ICT技術を活用した自治体の取り組み事例5選

「他自治体のICT導入事例を参考に、自地域の課題解決の取り組みに役立てたい」
「コストや人材不足など、ICT導入にあたっての懸念事項を確認したい」
「ICT活用の先進事例を知り、導入につなげたい」

 

本記事では上記のような考えを持つ地方自治体の方に向けて、以下の内容を解説します。

 

●  自治体にICT導入が必要な理由
●  ICT技術を活用した自治体の取り組み事例5選
●  自治体がICT導入を進める際のポイント

 

取り組み事例では愛媛県愛南町にインタビューした内容も載せています。地域の課題解決に向けて必要な取り組みのイメージ把握にお役立てください。


▶監修・解説:北川哲也氏
補助金や許認可の手続きを専門とする行政書士事務所Link-Up代表 北川哲也氏。
2011年に29歳で開業し7年間個人事務所として中小企業向け行政書士サービスを展開。
●監修者の詳細な経歴はこちら



なぜ今ICT技術が必要なのか?    

これまでも、さまざまな自治体がIT技術の進歩に合わせてICT活用をしてきましたが、財政難や少子高齢化による人材不足で、よりいっそうのICT技術活用が重要視されるようになりました。

 

以下のグラフでわかる通り、地方公共団体の総職員数推移は令和2年から微増しているものの、今もなお減少傾向にあります。

職員数が減少すると、これまでの公共サービスは維持しにくくなります。受けられる公共サービスが減れば、住民の満足度低下にもつながるでしょう。

 

そのため、ICT導入で働く職員の手間を減らすとともに、よりきめ細やかな住民へのサービス提供が求められています。ICTの導入は以下のような効果を得られると期待されているのです。


●  生産性や業務効率が向上する

●  多様な働き方が実現できる

●  住民へのサービス向上が図れる

●  自動化によりミスを減らせる

●  収集したデータを他部門で有効活用できる


ではこれから、ICT技術を活用した自治体の取り組みを紹介しますので、参考にしてみてください。
 



取り組み事例インタビュー|ICT技術を導入した自治体5選【テーマ別】  

ICT技術を導入した自治体の取り組み事例を以下5つのテーマ別に紹介します。

 

●  働き方改革

●  防災

●  教育

●  地域ビジネス

●  スマートシテ

 


群馬県川場村|低コストGIS活用による生産性向上【働き方改革】

「IT人材が足りない」「予算が足りない」との理由からICT活用に後ろ向きなことが多い小規模自治体。そんな中でも人口3,187名(2021年4月1日時点)の群馬県川場村では、低コストGIS(地理情報システム)を活用して業務効率化を実現させました。

 

地理情報システム(GIS:Geographic Information System)とは、地理的位置を手がかりに、位置に関する情報を持ったデータ(空間データ)を総合的に管理・加工し、視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術です。


群馬県川場村では、これまで数年に一度、業者へ航空地図や筆界等の作成を委託。撮影した写真やデータを用いて手作業で行政資料を作成していました。

 

しかしGISのひとつである「White Map」を使用することで、国勢調査や国土交通省のオープンデータと川場村の行政データを地図上にプロットして表示できるようになり、簡単に写真やデータを用いて行政資料の作成が可能となったのです。

 

White Mapは位置データと現場写真が保存できるため、現場での確認業務が大幅に削減できます。

2019年には台風19号による被害状況の情報集約にWhite Mapを使用し、地図上に被害位置と土砂災害警戒区域を表示しました。その結果対策本部との情報共有が速やかに行え、住民へ適切な避難指示や二次災害防止に役立てられました。

 

□取り組みの背景

群馬県川場村では、頻発する自然災害や鳥獣被害への対策により、業務が年々増加傾向にありました。加えて水道管や消火栓等の老朽化インフラの更新・管理業務も増大しており、限られた人員での課題対処が困難に。

 

そのため、RFJ株式会社と協働で業務効率の向上を目指し、White Mapを活用する取り組みを開始しました。

 

□取り組みの成果

White Mapの活用により、1つの資料作成に必要な枚数と時間が約70〜80%削減される結果に。平均資料枚数は3〜5枚から1枚、作成時間は約3時間から約1時間へと効率が上がりました。

 

このように低コストのGIS導入により、年間数百時間の余剰時間が創出され、新たな行政課題の解決や働き方改革実現に向けて取り組むことができています。

 

低コストGISの導入にかかった費用は以下の通りでした。


導入費
20万円

運用費
132万円/年間


システム利用料となる年間コストは132万円ですが、これは非常勤職員1名の年間人件費の約70%に相当します。

 

つまり低コストGISの導入は、非常勤職員を1名雇用するよりコストがかからないといえます実際に「令和3年4月1日時点の川場村一般行政職 級別職員数等の状況」より、資料作成時間がどれほど削減できたか試算してみましょう。

 

2級〜4級の職員計33名が月に1回の資料作成にあたるとします。これまでの作業時間は約3時間かかっていたため、年間にすると1,188時間です。
低コストGISを導入し、作業時間は1時間に短縮されたため、年間の作業時間は約396時間。

 

つまり低コストGISを導入することで、約792時間分の作業時間が削減されました。これは8時間勤務で99日間働いた時間に相当します。職員1人の99日間(4〜5か月分)の勤務時間を削減できたのは大きな成果ではないでしょうか。


岡山県倉敷市|防災ポータル「まちケア」の導入【防災】

岡山県倉敷市では、真備地区の浸水災害経験を活かし、水害時に役立つ「様式のそろったオープンデータマップ」を一般社団法人データクレイドルとともに作成しました。

 

真備地区で提供していた被災者支援情報ポータル「まびケア」は、地域を限定しないシステムへ機能拡充し、減災のための情報ポータル「まちケア」として全国で利用可能になりました。

 

非常時には被災地域から開設依頼を受け、被災地域名でポータルサイトを無料提供しています。サイトには医療機関の営業形態(仮設営業所など)や避難入院の受け入れ、ボランティア拠点からの配布物のお知らせ、無料送迎バスの運行情報など、さまざまな立場からの情報を集約し、提供します。

 

まちケアのポータル導入費は0円、運用費は年間12万円です。

参考:まちケア

 

□取り組みの背景

2018年7月の豪雨災害時に利用された「まびケア」では、以下2つの課題が挙がりました。

 

・避難所掲示板のデータ化において作業負荷が大きく、重複・ばらつき・データの表記ゆれが多く見受けられた

・指定避難所以外や地区外に避難した方に情報が届きにくかった

 

こうした課題を踏まえ、被災者への適切な情報提供、ボランティアの作業負荷軽減を目的に「まびケア」を改善し、防災ポータル「まちケア」が生まれました。

 

□取り組みの成果

一般社団法人データクレイドルは、2019年の台風15号・19号の被災地(3地域)や教育用に「まちケア」を提供しています。

 

避難所や医療機関など基本的な施設以外にも、被災者が必要とする情報を被災時に随時掲載しています。

 

【基本情報以外に掲載された例】

・千葉県館山市:充電スポットやWi-Fiスポット
・長野県長野市:利用可能な医療機関やホームセンター等
・宮城県丸森町:風呂/トイレ/災害ゴミ収集場所等

これまで「まちケア」に投稿された情報は1,866件にのぼり、うち被災地情報は1,065件、教育用情報は801件です。2020年7月の豪雨による災害でも、熊本県人吉市と大分県日田市が「まちケア」を利用しました。

 

また、一般社団法人データクレイドルは株式会社AUNと共同で「まちケア・コモンズ」をシステム構築し、実証実験を行っています。

 

災害時は避難行動要支援者や被災者生活支援に対し、民間サービスの提供を実施しています。平時では、健康増進に役立つ情報や商品・サービスを提供したい企業と住民をつなぐシステムです。

 

助け合いのビジネスモデル創出を目的とし、実証実験では以下の調査を行っています。


●  健康と安心安全な暮らしのための社会資源調査
●  地域住民のニーズ
●  地域企業・団体のシーズ



まちケア・コモンズは、地域企業・団体のキャンペーンや販促活動に期待できるほか、住民の防災力向上やセルフケア向上にもつながると期待されています。

 

倉敷市真備地区から生まれた防災ポータル「まびケア」は、今や民間企業を巻き込み、あらゆるサービスに派生しているのです。


福島県新地町 |ICT教育体制の構築【教育】

福島県新地町は2011年の東日本大震災で町の3分の1が被災し、教育活動がままならない状況でした。そんな中、2013年から本格的にICTを活用した教育に着手。常勤のICT支援員を各校に2名配置し、教員がICT支援員に活用方法を相談できる環境を整備しました。

 

2014年からは教育・クラウドプラットフォームを活用し、シームレスな学習環境を構築し、子どもたちの「21世紀を生き抜く力を育成する新たな学び」を実現させるため、3つの柱を掲げています。

 

3つの柱
個々の課題に応じた学び

具体例
子どもたちの学習状況を確認し、適切に指導


3つの柱
主体的・協働的な学び

具体例
学びの深まりを生む協働学習の実現


3つの柱
探究志向の学び

具体例
タブレット端末持ち帰りによる家庭学習の充実


ICT教育体制の構築にあたっては、専門家へ相談、校内研修の実施に加え、子どもの家庭学習を促進するための保護者説明会も実施しました。家庭学習では、家に持ち帰ったタブレット端末とWi-Fiを活用し、端末に入っているドリル学習ソフトで復習や先取り学習を行います。ICTを活用すると、教員が一人ひとりの習熟度を把握できるため、難易度の上げ下げなどの個々に合わせた学習指導が実現可能です。

 

なお、ICT教育の体制構築にかかった費用は以下のとおりでした。


導入費
委託事業であるため町の初期導入費はなし




運用費


2014年
2.234万円


2015年
1,585万円


2016年
1,641万円


□取り組みの背景

2011年の東日本大震災以前からICT活用に力を入れてきた新地町でしたが、本格的なICT活用の契機となったのは東日本大震災でした。新地町教育委員会の教育長は「東日本大震災で傷ついた町を教育の力で再生したい」との思いで、震災復興を目指し、以下2事業に応募しました。

 

●  文部科学省:先導的な教育体制構築事業

●  総務省:先導的教育システム実証事業

 

 

□取り組みの成果

2015年67名、2016年64名と減少傾向にあった新入学児童数ですが、2017年に77名と増加に転じました。

 

また、2014年と2016年の学力検査を比較したところ、小学校4年から中学校2年が全国と比べて平均3.83ポイント上昇が見られました。保護者アンケートでは、93%が「ICT活用は学力向上に効果的である」と回答。「学習意欲向上に効果的である」と答えた保護者は98%にものぼりました。

 

このようにICTを活用した教育は、学力検査などの数字で成果があらわれただけでなく、子どもたちの学習意欲の向上にもつながったといえそうです。

 

これまで受け身だった子どもたちが自分の意見を伝え、教員を頼らずとも自ら課題解決しようとする姿勢が芽生え、教員も子どもたちの主体性や表現力が伸びていると実感しているとの声が多く寄せられました。
 


【インタビュー】愛媛県愛南町 |ICT利活用による次世代型水産業の確立【地域ビジネス】

愛媛県の最南端に位置する人口1 万9000 人ほどの町、愛南町。水産業が盛んで、漁船漁業や海面養殖業など、多種多様な漁業が行われています。

 

近年の魚価低迷や燃料費・養殖餌代の高騰、後継者不足などにより、ほかの地域同様、愛南町の水産業も厳しい状況に追い込まれていました。問題を解決すべく、町はICT を駆使したネットワークシステムを開発。現在、多くの関係者が活用し、水産業の復興を果たしたといいます。愛南町水産課の吉原さんにお話を伺いました。

 

□町の水産業の復興を目指し、ネットワークシステムの開発へ

⸺水産業の現場にICT を導入することになったきっかけを教えてください。

吉原: 愛南町の水産業は、1982(昭和57)年に約400億円あった生産額が、2009(平成21)年には260億円まで落ち込み、町の就労機会が減ったことで、人口流出につながったといいます。

 

そんな折に総務省の交付金の存在を知り、町内で経営不振に陥っていた水産業者の支援ができるのではないかと考え、ICT 導入に着手しました。

 

情報を共有し積極的にコミュニケーションをとることによる、生産性の向上や魚のへい死の削減を目的として構築されたのが、「愛南町次世代型水産業振興ネットワークシステム」です。「水域情報可視化システム」「魚健康電子カルテシステム」「水産業普及ネットワークシステム ピアザ愛南ぎょしょく」の3つから構成されています。

 

□環境データの一元化により情報共有を図り、業務を改善

⸺どのようにこれらのシステムを構築していったのでしょうか?

吉原: 当時、愛南町の水産業が抱えていた主な問題は、1. 養殖業に発生する魚病 2. 有害プランクトンの異常増殖による赤潮被害 でした。赤潮被害の解決のため構築されたのが、「水域情報可視化システム」です。

 

このサイトには、愛南町の水域・水質情報が掲載されています。具体的には、水温や溶存酸素量をはじめ、愛南町で発生した赤潮の情報を確認することができます。

 

システムができるまでは、赤潮の調査を愛南町が行い、調査結果を養殖業者の事務所にFAXで送っていました。赤潮が発生した際の一番の対処法は、「魚に餌をあげるのをやめ、興奮させないようにすること」なのですが、養殖業に就く人たちは常に現場にいるため、調査報告のFAX に気づかずに餌をあげてしまい、魚が死んでしまうということがありました。

 

システム導入後は、リアルタイムで情報が共有できるようになったため、赤潮被害の軽減につながりました。また、水温や溶存酸素などの情報も、今までは漁場や役場、大学など、それぞれが調査を行い、データを個別に管理していたため、データ活用がしづらいという問題点がありました。

 

現在は、それぞれが調査したデータを水域情報システムにひとまとめにすることで、漁業者が簡単に環境情報にアクセスできるようになり、データ管理や解析も容易になりました。

 

インタビューの続きは、こちらから無料でダウンロード可能です。

愛南町以外の成功事例についても掲載しております。

 


【インタビュー】兵庫県加古川市|見守りカメラによる市民の安全確保【スマートシティ】

スマートシティの代表的な事例として、全国の自治体・企業から注目を集める兵庫県加古川市。“見守りカメラ”や “ビーコンタグ(BLEタグ)”などのICT(情報通信技術)を活用することで、地域の課題解決に取り組んできました。スマートシティ推進担当課の多田さんに、これまでの経緯を伺いました。

 

今回のインタビューでは、兵庫県加古川市役所政策企画課・スマートシティ推進担当課長の多田功(いさお)氏に、加古川市が取り組んでいる「見守りサービス」についてお伺いをさせていただきました。

 

スマートシティ事業として注目されるようになった経緯や現在の取り組み内容、そして事業を成功に導くための考えを紹介します。

 

□子育て世代が住みたいまちづくりと高齢者・子供の安全確保を第一に取り組み経緯や始めたきっかけとは?

多田: 加古川市が取り組む課題は大きく2つ。「刑法犯認知件数を減らすこと」と、「高齢者・子供の安全の確保」です。人口26万人弱の加古川市ですが、ベッドタウンでありながら、兵庫県下において刑法犯認知件数が平均を上回る自治体でした。また、平成28(2016)年頃には、2日に1回の頻度で認知機能の低下のおそれのある高齢者の行方不明事案が発生していました。

 

このような背景から、市民の皆様が安心して暮らせる安全なまちづくりのために、平成29年度に900台、平成30年度には575台の見守りカメラを設置しました。見守りカメラには「ビーコンタグ(BLEタグ)検知器」を内蔵し、子供や認知機能低下のおそれのある高齢者の位置情報履歴を知らせるサービスを展開しています。

 

――カメラ設置の際の苦労はありましたか?

多田: カメラを設置すること=プライバシーの問題に関わります。自宅の前にカメラが設置されたら抵抗があるのは当然のことだと思います。市民の方々には監視カメラ(セキュリティカメラ)ではなく、“見守り”カメラ(セーフティカメラ)であることを理解していただく必要がありました。見守りカメラの設置場所は、ホームページで閲覧できるほか、看板で明示しています。

 

設置前の段階においては、市長自ら12会場に出向き、市民に向けてカメラの機能や肖像権・プライバシーへの配慮について説明し、意見交換を行いました。実際に設置する際も、カメラ近辺に住宅がある場合は許可をとり、具体的に住宅のどの範囲までカメラに映るのかを説明することもありました。

 

また、当時、国内にはカメラ設置に関する法律がなかったため、加古川市は『加古川市見守りカメラの設置及び運用に関する条例(平成29年条例第28号)』で、どのような場合に記録されたデータを使えるのか、何日保管されるのかといった事項を定めました。市議会で条例を制定するということは、市民の総意と同義です。このように、丁寧に市民の合意をとり、カメラを設置してきた経緯があります。

 

□施策評価の判断基準は「市民の為になったかどうか」

――官民連携の具体的な取り組みについて教えてください。

多田: 現在2社導入している「ビーコンタグ(通称:見守りタグ)」は民間のサービスです。インフラ構築を官が、運営を民が担当している形です。民間2社と連携している理由としては、公平性の担保と価格競争を促すため。民の競争を促し、新たなサービスをつくれないか模索するのも、我々の役割だと考えています。

 

それぞれの得意不得意分野と利用者の特性を考慮しつつ、選択肢を幅広く持つことが市民の為になります。今年度もデジタル田園都市国家構想推進交付金を使って、サービス提供事業者を1社増やす予定です。

 

――見守りカメラと見守りタグ設置の成果は、具体的にどれほどありましたか?

多田: 刑法犯認知件数について、見守りカメラ設置前の平成29(2017)年12月時点では、2,926件あったのに対し、令和3年(2021)年12月には1,433件まで減少しています。設置前と比べて、半減させることができました。犯罪抑止に絶大な効果があったと言えます。

 

認知機能の低下のおそれのある高齢者の行方不明事案については、令和3年度の利用者アンケートでの回収数143件のうち行方不明になった方が56名、見守りタグを活用して発見された方が29名。見守りタグを活用した発見数が多くなっています。

 

成果の指針として、「費用対効果」をよく聞かれるのですが、これは測りようがありません。仮にご家族が行方不明になり、見守りタグを活用して発見された場合、単純に費用対効果を測定できるのかと問いたい。安全・安心の提供という視点で語られるべきで、マネタイズ等の問題ではありません。認知症のご家族を持つ市民の負担を少しでも減らし、犯罪を一件でも減らしたい。私たちはそういう思いで取り組んでいます。

 

インタビューの続きは、こちらから無料でダウンロード可能です。

加古川市以外の成功事例についても掲載しております。


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自治体にICT導入を進めるポイントとは?    

自治体にICT導入を進めたいと思っている方は、ICT導入で期待される効果を考えるよりもまず先に、「目の前の課題を明確化し、組織全体で課題を共有すること」が重要です。

 

実際に愛媛県愛南町では、『次世代型水産業振興ネットワークシステム』というデジタルを軸とした対策を構築する前に、「町の水産業が抱えている具体的な課題は何なのか、また役場として何を対策すべきなのか」を明確にしていました。

 


当時の課題

●  養殖業に発生する漁病

●  有害プランクトンの異常増殖による赤潮の被害

【課題の人的要因】

「情報の伝達ミス」や「関係者間のコミュニケーション不足」によって被害が増大


対策すべき内容

1.情報の伝達スピードの向上
2.関係者間による情報共有の場の構築(ネットワークの構築)
3.情報を集約し共有できるシステムの構築



ICT導入を進める上では、当然ながら導入コストや運用コスト、費用対効果を測定する必要がありますが、このように導入前の段階でどれだけ課題を明確にできるかがポイントといえるでしょう。

 

準備段階を入念に取り組むことで、結果として効率化を高め、トータルコストの削減にもつながります。加えて、愛南町が事業を成功させた秘訣である『平時における産学官連携』も参考になります。

 

時代の変化に伴い、行政だけで課題を解決に導くのは難しいといえますので、町全体で課題に向けた取り組みができるかが鍵となります。そのため、具体的な施策を実施する前から、平時で産学官が連携し、課題認識の共有と情報交換できるような環境を構築しておく必要があります。



まとめ    

ICT導入は初期投資に加え、人員確保といった手間がかかります。導入時は低コストでも運用費が高くなる場合があるため、長期を見据えた導入を検討しましょう。

 

ICT技術活用は業務効率化だけでなく、新たな発想が芽生え、地域活性化につながる可能性があります。未来の地域発展のためにICT導入を検討してみてはいかがでしょうか。



▶監修・解説:北川哲也氏

補助金や許認可の手続きを専門とする行政書士事務所Link-Up代表 北川哲也氏。

2011年に29歳で開業し7年間個人事務所として中小企業向け行政書士サービスを展開。2018年春に株式会社Link-Upを立ち上げ、士業サービスでカバーしきれないコンサルティングや顧問サービスをスタート。公益社団法人茅ヶ崎青年会議所の2021年度理事長や認定NPO法人NPOサポートちがさき参画など活動多数。




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