勤務時間や勤務形態の変化など、働き方改革に関係する取り組みが、一気に加速してきた気がします。

 

そんな中、全国の自治体ではどのような取り組みが行われているのでしょうか?
 


岐阜県の取り組み

(「内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局」資料参照)

 

2004年に合計特殊出生率が全国最大の下げ幅を記録してしまった岐阜県ですが、特殊出生率以外にも、管理職についている女性の割合や、女性社長の割合が全国最下位だったりしていた点から、2014年に「子ども・女性局」を設置し、結婚や子育て支援、女性の活躍推進、男女共同参画等の業務を一元的に行う体制を整え、取り組んでいます。

 

2007年度に開始した「子育て支援企業登録制度」は、仕事と家庭をともに大切にする職場環境づくりに取り組む意思表明を行った企業を登録する制度で、2016年9月末時点では約2,700社が登録しています。
※現在は「岐阜県ワーク・ライフ・バランス推進企業」に名称変更

 

登録すると県の中小企業資金融資制度「子育て支援資金」での優遇や、従業員の金利優遇制度(マイカーローン等)の対象、県入札参加資格審査での加点が得られる、などのメリットがあります。

 

さらに2011年度より、子育て支援登録企業の中から、優良な取組や他の模範となる企業を「子育て支援エクセレント企業」として認定する取組を開始。

 

現在では子育て支援だけでなく、仕事と家庭の両立、女性の活躍推進などのワークライフバランスに関する一定以上の取組が行われていることが要件となっており、具体的には、年休取得率、所定外労働時間の削減策、育児休業取得率、女性の管理職率等の実績等を共通の評価軸として審査するのに加え、法律を超えた手厚い制度、労働時間縮減と業績の向上を両立させている実績、業界のトップランナーとなるべく取り組んでいる意気込み等、各社のオリジナルな、ロールモデルとなる取組が評価されるのが特徴です。
子育て支援に積極的に取り組み他の模範となる企業を「岐阜県ワーク・ライフ・バランス推進エクセレント企業」として認定(旧名称:子育て支援エクセレント企業)
 


《三重県》年間予算の16%を県内企業の働き方改革に

(株式会社ワーク・ライフバランスのサポート自治体)

 

全国のあらゆる地域で人口が減少していますが、三重県では人口減少に歯止めをかけるために「働き方改革こそが地方創生の鍵である」と以前から改革に取り組んでいます。

 

最近では、トップの鈴木県知事が先導し、ダイバーシティ先進県を目指して、令和3年度からデジタル社会形成に向けた全庁的な司令塔として最高デジタル責任者CDO(Chief Digital Officer)を置き、実行組織として、デジタル社会推進局を設置するなど、未来を見据えた働き方改革をしているといっても過言ではないでしょう。

 

さて、その三重県ですが、2015年に「地方創生交付金」を活用し、県下の企業経営者130名を対象とした、働き方改革セミナーを開催したり、個別の働き方改革コンサルティングを導入したりしています。そして、その参加企業では、業績アップや残業の削減、出生数の増加などの成果が上がったと言います。

 

三重県では以下の4つの柱を重要項目とし、働きやすさで選ばれる「職場」や「三重県」を目指し、県内企業の働き方改革を推進しています。
 

①ワーク・ライフ・バランスの推進
・ワークとライフの充実
・多様な働き方の尊重
・長時間労働の是正、休暇取得促進

②生産性の向上
・経営戦略としての「働き方改革」
・業務の見直しやIT化
・従業員による改善提案やスキルアップ

③誰もが能力を発揮
・多様な人材の活躍推進
・若者の就労や定着の促進
・正規雇用の促進

④次世代育成支援等
・仕事と子育て、介護の両立
・男性の育児参画の推進
・イクボスの取組の推進

 

これらに積極的に取り組む企業に対しては、「みえの働き方改革推進企業」としての登録や、表彰を行っています。そんな三重県自体ももちろん働き方改革に取り組んでいます。

 

平成29年には「働き方改革·生産性向上推進懇談会」からの

 

●  「会議」「出張」をやめる、なくす

●  ペーパーレス化によるフリーアドレスの実現

●  柔軟な働き方、時間編成を実現する制度の実施

●  モチベーションアップにつなげる表彰制度等の実施

●  取組の実効性を高めるためアクションシートの作成とトップからの発信

 

という提言を受け、各部局では以下の取り組みを行ったそうです。

 

[総務部]
業務効率化につながる庁内システムの機能の活用を促す通信の発行や、図書等の集約と見える化を実施。

[地域連携部]
ノー残業デーの弾力的運用や、情報ネットワークの障害発生等における緊急時のサテライトオフィスの有効性を検証。

[雇用経済部]
ワークライフマネジメント推進ワーキンググループを設置するとともに、班単位で業務効率化等を話し合う「カエル会議」を開催。
個人の終業時刻から翌日の始業時刻までの間に一定の休息時間を確保する「勤務間インターバル」に関する課題を研究。

[教育委員会]
タイムマネジメントの向上のため、班単位で各職員の業務予定を共有する「朝ミーティング」と、班長等による時間外勤務の再確認及び必要性の判断を事務局全体で実施。
 


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働き方改革をする際に大切な4つのステップ

ここでは、株式会社ワーク・ライフバランス小室社長の著書「働き方改革」に記載されている内容を参考に、具体的な手順を紹介していきます。


ステップ1 日々の働き方を確認する

※上記は(株)ワーク・ライフバランスの「朝メール.com」より

 

朝の段階で予定していた仕事が実際にはどのくらい 進められたのか、進められなかった理由は何か、日々の予定と実績を比較し振り返ります。
これは、まず朝に「今日一日、自分が何をするか」をタスクとスケジュールをセットでチームに共有し、退勤時に「1日の実績」を書いて振り返りを行う、というものです。
 


ステップ2 業務の課題を抽出する

予定通りに進められない原因となっているものは何か、外的要因だけではなく内的要因にも目を向け、自分たちで変えることのできる課題点を洗い出します。

 

毎日、自分の業務内容を共有していると、

 

「自分が1時間掛けてやっている仕事を先輩は30分でやっているけど、なんで差が生まれるんだろう?」

「この時間、課長は急ぎで重要な仕事をしているから、相談事は後の方が良いな」

 

など、自分の課題が見えたり、チーム内でのコミュニケーションも滑らかになっていきます。
 


ステップ3 ミーティングで働き方の見直しをする

1〜2週間に1回、チームメンバー全員で働き方の見直しミーティングを行います。このミーティングでは、個人レベルの工夫を共有したり、個人だけでは解決できないチームとしての改善項目についてミーティングを話し合います。(PDCAサイクルを回している最中であれば、実施中の施策の進捗も確認)

 

ミーティングでは、事前にアジェンダを共有したり、ファシリテーションや議事録役なども決めておくと、スムーズに進められます。ミーティング終盤では、課題に対してのアクションプラン(誰が何をいつまでにやるのか)も確認すると良いでしょう。
 


ステップ4 見直し施策の実施

ミーティングで施策が決定したら、それをチームでどんどん実施していきましょう。

アクションは、できるだけ全員が担当できるように振り分けなどを行い、メンバー間で取組に対する温度差が出ないようにするのもポイントです。
 




最後に

現在、クラウドサービスが普及し、テレワークやリモートワークが浸透していますが、実際自治体の現場では、システムやセキュリティ面の心配などもあり、テレワークなどがしづらい環境にあるかと思います。しかし、テレワークだけが働き方改革ではありません。

 

むしろ、テレワークなどは働き方改革の施策の1つ。普段の業務や時間の使い方を、個人やチームで見直すことで、今よりもより良い働き方が可能となり、プライベートの時間も確保しやすくなるはずです。

 

そして、自治体として避けられない人口減少問題。ワークライフバランスを大切にする人たちにとって、「魅力的な働き方」というのは、移住や転職の判断基準で大切な指標です。

 

自分たちの地域で頑張ってくれている企業の働き方改革サポートをすることで、その従業員や企業が輝き、その魅力にまた新しい人たちが惹きつけられる。そんな循環が日本の各地域で生まれると、地方創生にも繋がるのではないでしょうか。



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