全国で増え続ける空き家。その課題や活用方法を、事例を交えてご紹介します。
全国で増加の一途をたどる空き家数。
各自治体では空き家の増加に伴って起こる弊害を改善し、さらには地域にとってプラスに働かせるため活用をしていこうとさまざまな取組をしています。
「空き家の活用とはいってもどんなことをしたらいいんだろう」
「自分たちの地域でも空き家が増えてきたけれど、空き家バンクへの登録以外に良い方法はないのかな?」
「空き家を使って、関係人口や移住者を増やせないだろうか」
自治体職員の方々はこのようなお悩みをお持ちなのではないでしょうか。
そこでこの記事では、そもそも空き家問題とは? というところや、空き家に住みたい人がどんなサービスを利用して探しているのか、各自治体で空き家対策のためにどんな取組を行っているのか具体的な事例を紹介します。
空き家問題とは?
そもそも空き家問題とは、手入れされない空き家が増えることによって引き起こされるさまざまな問題を指します。
なぜ放置空き家が増えることが問題を引き起こす要因となるのかというと、例えば、
・雑草が伸び放題で景観の悪化
・不法侵入や住みつき、不法投棄、放火などの犯罪リスク
・不衛生な状態で異臭の発生
・建物の倒壊で人にケガをさせてしまうリスク
などがあるからです。
手入れされない空き家が増えるのは、高齢になったことによる老人ホームや家族の家への転居や、思い出が眠っていてなかなか手を付けられないなど、理由は多種多様ですが空き家問題は周囲にまで影響を及ぼすので対策が必要不可欠です。
個人でできる空き家問題対策は、放置しないこと。
つまり、雑草駆除をしたり空気の入れ替えや掃除をしたりするために定期的に訪れたり、売却や解体をしたり活用したりと何かしら対策を講じることが大切です。
空き家を見つけられるサービス
今は空き家問題の解決を促進するためにさまざまなサービスがインターネットを通して受けられます。
「空き家を借りたり購入したりして、DIYしながら暮らしたい」
「中古物件を購入したい。せっかくなら空き家の中から探したい」
このような方々は、以下のようなサービスを利用して空き家探しをしています。
● 空き家ゲートウェイ
● 空き家バンク
● 空き家情報提供サイト
1つずつ詳しく見ていきましょう。
空き家ゲートウェイ
空き家ゲートウェイは空き家を「手放したい人」と「使いたい人」のための100均(100円、100万円)物件マッチングサイト。
100均というのが非常にキャッチで、「え、なになに?」と惹きつけられてしまいますよね。100円、もしくは100万円の物件や土地の情報が掲載されています。
サイトの特徴は物件情報の詳しさにあります。
100均物件一覧をクリックすると、 1つの物件や土地に関する情報がコミカルで魅力的に紹介されています。写真量も多く、実際に足を運んで見たかのような満足感があります。
また、100均物件の活用アイデアもあって見ているだけでワクワクが止まりません。
空き家ゲートウェイのホームページには「空き家は無限の可能性を秘めている! 価値がないと諦めている物件に新たな価値創造を。」の文言があり、空き家に住みたいと考えている人の好奇心を駆り立て、創意工夫のチャンスに胸が躍るようなサービスです。
空き家バンク
各自治体ごとにも空き家バンク制度はありますが、全国版空き家・空き地バンクもあります。
国土交通省が公募で選んだ、(株)LIFULLとアットホーム(株)の2社によって2017年度から運用が始まりました。
地域ごとに検索ができたり、農地付き空き家や店舗付き空き家など、空き家+別機能の物件も検索ができたりと利便性が高いのが特長。物件情報は自治体が管理しているので、もっと詳しく知りたいとなったときには自治体の窓口につながる仕組みになっていて安心です。
空き家情報提供サイト
公益財団法人不動産流通推進センターが運営する空き家情報サイト。
物件数は少ないですが、「借りる検索」と「買う検索」があって空き家のレンタルと購入、どちらも検索できます。
空き家の現状と課題や国や地方自治体の取組などが分かるコンテンツもあって、空き家を借りたり買ったりするためだけでなく一般ユーザーと自治体職員の方の勉強のためにも使えるサイトです。
【出展社・来場者募集中!】
全国から自治体関係者が来場する日本最大の展示会
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空き家の活用事例
では実際に空き家を活用した事例にどのようなものがあるのか見ていきましょう。
兵庫県西宮市の「あんじゅうサポートクラブ」
兵庫県西宮市にある特定非営利活動法人「あんじゅうサポートクラブ」は、ケアマネージャーや社会福祉士をはじめとする福祉関連職、不動産関連職、行政書士や司法書士から構成されるメンバーと行政で暮らしの支援と住まいの確保に空き家を活用する活動をしています。
高齢の方や障害を持つ方、ひとり親の方などは家を借りて住みたいと思ってもハードルが高いケースが多く、なかなか家を借りられません。
空き家の所有者が貸したがらないことが多いからです。
借りたくてもなかなか借りられない人たちを住宅確保要配慮者といい、空き家をセーフティネット住宅として活用する試みを行っています。
体的には、
● 貸主向け及び支援者向けの住宅確保要配慮者のための空き家利活用手引書の作成
● 総合相談窓口の設置および相談会開催
● 啓発セミナーの実施
など、ネックとなる空き家所有者の方への理解を深め、住宅確保要配慮者の円滑なる住まいの確保に向けて住宅・福祉専門家および官学連携のもと、空き家を利活用した仕組みの構築をはかっています。
セミナーへの参加者も1回で40名にもなるなど、少しずつ理解の浸透が進んでいます。
東京都世田谷区の「空き家等地域貢献活用」
世田谷区では空き家を地域の資源と考え、地域貢献活用を目的とした空き家活用であれば、さまざまな条件はありつつも改修費用や初期投資費用として使える補助金審査に応募できます。その額はなんと最大300万円。
高齢者や障害児、子育てなどの支援拠点(ふくふくの家)や食を通じた多世代交流スペース(ふかさわの台所)が誕生しています。
用途を絞って補助金や助成金を用意することは、行政の役割としてなくてはならない部分。「社会貢献活動のために空き家を活用したいけれど、費用の工面が難しい」このような方々のニーズを果たすために毎年募集要綱が出されています。
三重県南伊勢町の空き家再生プロデューサー育成プログラム
三重県南伊勢町での空き家再生プロデューサー育成プログラムは国土交通省の「空き家対策の担い手強化・連携モデル事業」、「官民連携まちなか再生推進事業」、「地域の空き家・空き地等の利活用等に関するモデル事業」の採択を受けて実施しています。
実施主体は民間企業である株式会社エンジョイワークス。空き家バンクをより上手く活用して実効性の高いものにすることと、空き家活用の担い手を育てることが目的です。
空き家バンクの物件情報や利活⽤イメージ、町の魅⼒等をセットで⾒せる空き家バンクの特別サイトを作成してから、空き家案内、関係⼈⼝創出、事業創造サポートを組み合わせたイベントを実施すると、2回目には203名の参加申し込みがあり効果を発揮しています。
神奈川県秦野市の通いの場事業 多世代交流ひろば「みんなのて」
「みんなのて」は、神奈川県秦野市鶴巻地区にある地域密着型コミュニティ。
子育てサロンと高齢者サロンを兼ねて住民ボランティアが運営しています。
運営している住民ボランティアは、鶴巻地区の自治会や社会福祉協議会、民生委員児童委員協議会、商店会などで組織された「鶴巻地区すんでよかったまちづくり委員会」のメンバー。
保育園や高齢者福祉施設等での勤務経験や、子育て経験のあるメンバーが交代で働いています。
市では空き家の活用策の1つとして地域活動拠点としての活用を推進していて、運営費の補助であったり、空き家の所有者と使いたい側それぞれに連絡を取り合い、会ってもらうための調整をしたりしています。空き家所有者が無償または低価格で貸し出してくれ、地域住民の活動・交流の場となっています。
島根県出雲市の「地域見守りたい!」地学連携による空き家活用プロジェクト
島根県立大学、島根大学と地域の町内会、自治会と行政が連携した空き家活用で、学生向けのシェアハウス整備事業です。これは、増加を続ける空き家の利活用問題と地域の活力減退、学生のための低廉な住まいの不足の3つを解決する手段のひとつ。
アンケート調査や空き家の実態調査、先進事例の視察、地域住民を交えた空き家の片付けワークショップなどを実施したり、空き家の活用をきっかけとして地域と大学の連携を深めるために座談会を実施しています。
また、これらの取組を通して地域と大学の新しいつながりを作ることも目的としていて、空き家活用に係る企画、設計、改修、管理まで、住民と学生が一緒に作業をする仕掛けづくりを行っています。
シェアハウス整備後は入居した学生が高齢者の見守りを行うなど、地域と関わりを持ち続けることによって持続的な地域活動が行われるよう企画をしており、この学生向けシェアハウスは令和3年度に改修工事、令和4年度4月の入居を目指しています。
まとめ
全国で増え続ける空き家。
空き家問題は深刻ですが、見方を変えればピンチはチャンスにもなります。
各自治体では空き家問題を他の課題とも併せて解決する試みが多数ありますので、悲観することなくじっくりと取り組んでいきましょう。
この記事が少しでも空き家問題に頭を抱えている方々の参考になれば幸いです。