ソサエティ5.0とは?目指す社会像や地域における取り組み事例

ソサエティ5.0の実現に向けて「自治体ではどんなことに取り組めばいいのか」「そもそもどんな概念なのかよく分かっていない」などと悩んでいる方もいるのではないでしょうか。

 

AIやIoTの導入など先端技術で社会課題を解決していこうとする政府の基本方針の1つとして日本だけでなく世界全体が変わりうる可能性を秘めています。

 

そこでこの記事では「ソサエティ5.0の目指す社会」と「自治体での事例紹介」を分かりやすく解説します。これから訪れる新たな時代に向けて、地域の課題解決の足がかりの1つになるかもしれません。ぜひ最後までご覧ください。


▶監修・解説:北川哲也氏
補助金や許認可の手続きを専門とする行政書士事務所Link-Up代表 北川哲也氏。
2011年に29歳で開業し7年間個人事務所として中小企業向け行政書士サービスを展開。
●監修者の詳細な経歴はこちら



ソサエティ5.0とは

ソサエティ5.0とは、以下のように内閣府が定義しています。


「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」

引用元:内閣府


サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムとはどのようなものでしょうか?

 

●   現実空間のあらゆる情報を蓄積する

●  膨大なビッグデータを人工知能(AI)が解析し、現実空間にフィードバックする

 

これらを融合させ、経済的発展、社会的課題の解決と両立を目指した超スマート社会が「ソサエティ5.0」です。
ソサエティ5.0は、アナログとデジタルとのわかりづらかった境界が融合される「より人間味のある社会」といえます。

 


未来社会構想の変遷

未来社会構想の変遷には、人間が誕生してから現在までを表わすソサエティ1.0から4.0という概念が存在しています。

人間は誕生してから現代までを次のような表に、整理することができるのです。

 

●  ソサエティ1.0 狩猟社会
● ソ サエティ2.0 農耕社会
●  ソサエティ3.0 工業社会
●  ソサエティ4.0 情報社会

ソサエティ1.0(狩猟社会)からソサエティ4.0(情報社会)がそれぞれどんな時代なのか、具体的に見ていきましょう。


ソサエティ1.0 = 狩猟社会

「飢えとの戦い」の時代

・食料を求め獲物をどうやって狩るか、家族と生き残るための社会を過ごす


ソサエティ2.0 = 農耕社会

「自給自足」の時代

・今日の農業を作り上げ、田畑を耕し作物を育て、現在の社会基盤を作った社会
・家族が集団となり集落へと変わり、物の交換が始まる
・誰かのために生き、自然の脅威の災いがあっても絆へと変わった社会を過ごす


ソサエティ3.0 = 工業社会

「大量生産」の時代

・蒸気機関の力で工場の大量生産が可能になり、移動手段が格段に進歩する
・お互いを尊重し分かち合い、観察する目と助け合う心で困難を乗り越え続けた社会を過ごす


ソサエティ4.0 = 情報社会

「科学技術の蓄積」で到達した現代

・情報へ瞬時にアクセスができるようになり、多様なコミュニケーションが可能になる
 

<以下に示す社会実現が期待されている>
・渋滞や事故のない安全な社会
・どこにいても最適な医療を受けられる社会
・農業と漁業の生産を高め、持続可能を追求した社会
・災害時に必要な避難情報を共有できる社会




SDGsとの関係

SDGsとソサエティ5.0では、「AIやロボット」が深く関係してきます。

 

SDGsの持続可能な開発目標の達成に向けては、AIやロボットの活用が必要不可欠。また、ソサエティ5.0実現を目指したときに仮想空間と現実空間の融合のためにも、AIやロボットの活用が不可欠なのです。そのため、ソサエティ5.0とSDGsとは同じような目標や課題があります。

 

次に示す表が、ソサエティ5.0とSDGsと関わりのあるSDGsアクションプラン2022「優先課題8分野」の2分野です。


SDGsアクションプラン2022「優先課題8分野」の2分野

1.「Prosperity(繁栄:成長と分配の好循環)」の「成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション」
2. Planet(地球:地球の未来への貢献)の「持続可能で強靭な国土と質の高いインフラの整備」


この目標は、次に示すSDGsアクションプラン2022の「5つのP」と「優先課題8分野」から成り立ちます。
 

【SDGsアクションプラン2022の5つのP】

1.People(人間:感染症対策と未来の基盤づくり)

2.Prosperity(繁栄:成長と分配の好循環)

3.Planet(地球:地球の未来への貢献)

4.Peace(平和:普遍的価値の遵守)

5.Partnership(パートナーシップ:絆の力を呼び起こす)


【SDGsアクションプラン2022優先課題8分野】


①People(人間)


1.  あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現
2  .健康・長寿の達成


②Prosperity(繁栄:成長と分配の好循環)

3.   成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション


③Planet(地球:地球の未来への貢献)

4.  持続可能で強靭な国土と質の高いインフラの整備
5.  省・再生可能エネルギー、防災・気候変動対策、循環型社会
6.  生物多様性、森林、海洋等の環境の保全


④Peace(平和:普遍的価値の遵守)

7.  平和と安全・安心社会の実現


⑤Partnership(パートナーシップ:絆の力を呼び起こす)

8.  SDGs実施推進の体制と手段


例えば、ロボット(ドローン)の導入が勧めば、車を持たない高齢者に配達ができるようになるほか、農作業も簡単になるなど、地域間格差の解消や活性化につながる可能性があります。

 

ソサエティ5.0とSDGsの課題解決は、現実空間と仮想空間との融合につながり、様々な社会課題を解消できるかもしれないのです。

参考:SDGsアクションプラン2022|SDGs推進本部



ソサエティ5.0が目指す社会

ソサエティ5.0が目指すのは「すべての人とモノとが結びつき、あらゆる知識・情報を共有することで困難を解決できる社会」です。少子高齢化が進む中、人手不足などさまざまなことが問題となっています。

 

こうした問題を乗りこえるために、ソサエティ5.0実現で期待されるのが次に示す4つです。

 

1.IoTですべての人とモノがつながり、新たな価値が生まれる社会

2.AIにより、必要な情報が必要な時に提供される社会

3.ロボットや自動走行車の技術で、人の可能性が広がる社会

4.イノベーションにより、さまざまなニーズに対応できる社会

 

期待される内容と、背景を一つずつ見ていきましょう。


【ソサエティ5.0実現で期待される4つの内容と背景にある課題】

①IoTで全ての人とモノがつながり、新たな価値が生まれる社会
・知識・情報の共有、連携が不十分

②AIにより、必要な情報が必要な時に提供される社会
・必要な情報の検索・分析が負担
・リテラシー(活用能力)が必要

③ロボットや自動走行車の技術で、人の可能性が広がる社会
・年齢や障害などによる、労働や行動範囲の制約

④イノベーションにより、さまざまなニーズに対応できる社会
・地域の課題や高齢者のニーズなどに十分対応できない


 

これら4つの社会実現の先に待っているのが、「希望の持てる社会」「世代を越えて互いに尊重し合える社会」「一人ひとりが快適で活躍できる社会」です。

 

いつでも誰でも制限なく、可能性が広がりさまざまなニーズに対応できるようになります。ソサエティ5.0が目指す未来の社会が待ち遠しくなるのではないでしょうか。
 



ソサエティ5.0の重要な3つのポイント

ソサエティ5.0の実現に向けて重要なポイントは3つあります

 

1.仮想空間と現実世界の融合

2.安心・安全を確保する社会

3.一人ひとりの多様な幸せの実現

 

具体的な内容を、ひとつずつ見ていきます。
 


1.仮想空間と現実世界の融合

仮想空間と現実世界の融合では、AI(人工知能)を活用して多様な解析をし、必要な情報を現実空間に反映させます。

 

そのために必要なのは、「社会全体のデジタル化」です。デジタル化ができれば、現実空間で不可能だったシミュレーションが、仮想空間で可能となり、必要な情報を瞬時に受け取れるようになるのです。
 


2.安心・安全を確保する社会

また、ソサエティ5.0の実現には、安心・安全を確保する社会が欠かせません。

 

感染症や大規模災害、地球温暖化の脅威に直面していますが、仮想空間でシミュレーションを行い、防災・減災対策ができます。この技術は、ソサエティ5.0の大きな要です。
 


3.一人ひとりの多様な幸せの実現

安心・安全を確保した上で目指すのが、一人ひとりの多様な幸せの実現です。

 

あらゆる分野の知を総合的に活用し、社会のあり方や豊かさを考えていく。そのためには、複雑化する社会課題にたいじしていく力が求められています。

 

例えば、AIの活用で健康管理をし、自動運転で高齢者の移動を助けます。このように、先端技術を活用することでさまざまな人が持つ障壁を克服し、誰もが楽しめる社会実現が可能となる先に、一人ひとりのさまざまな明るい未来が待っています。

 


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ソサエティ5.0の重要な3つのポイント

ソサエティ5.0の実現に向けて重要なポイントは3つあります

 

1.仮想空間と現実世界の融合

2.安心・安全を確保する社会

3.一人ひとりの多様な幸せの実現

 

具体的な内容を、ひとつずつ見ていきます。
 


1.仮想空間と現実世界の融合

仮想空間と現実世界の融合では、AI(人工知能)を活用して多様な解析をし、必要な情報を現実空間に反映させます。

 

そのために必要なのは、「社会全体のデジタル化」です。デジタル化ができれば、現実空間で不可能だったシミュレーションが、仮想空間で可能となり、必要な情報を瞬時に受け取れるようになるのです。
 


2.安心・安全を確保する社会

また、ソサエティ5.0の実現には、安心・安全を確保する社会が欠かせません。

 

感染症や大規模災害、地球温暖化の脅威に直面していますが、仮想空間でシミュレーションを行い、防災・減災対策ができます。この技術は、ソサエティ5.0の大きな要です。
 


3.一人ひとりの多様な幸せの実現

安心・安全を確保した上で目指すのが、一人ひとりの多様な幸せの実現です。

 

あらゆる分野の知を総合的に活用し、社会のあり方や豊かさを考えていく。そのためには、複雑化する社会課題にたいじしていく力が求められています。

 

例えば、AIの活用で健康管理をし、自動運転で高齢者の移動を助けます。このように、先端技術を活用することでさまざまな人が持つ障壁を克服し、誰もが楽しめる社会実現が可能となる先に、一人ひとりのさまざまな明るい未来が待っています。

 



ソサエティ5.0が解決する社会的問題

ソサエティ5.0を実現するにあたって、解決する社会問題は5つあります。

 

1.地域間の格差

2.少子高齢化に伴う社会コスト

3.持続可能な産業化の推進・人手不足

4.食料の増産やロス

5.温室効果ガスの排出

 

ひとつずつ順番に見ていきます。
 


地域間の格差

地域間の格差では、下記のような問題がよく挙げられます。

 

●  情報や富が一部の地域や企業に集中している

●  買い物に行けない高齢者がいる

 

買い物に行きたいときに出かけられず、働く場所が都会に集中していては過疎化や買い物難民の増加などが起こり得ます。
受け取りたいものをその場で受け取り、行きたいところへいくには、ドローンや自動運転の導入が必要不可欠になってきます。

誰がどこにいても同じ情報や富を享受でき、交通手段の不便さなどが解消されれば、地域格差問題の解決につながるかもしれません。
 


少子高齢化に伴う社会コスト

少子高齢化に伴う社会コストには、次のような問題があります。

 

●  高齢化にともなう医療・介護の需要の拡大

●  医療の人材不足

 

高齢化社会が背景にある日本において、医療や介護の面で人材の不足が叫ばれています。職員の人手が足りない一方、高齢者は増加しています。
医療の人材不足を解決するには、ロボットやAIの導入が必要不可欠です。

 

どこにいても、オンラインによる遠隔診療ができるようになり、医療の人材不足の問題が解決につながります。
 


持続可能な産業化の推進・人手不足

持続可能な産業化の推進のためには、「少子高齢による労働人口の減少」も解消する必要があります。

 

子どもの出生率が低くなれば、将来の担い手は不足します。労働人口の減少をカバーする解決策としては、AIやIoTの導入です。人の代わりの機械が物流を効率化し、販売先の拡大ができるようになると、労働人口の減少問題が解決されていくはずです。
 


食料の増産やロス

食料の増産やロスには、次のような問題があります。

 

●  生産数の約3分の1が食品ロスになっているのに、食糧難民が世界には数億人いる

 

こうした食品ロスをなくすためには、ICTやロボット技術の導入が必要です。例えば、機械が需要と供給のバランスをとり、見合った量を計画的に生産できるようになると食品ロス解消へと繋がるはずです。


温室効果ガスの排出

また、温室効果ガスの排出問題も世界的な問題です。

 

●  地球温暖化の原因となる温室効果ガス(GHG)の排出は、日本は世界でも上位に入る

●  平均気温の上昇、海面水位の上昇など

 

日本は世界でも上位に入るほどの温室効果ガス排出量が多く、世界全体の3%を占めます。GHG削減には、太陽光発電などの再生可能エネルギーの主力電源化や、スマートシティの整備を取り入れることが解決策の1つになるでしょう。

 



ソサエティ5.0を支える技術

ソサエティ5.0を支える技術は、人工知能の補完と生産性の向上です。
その種類には次に示す4つがあります。

 

1.IoT(Internet of Things)

2.ビッグデータ

3.AI(人工知能)

4.5G

 

どのような技術なのか順番に説明します。
 


IoT

IoTとはInternet of Thingsの略で、「モノのインターネット」と呼ばれています。簡単に言い換えると、「モノをインターネットに接続する技術」です。

 

実際の生活の中では、どのような活用事例があるのか見ていきましょう。

 

●  家の鍵をスマートフォンで操作(QrioLock ・キュリオロック)

●  照明をスマートフォンで操作(Philips Hue)

●  室温を好みの温度に自動調整(Nest Learning Thermostat)

 

家の鍵をスマートフォンで操作では、スマートフォンが鍵(モノ)となって、インターネットを経由し、家の鍵が開く。

 

これが、IoTの活用になります。
 


ビッグデータ

ビッグデータとは、人間では全体像を把握するのが難しいほど巨大なデータ群です。ビッグデータは「データの大きさ」「データの種類」「出入力や処理の速度」という3つの構成要素から成り立っています。

 

ビッグデータを活用した事例は次のとおりです。

 

●  位置情報

●  インターネット上の広告

●  ECサイトでの購入履歴など

●  ECサイトの購入履歴からおすすめの類似商品の広告表示があるのは、ビッグデータを用いた分析の結果の一例です。
 


AI

よく耳にすることも増えた「AI」とはArtificial Intelligenceの略で、「人工知能」を意味します。
一般的には、人間に近い知能を持ったコンピュータともいわれ、人工的でありながらも知的な振る舞いで再現できる優れものです。

AIには次のような活用事例があります。

 

●  Face ID(Appleが開発した顔認証システム)

●  駅案内ロボット(高輪ゲートウェイ駅)

●  テキストマイニング(自然言語処理)

●  AI電子レンジ(シャープ製:ヘルシオAX-XW400)など

 

AIは身近になりつつあり、駅員として音声案内端末を通して、構内の案内をしている場面を目にする機会があるのではないでしょうか。

 

AIの活用で、業務の効率化と生産性の向上が期待されていますので、人件費のコスト削減に加え、現場仕事での怪我のリスク回避など正確な業務を遂行してくれるのが大きなメリットです。
 


5G

5Gとは5th Generationの略で、「第5世代移動通信システム」を意味し、「高速大容量」「高信頼・低遅延通信」「多数同時接続」の3つの特徴があります。

 

次に示すのが、5Gの活用事例です。

 

●  AR/VR/FR(拡張現実 / 仮想現実 / 多視点)

●  遠隔診療

●  警備ロボット

●  無人店舗

●  自動運転

●  遠隔手術

●  無人倉庫など

 

インターネットの仮想空間と現実空間をつなげるのに欠かせないのが「5G」の普及。

 

IoT機器やセンサー、ロボットやドローンの機器ともつなげるための無線技術として期待されているので、ソサエティ5.0を実現するためにも「欠かせない重要な要素」として注目されています。
 



ソサエティ5.0の3つの課題

ソサエティ5.0を普及させ、現実空間と仮想空間を融合させていくには、3つの課題があります。

 

1.技術的な問題

2.セキュリティ問題

3.プライバシー問題


具体的にどのような問題なのか、以下で説明します。

 


1.技術的な問題

技術的な問題には、「大量なデータをリアルタイムで処理できる基盤をつくる」必要があります。リアルタイムでデータ処理するためにも、5Gやエッジコンピューティングの普及は欠かせません。しかし、現状はまだ普及の推進途中です。


5G
「高速大容量」「高信頼・低遅延通信」「多数同時接続」できる

エッジコンピューティング
IoT端末などのデバイスそのもの、その近くに設置されたサーバー
リアルタイムで負荷が分散されるため遅延が起こりにくい


ソサエティ5.0の実現に向けて同じ意思を持って進んでいく先に、技術的な問題解決が待っていますので、企業と政府とが力を合わせることが大切で、今後の動向に注目が集まっています。
 


2.セキュリティ問題

また、セキュリティの問題も表面化しています。特に「個人情報の担保」が課題です。

 

IoT機器は一般への普及が始まったばかりなので、セキュリティの甘さが懸念されています。今後は個人で「セキュリティに関するネットリテラシーを高める力」が必要になってきます。

 

万が一、セキュリティ被害が発生した時のシミュレーションと体制づくりは必要不可欠ですし、多くの人が知っておかなければならない課題でもあります。

 


3.プライバシー問題

プライバシーの問題は、以下の事例が企業などで現在すでに発生しています。

 

(1)インターネットで検索していただけなのに、個人情報の詳細が外部に漏えいした
(2)AIを活用したスマートスピーカーの録音が第三者に聞かれていた

 

どこに問題点があり、どのような解決策があるのでしょうか。


問題点

(1)Cookie等を通じて、ユーザーの細かい個人情報を取得する
(2)AIを活用したスマートスピーカーの録音を提供先の従業員が聞く


解決策

(1)個人関連情報にかかる本人の同意を得る
(2)個人を特定されないように、予めデータを加工してから送る



個人情報の漏えいを防ぐには、これまで以上に注意する必要があります。

 

また、AIを活用する中で、第三者に聞かれて不都合なものは、あらかじめ加工データにしておくなど情報社会を生き抜く術を身につけなくてはなりません。プライバシーの問題は常に身近なものですが、ソサエティ5.0が実現した際にはこれまで以上にこの問題に向き合っていく必要があります。
 



ソサエティ5.0に向けた取り組み事例

ソサエティ5.0の実現に向けて必要となるセンサー機器やAIの活用は、実際にどのような場面で使われているのでしょうか。今回ご紹介するのは、鳥獣被害対策にセンサー機器を利用した例と、子育て支援にAIを活用した事例です。

 

1.長野県塩尻市|鳥獣被害対策

2.埼玉県さいたま市|子育て支援

 

長野県塩尻市と埼玉県さいたま市のそれぞれの具体的な取り組みをご紹介します。
 


長野県塩尻市|鳥獣被害対策

長野県塩尻市では、鳥獣被害対策に獣検知センサーや罠捕獲センサーを活用し、稲作被害の防止と稲作収入の増大に成功しました。平成24年度の導入で、前年度よりも65%被害面積を減らすことに成功し、続く平成25年度は被害面積が0%になっています。


平成23年度        
被害面積(%):85      
稲作収入(万円):354   


平成24年度(実証1年目)      
被害面積(%):20       
稲作収入(万円):1,890 


平成25年度(実証2年目)      
被害面積(%):0       
稲作収入(万円):2,362 


平成23年度が被害面積85%(稲作収入354万円)から、翌年の平成24年度は被害面積が前年度より65%減少し、稲作収入は約5倍に伸びています。実証2年目は、被害面積0になり、稲作収入が前年度の約1.2倍、獣検知センサーや罠捕獲センサー活用前の平成23年度との比は6.6倍と、大きく作物収入を増やすことに成功しました。

 

では、どのようにICT機器を活用したのかを見ていきましょう。


ICT機器の活用方法

水田周辺に獣検知センサーや罠捕獲センサーを設置


センサー稼働

①サイレン音やフラッシュ光で獣を追い払う

②検知情報から農家や狩猟会に地図付きでメール配信される


結果

迅速な対応で、追い払いや捕獲に成功


設置されたセンサーで罠に引っかかった獣は、すぐに農家や狩猟会に地図付きメールが送られています。この迅速な対応が功を成し、稲作の収入増大に貢献できました。

参考:Society5.0時代の地方

 


埼玉県さいたま市|子育て支援

埼玉県さいたま市では、子育て支援にAIを活用し、保育所の利用調整業務の効率化に成功しました。

 

保育所入所選定(約8,000人の利用で300施設への調整業務)


担当:人    
作業時間:1,500時間  


担当:AI
作業時間:数秒  



保育所入所選定には、毎年約8,000人の応募があり、300施設への振り分け業務が発生しています。担当職員は、入所先の割り振りに加え連絡調整業務も負担になり、本来従事する仕事以上の内容を担当していました。

 

そのような背景から、職員の負担軽減や人材の効率配分をねらいにAIを導入すると、入所選定はわずかの数秒で振り分けが完了しています。

職員の負担軽減や必要な業務に従事する時間確保が担保できる結果となりました。

参考:Society5.0時代の地方

 


地域におけるSociety5.0の推進関連施策集

地域でSociety5.0を推進するにはどうしたらいいのでしょうか。他自治体の成功事例が参考になるかもしれません。

 

Society5.0の先進事例は、地域Society5.0推進連絡会議構成府省が発行している「地域におけるSociety5.0の推進関連施策集」に掲載されています。この資料は分野別にまとめられた施作集で、ソサエティ5.0実現に向けた具体的な技術の活用方法を知ることができます。

 

5G、農林水産、医療・教育、サービス、交通、公共・社会基盤など、地域の課題解決や地域の魅力向上に取り組む自治体が取り組んだ事例もあります。また、目的や予算、担当部署の連絡先など、必要な情報がまとめられているので、どんな成果があったかのポイントも把握できるでしょう。

参考:地域におけるSociety5.0の推進関連施策集


まとめ

本記事では、ソサエティ5.0とは何かについて、自治体での成功事例をもとにご紹介しました。ソサエティ5.0実現に向けて、地方の課題解決に向けた取り組みには2つのポイントがあります。

 

●  SDGsと関わり合いながら地方課題解決の取り組みに活かしていく

●  成功事例や導入事例をもとに、新技術を地域課題に活かしていく

 

人とモノとがつながり、人では解決できなかった新しい時代はすぐそこまで来ています。
先端技術を活用することで困難や障害を解決できる社会づくりが進んでいます。日本の各地域でもきっと先端技術の活用で解決ができるはずです。


▶監修・解説:北川哲也氏

補助金や許認可の手続きを専門とする行政書士事務所Link-Up代表 北川哲也氏。

2011年に29歳で開業し7年間個人事務所として中小企業向け行政書士サービスを展開。2018年春に株式会社Link-Upを立ち上げ、士業サービスでカバーしきれないコンサルティングや顧問サービスをスタート。公益社団法人茅ヶ崎青年会議所の2021年度理事長や認定NPO法人NPOサポートちがさき参画など活動多数。



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