失敗のないスマートシティ実現に向けて取組事例を日本国内と海外事例で

新技術を活用しながら地域社会の課題解決や価値創造を図るスマートシティの取り組みは、国内外のさまざまな地域で行われています。

スマートシティ実現に向けての施策を構築・実施し成功に導くためには、先進事例をもとに成功事例に共通する要素を学ぶのが良いでしょう。

そこでこの記事ではスマートシティ実現に向けて国内外で取り組んだ先進事例7事例(国内5事例、海外2事例)を中心に紹介します。成功事例に共通する要素も紹介しますので、失敗しないための事業づくりのヒントにしてください。


▶監修・解説:北川哲也氏
補助金や許認可の手続きを専門とする行政書士事務所Link-Up代表 北川哲也氏。
2011年に29歳で開業し7年間個人事務所として中小企業向け行政書士サービスを展開。
●監修者の詳細な経歴はこちら



近年注目を浴びているスマートシティとは?

近年注目を浴びているスマートシティとは「新しい技術を活用し、問題解決や価値創造を図る持続可能な都市や地域」を意味します。

 

内閣府と国土交通省によるスマートシティの定義は以下のとおりです。

スマートシティは、ICT 等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)の高度化により、都市や地域の抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を創出し続ける、持続可能な都市や地域であり、Society 5.0の先行的な実現の場と定義されています。

出典元:内閣府「スマートシティ」

「都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」を『スマートシティ』と定義し、その実現に向けた取り組みを進めています。

出典元:国土交通省「スマートシティに関する取り組み」

世界人口は2022年に80億人を突破し、更に2050年には97億人を超え、その7割が都市部に集中すると言われています。

 

人口増加や、都市部への人口一極集中は、交通問題や環境問題が引き起こされやすくなります。加えて地方では過疎化が進み、より一層魅力あるまちづくりが必要となるのです。このような背景もあり、近年、日本のみならず、海外でもスマートシティが注目されるようになりました。

 

特にこれまで実現できなかった課題を、技術革新によってまちづくりにデジタル技術を活かすことが現実的になり、地域課題の解決をスマートシティの取り組みとして実現することは必要不可欠です。なぜなら、スマートシティ実現の先には、AIやloTなどの新技術を活用しながらモノと人、またはモノとモノとをつなぎ、価値を生み続けられる街づくりが期待できるからです。

 


スマートシティを成功に導くためには?

地域課題を解決し、地域でスマートシティを成功に導くためには、以下3つのポイントが重要です。

 

1.地域住民の声を聞き、地域課題を正しく分析する力

2.新技術を効果的に活用する力

3.地域住民や自治体など、さまざまなステークホルダーとの連携力

 

地域住民の潜在ニーズの把握は、スマートシティで目指される「価値を生み出し続けるまちづくり」の根幹になります。こうした地域の潜在ニーズを把握した上で課題解決を図るには、新技術を活用した事業展開が必要不可欠です。

 

現状は各自治体が試行錯誤しながら、独自の手法でスマートシティ実現に取り組んでいます。それらは全てが成功しているわけではなく、中には失敗した事例もいくつかあります。

 

その中でも失敗に終わってしまった事例は、上記3つのポイントいずれかを押さえられていませんでした。焦点がずれたまま取り組みを始めても、地域住民や自治体職員がついてこれずに失敗するケースが多いでしょう。

 

このようにスマートシティ実現には、地域の特性や住民の潜在ニーズを正しく分析する力と新技術との掛け合わせに加え、さまざまな関係者と連携する力が必要です。



【インタビュー】スマートシティ実現に向けた国内取組事例5選

「スマートシティ実現に向けた国内事例」として、下記の5事例をご紹介します。
 

1.認知症高齢者の見守りサービス【兵庫県加古川市】

2.中心市街地の浸水対策【香川県高松市】

3.空き家対策支援事業【群馬県前橋市】

4.買い物弱者支援【千葉県柏市】

5.高齢者の外出促進【広島県呉市】

 

上記5つの事例は成功事例だけでなく、失敗事例もあります。成功・失敗を分けたのは、住民に寄り添った地域課題の分析と新技術の活用が有効であったかどうかです。

 

それでは、それぞれの取り組み事例を見ていきましょう。

 


【インタビュー】官民連携のサービスで市民の暮らしを守る|兵庫県加古川市の事例

スマートシティの代表的な事例として、全国の自治体・企業から注目を集める兵庫県加古川市。“見守りカメラ”や “ビーコンタグ(BLEタグ)”などのICT(情報通信技術)を活用することで、地域の課題解決に取り組んできました。スマートシティ推進担当課の多田さんに、これまでの経緯を伺いました。
 

□子育て世代が住みたいまちづくりと高齢者・子供の安全確保を第一に

多田: 加古川市が取り組む課題は大きく2つ。「刑法犯認知件数を減らすこと」と、「高齢者・子供の安全の確保」です。人口26万人弱の加古川市ですが、ベットタウンでありながら、兵庫県下において刑法犯の認知件数が平均を上回る自治体でした。また、平成28(2016)年頃には、2日に1回の頻度で認知機能の低下のおそれのある高齢者の行方不明事案が発生していました。このような背景から、市民の皆様が安心して暮らせる安全なまちづくりのために、平成29年度に900台、平成30年度には575台の見守りカメラを設置しました。見守りカメラには「ビーコンタグ(BLEタグ)検知器」を内蔵し、子供や認知機能の低下のおそれのある高齢者の位置情報履歴を知らせるサービスを展開しています。

 

――カメラ設置の際の苦労はありましたか?

多田: カメラを設置すること=プライバシーの問題に関わります。自宅の前にカメラが設置されたら抵抗があるのは当然のことだと思います。市民の方々には監視カメラ(セキュリティカメラ)ではなく、“見守り”カメラ(セーフティカメラ)であることを理解していただく必要がありました。見守りカメラの設置場所は、ホームページで閲覧できるほか、看板で明示しています。

 

設置前の段階においては、市長自ら12会場に出向き、市民に向けてカメラの機能や肖像権・プライバシーへの配慮について説明し、意見交換を行いました。実際に設置する際も、カメラ近辺に住宅がある場合は許可をとり、具体的に住宅のどの範囲までカメラに映るのかを説明することもありました。

 

また、当時、国内にはカメラ設置に関する法律がなかったため、加古川市は『加古川市見守りカメラの設置及び運用に関する条例(平成29年条例第28号)』で、どのような場合に記録されたデータを使えるのか、何日保管されるのかといった事項を定めました。市議会で条例を制定するということは、市民の総意と同義です。このように、丁寧に市民の合意をとり、カメラを設置してきた経緯があります。
 

□施策評価の判断基準は「市民の為になったかどうか」

――官民連携の具体的な取り組みについて教えてください。

多田: 現在2社導入している「ビーコンタグ(通称:見守りタグ)」は民間のサービスです。インフラ構築を官が、運営を民が担当している形です。民間2社と連携している理由としては、公平性の担保と価格競争を促すため。民の競争を促し、新たなサービスをつくれないか模索するのも、我々の役割だと考えています。

 

それぞれの得意不得意分野と利用者の特性を考慮しつつ、選択肢を幅広く持つことが市民の為になります。今年度もデジタル田園都市国家構想推進交付金を使って、サービス提供事業者を1社増やす予定です。

 

――見守りカメラと見守りタグ設置の成果は、具体的にどれほどありましたか?

多田: 刑法犯認知件数について、見守りカメラ設置前の平成29(2017)年12月時点では、2926件あったのに対し、令和3年(2021)年12月には1433件まで減少しています。設置前と比べて、半減させることができました。犯罪抑止に絶大な効果があったと言えます。

 

認知機能の低下のおそれのある高齢者の行方不明事案については、令和3年度の利用者アンケートでの回収数143件のうち行方不明になった方が56名、見守りタグを活用して発見された方が29名。見守りタグを活用した発見数が多くなっています。

 

成果の指針として、「費用対効果」をよく聞かれるのですが、これは測りようがありません。仮にご家族が行方不明になり、見守りタグを活用して発見された場合、単純に費用対効果を測定できるのかと問いたい。安全・安心の提供という視点で語られるべきで、マネタイズ等の問題ではありません。認知症のご家族を持つ市民の負担を少しでも減らし、犯罪を一件でも減らしたい。私たちはそういう思いで取り組んでいます。

 

インタビューの続きは、こちらから無料でダウンロード可能です。
加古川市以外の成功事例についても掲載しております。

 


【防災|浸水対策】香川県高松市の事例

香川県高松市の取り組み内容は「中心市街地の浸水対策」です。
高松市が浸水対策に取り組んだ背景には、平成16年の台風23号などの自然災害の影響があります。この台風による記録的豪雨で、高松市街地は床上浸水4,431戸、床下浸水13,336戸と、甚大な水害被害を受けました。

 

【平成16年・台風23号による被害状況】


最高総雨量:    674mm
最大雨量/時間:    118mm
死者 :   11名
重軽傷者:    28名
家屋の全壊 :   48戸
家屋の半壊:    40戸
床上浸水:    4,431戸
床下浸水:    13,336戸
その他の被害:    堤防決壊による洪水、中小河川の氾濫



高松市の都市部は海からの距離が近いため、災害が起きた時には甚大な被害がもたらされる恐れがあります。また、これまで災害が少なかったことから、市職員の災害時対応経験の薄さも懸念材料でした。

 

こうした状況のもと、高松市は浸水対策として以下2つの取り組みを実施しました。
 

□【浸水対策で重要な役割を果たす下水道】

1つ目の取組としては、下水道の役割を活用した防災対策です。

下記の図は、平成18年2月に定められた「中心市街地浸水対策計画」の概略図です。浸水対策地域やポンプ場の設置、バイパス管の工事などの計画が記載されています。


浸水対策の中で最も重要な役割を果たすのが「下水道」です。その理由は、下水道の役割の一つである「浸水防除」が浸水対策に効果を発揮するからです。

 

浸水の防除には、市街地に降った雨水を川に流し、貯留・浸透させる役割があります。これにより、人々の命や財産が守られ、高松市の目指す「安心・安全な街づくり」へとつながります。

 

□【新技術の活用と防災対策】

二つ目の取り組みは、新技術(IoT)を活用し、地域全体のDX化を推進する「スマートシティたかまつ」プロジェクトです。「スマートシティたかまつ」では、中心市街地の浸水対策を始めとする、さまざまな課題解決にIoT共通プラットフォームが活用されています。

次の図は、新技術の活用とともに高松市が目指すスーパーシティ実現のイメージです。
 

「スマートシティたかまつ」ではモノとインターネットを繋げた情報の共有がさまざまな分野で期待されています。

 

例えば、高潮などの災害により浸水被害があった場合、市内に設置されたカメラや水位センサーが危険を感知し、IoT共通プラットフォームに集約される仕組みです。危険感知はダッシュボードで可視化できるようになっており、どこの地域で災害が発生しているのか、またどこに避難すべきかをいち早く情報を届けます。
 


【インタビュー】「空き家バンク」で物件の有効活用を促す|群馬県前橋市の事例

全国的に空き家問題が深刻化するなか、前橋市では以前から問題意識を持ち、対策を進めてきました。国の特措法に先駆けて、平成25年度に「前橋市空き家等の適正管理に関する条例」を制定。相談窓口の「空家利活用センター」や空き家物件を登録できる「空き家バンク」を設置し、空き家の利活用につなげています。

 

□ニーズに合わせた補助金制度と空き家バンクで利活用を促進

――空き家対策に関する前橋市の取り組みを教えてください

金井: 空き家対策への第一歩として、平成27年度に「空家利活用センター」を開設し、市民の皆さんが空き家について気軽に相談できる窓口を整備しました。また同じ年に「空家等利活用ネットワーク」という事業を立ち上げ、不動産関係団体と協定を結んで、空き家の市場流通を促す枠組みを整えました。令和3年度には、市内にある空き家を有効活用するための「空き家バンク」制度をスタート。所有者が売りたい、貸したいという空き家を登録し、一般に情報公開することで、不動産業者だけでなく、誰でも物件情報を見ることができるようになり、空き家の有効的な活用を生み出しています。

 

――空き家対策の補助金もあるのでしょうか?

金井: 空き家の解体やリフォーム、空き家を利用した二世帯近居・同居住宅の新築や改修に対する補助金制度を設けています。令和3年度の補助金利用件数は、リフォーム12件、二世帯近居・同居24件、解体は115件にのぼり、ある程度の効果が出てきていると感じています。

 

□相談窓口に届いた市民の声。近隣からの情報で空き家を把握

――「空家利活用センター」を設置したあと、市民の皆さんの反応はいかがでしたか?

金井: 例年200件ほどの相談や問い合わせが寄せられるようになりました。気軽に相談できる窓口を設けたことで、市民の声が直接届くようになり、実状を把握できるようになったと思います。

 

そんな相談のほとんどが、「隣の空き家が老朽化して倒壊しそう」「空き家に雑草が繁茂している」といった、空き家の近隣に住む方からの苦情の電話です。多くの市民が空き家問題で困っていることを改めて認識させられ、早急な対応を迫られていると実感しました。

 

ただ、空き家には所有者がいるため、原則として前橋市が勝手に手を加えることはできません。近隣の方などから相談があった場合、その空き家の所有者に文書などで指導したり、状況を改善してほしい旨を伝えたりするのですが、所有者がすぐに動いてくれるケースは少なく、強制的な手段も限られているので、対策に苦慮しているところです。

 

また、所有者調査をしてみると、放置された空き家の所有者は高齢の方が多かったり、遠方に住んでいたりして、交渉が難しい場合もあります。一方、相談者のなかには、「市に言えば何とかしてくれる」という考えをお持ちの方もいて、事情を説明しても納得いただけないことがあり、今後に向けて対応をどうすべきか課題となっています。
 

□空き家にしないために何が必要か。早めの対策と徹底した情報周知

――空き家問題を増やさないためには、どうすればいいのでしょうか?

金井: 空き家は放置して歳月が経つほど扱いが難しくなり、問題が顕在化してくることが多いものです。なるべく早いうちに相談してもらうことが、対策への近道となります。よく見られるのが、相続した家をとりあえずそのままにしておいて、いつの間にか劣化が進んでしまうケースです。痛みが激しくなるほど利活用がしにくくなり、解体にもお金がかかるため、その後も放置して事態が悪化していきます。空き家になる前、もしくは、なり始めの段階で、前橋市や不動産業者、相続関係のことであれば司法書士など、いろいろな専門家に相談して、適切な対処をしてもらうことが重要です。

 

――今後どんな対策を考えていますか?

金井: 最近の空き家急増に伴い、今後は法改正が急速に進むことが予想されます。新たな法律について市民にどう周知させていくか、検討を重ねているところです。

 

例えば、令和6年4月から、これまで任意だった不動産の相続登記が義務化されます。所有者不明土地の解消に向けた国の政策なのですが、こういった新たなルールを皆さんに知ってもらうため、普段から広報誌やチラシ、ホームページなどで情報の提供を行っています。

 

それに加えて、ご家族の死亡届の手続きに来られた方に、市民課の窓口などで案内するのもひとつの方法だと考えています。空き家を放置するとどんなリスクがあるのか、どんな制度を利用すれば便利なのかなど、積極的に発信していければと思っています。

 

また、前橋市では不動産業界と連携して、年2回、無料の空き家相談会を開催しています。空き家の売買や管理方法、活用法などの相談に専門家が応じています。今後はもっと回数を増やしたり、高齢者も足を運びやすいような場所に会場を設けたりして、より多くの方に参加してもらえるよう改善したいですね。

 

インタビューの続きは、こちらから無料でダウンロード可能です。

前橋市以外の成功事例についても掲載しております。  

 


【交通|買い物弱者支援】千葉県柏市の事例

千葉県柏市の取り組み内容は「買い物弱者支援」です。買い物弱者とは、居住地近くにお店がなかったり、身体的等の理由で外出が難しかったりと、生活に必要な買い物やサービスを受けるのに何かしらの困難を抱えている人を指します。

 

買い物弱者が発生する背景には、人口減少や高齢化を筆頭に、交通網の不自由さや、インターネットを活用した流通産業の不参加などが挙げられます。買い物弱者は地方だけでなく、都市部でも高齢化の独り住まいなどが理由で増えているのが現状です。そこで千葉県柏市では、平成22年に買い物弱者に対し交通面での取り組みを実施しました。

 

主に、下記の人を対象とした4つの団体の事例です。
 

● 限界団地の居住者(65歳以上の高齢者が半数をしめる団地)

● 都市近郊のベッドタウン居住者

● 居住地にスーパーや公共交通がない高齢者

● 自家用車を持たない移動困難者や高齢者


事業の内容は三者三様で、それぞれに特色があります。しかし、全ての事業がうまくいったものばかりではありません。

では、成功事例と失敗事例にはどのような背景があったのでしょうか。事業内容の結果と課題も合わせて見ていきましょう。

 

◆成功事例

ⅰ)限界団地の居住者


事業内容:買い物代行・配食サービス

● 食料品や生活品を扱うお店を開く

● 子どもや高齢者への見守り機能付きのサービスを実施

● 配達料を200円とする

● 配達日時は週6日(月から土)の15時から18時とする

● 注文受付時間は上記曜日の10時から14時まで

● 注文受付方法は店舗への電話またはFAX

● 加入時に1,000円を徴収し、以降は毎月700円の集金とする


結果

店舗運営が主体となり、ビジネスとして成り立つ可能性はある


課題

地域の特色もあり、一人当たりの売上高が低い
作業時間の効率化を主軸に可能な経費を抑える必要がある



◆失敗事例

ⅰ)都市近郊のベッドタウン居住者の取組事例


事業内容:買い物代行サービス

● 利用者を募集し、年会費を1,000円とする

● スーパーやコンビニなどと連携し、購入商品のリストアップチラシを広域に配布

● 会員には別途注文表やFAX用紙を配布

● 注文の仕方は電話かFAXで行う

● お届け日時間は週に3回(月・火・木)の14時から18時とする

● 配達料は1回300円で、商品を引き換えに代金を支払う


結果

人件費などの経費をまかなえきれなかった
ビジネスとしては成り立たない


課題

年会費や配達料だけでは厳しい現実がある
NPO法人がボランティアとして関わり、地域と連携しながら取組む



ⅱ)住地にスーパーや公共交通がない高齢者


事業内容:デマンド交通を活用した買い物支援

● 外出の動機付けとしてお出かけ支援サービスを行う

● 買い物の計画を提案

● デマンド交通や施設利用の予約代行を行う

● 買い物のサポートや代行を行う

● 買い物サポートのサービス対価を無料とした

● 利用者が少ないことから、協賛企業からの紹介手数料の徴収が難しかった

● 買い物代行は利用者がいなかった


結果

交通は不便であるが、多世帯家族が多いため高齢者のみの利用は厳しい
地域のニーズの汲み取りが十分に行えず、ビジネスとしては成り立たない


課題

地域の潜在的ニーズを分析し、魅力ある事業内容にする必要がある



◆その他の事例

ⅰ)自家用車を持たない移動困難者や高齢者


事業内容:提案型商品の御用聞き・宅配車を利用した定時宅配

● 移動手段がない人に向けて御用聞きと宅配を行う

● 会員向けに日替わりセット2人前(500円)を作り御用聞き宅配をする

● 重い荷物を持てない人に向けて定期宅配を行う

● 協力店舗から商品を預かり、1日2回の定期宅配サービスを行う

● 広告車として連携店舗から広告費を徴収し、運営費とする

● 1,000円以上の買い物で宅配料無料で提供する

● 電話での注文受付を開始


結果

(提案型商品の御用聞き)
高齢者だけのマーケットでは規模が小さかったため、ビジネスとしては成り立たない

(宅配車を利用した定時宅配)
条件付きでビジネスとして成り立つ


課題

(提案型商品の御用聞き)
マーケット規模の見直しが必要

(宅配車を利用した定時宅配)
経営内容には課題はあるが、配達人数や日にちの見直しが必要


柏市の高齢者を対象とした買い物弱者支援事業の4事例から、地域住民の潜在的ニーズに応えた事業内容かどうかに加え、正しいマーケット分析が行えていたかによって、成功・失敗に差が生じていることがわかります。

 


【健康・医療|高齢者の外出促進】広島県呉市の事例

広島県呉市の取り組み内容は「健康づくりの推進による高齢者の外出促進」です。呉市は地域課題として、少子高齢化と公共交通機関利用者の減少に悩んでいました。特に高齢化率は全国でも突出しており、30%台半ばを超える高い水準です。

 

高齢者の外出が減っている背景には、次の2つが考えられます。

 

1.新型コロナウイルス感染症により、公共交通機関利用をためらう人の増加

2.運転自動車免許を自主返納する高齢者の増加

 

呉市ではスマートシティを実現するべく、高齢者の外出を促す事業を始め、さまざまな分野で新技術(IoT)を取り入れた試みを始めました。
 

下記の図が、呉市の目指すスマートシティ実現に向けた計画です。

呉市は高齢者の外出を促す事業として、2024年の実装を目標に、IoT技術活用をした「ファースト・ラストワンマイル移動」のサービス提供に取り組んでいます。ファースト・ラストワンマイル移動は、傾斜面生活圏の方の外出する機会を増やし、街の公共交通網の利用機会を提供するのがねらいです。

 

ファースト・ラストワンマイル移動を叶えるためには、小型モビリティの活用と生活支援MaaSの構築が必要です。この生活支援MaaSの構築から地域のお店や病院などとの連携が生まれ、割引クーポンや病院予約の連携が望めます。その結果、公共交通利用の維持と街の循環へとつながると考えられます。



スマートシティの海外事情が知りたい! 海外事例集

スマートシティ実現に向けた海外での取り組みでは、都市間で連携を取っているものも多数あり、中には国境を越えて連携している事例もあります。

 

海外事例で都市間連携が図られている取り組みが多い背景には、次の2つがあります。

 

● 都市単体での取り組みは閉鎖的であるため

● 都市間連携の実態把握から見えた先の横展開を視野に入れているため

 

こうした背景から、特に「都市間同士が相互に活用できるプラットフォームの構築」が目指されています。都市間連携には、以下のような効果が期待されます。

 

● 住民の合意を踏まえ、生活の質向上

● 新技術によるサービスの質向上

● 効率的な運用の可能性を見出し、横展開につなげる

 

ではこれから、海外のスマートシティ取り組み事例を2例紹介します。参考にすることで、スマートシティ実現に大事な要素やヒントが得られるかもしれません。

参考事例集:スマートシティの海外事例調査について

 


スマートシティ先進国のフィンランド

スマートシティ先進国であるフィンランドは、「One more hour a day」というビジョンを掲げ、スマートシティ実現に取り組んでいます。このビジョンは市民の生活の質向上を目指す内容ですが、真に目指すのは市民ファーストが大前提のサービス提供です。

 

フィンランドは持続可能なスマートエネルギーの技術革新を目指していますが、技術革新を図る際に地域住民の潜在ニーズの分析を優先しています。これは、スマートシティ実現に向けて、住民の要望に合わない技術提供は意味がないとの反省によるもので、住民の意見を第一に聞き、地域課題に見合った新技術の提供をしています。市民の意見を優先した技術提供の先のスマートシティ実現には、どのような事業準備が必要になるのでしょうか。

 

以下は、フィンランドの事例から分かったスマートシティ実現に必要となる要素です。

 

上記のように、さまざまな点がフィンランドの取り組みから示唆されます。各自治体でのスマートシティ実現につながるヒントが得られるのではないでしょうか。

 


アジアでスマートシティに積極的な中国

アジアで最もスマートシティに積極的な中国は、「City Brain」という取り組みを実施しています。「City Brain」はAIとビッグデータを活用し、交通に関するスマートシティを作り上げたのが主な特徴です。

新技術の活用から実現したスマートシティにより、得られた効果は以下のとおりです。


AI・ビッグデータの活用内容

⾞両異常を認めた場合には警察に⾃動通報される。

その後の効果

AI経由で警察に通報が入り、交通違反や事故情報は多い⽇で500件と減少した。


AI・ビッグデータの活用内容

交通状況に応じて、信号機の点滅を⾃動で切り替えた。

その後の効果

救急⾞の到着時間が半減。また、⼀部の地域では⾃動⾞の⾛⾏速度が15%上昇した。


AI・ビッグデータの活用内容

蓄積データを元に渋滞要因を分析し、新たに信号機や右折・左折レーンを設置した。

その後の効果

⼀部の区間では、通過時間が15%短縮した。


AI・ビッグデータの活用内容

4,000台超のライブカメラ設置により、杭州市内の43%をカバーした

その後の効果

市内の約半分のエリアにおいては、交通事故や交通違反、交通渋滞の発⽣時に、約20秒でアラート発信が可能になった。


こうした中国の取組みは、交通渋滞の緩和のみならず、多くの地域住民の幸福度向上にもつながっていることが分かります。中国の事例は、都市課題の正しい分析と新技術の的確な活用が成功の要因と考えられます。

 

やはり根幹にあるのは、地域住民が抱える潜在ニーズの正しい分析です。これにより、地域住民の幸せ向上につながるのではないでしょうか。

 



スマートシティを成功へ! 失敗しないためには?

スマートシティを成功へ導き、失敗しないための要素は次の3つです。

 

1.地域住民の生活の質が向上できる地域課題の分析

2.新技術をどのように活用していくのかを吟味

3.単一の取組ではなく、どこと何を連携するのかを協議

 

これら3つは、国内外の取り組み事例全てに共通しています。自治体でスマートシティ実現の施策に取り組む際には、ぜひこの3つの要素を踏まえましょう。



まとめ

本記事では、スマートシティ実現に向けた取り組み事例(国内5事例、海外2事例)を中心に、失敗しないためのスマートシティ事業づくりのヒントをご紹介しました。

 

スマートシティ実現に最も大切な要素は、国内外問わず「地域住民の課題に寄り添うこと」です。決して、新技術の活用が先にきて成り立つものではありません。

 

今回紹介した7つの事例を参考に、スマートシティ実現に向けての施策に取り組んでみてはいかがでしょうか。


▶監修・解説:北川哲也氏

補助金や許認可の手続きを専門とする行政書士事務所Link-Up代表 北川哲也氏。

2011年に29歳で開業し7年間個人事務所として中小企業向け行政書士サービスを展開。2018年春に株式会社Link-Upを立ち上げ、士業サービスでカバーしきれないコンサルティングや顧問サービスをスタート。公益社団法人茅ヶ崎青年会議所の2021年度理事長や認定NPO法人NPOサポートちがさき参画など活動多数。




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