地域ケア会議とは?目的やメンバー、参加者の役割、事例を紹介

高齢化がますます進んでいる近年、介護を必要としながらも住み慣れた地域で「自分らしく」暮らしたいというニーズが高まっています。

 

そういった高齢者のニーズを実現するために、医療や介護、住まい、生活支援を一体的に提供する、地域包括ケアシステムの構築が進められています。また、地域包括ケアシステムを推進する上で「地域ケア会議」はとても重要です。

 

この記事では、地域ケア会議の概要や目的、会議が持つ機能、会議の進め方、参考事例などを紹介します。

 


▶監修・解説:北川哲也氏
補助金や許認可の手続きを専門とする行政書士事務所Link-Up代表 北川哲也氏。
2011年に29歳で開業し7年間個人事務所として中小企業向け行政書士サービスを展開。
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地域ケア会議とは?

地域ケア会議とは、高齢者や障害者など「何らかの支援を必要とする」人々が、住み慣れた地域で安心して生活を続けられるように、関係する機関や専門家が連携して個別課題や地域課題を話し合う会議です。

 

地域ケア会議の主催者は、地域包括支援センターまたは市町村と決められています。

 


地域ケア会議の必要性

日本では高齢化が進んでおり、認知症や一人暮らしの高齢者が増加しています。

 

そのため、高齢者が住み慣れた地域で生活を続けていける体制を整備するためにも、以下の課題に対して専門家が連携して取り組む必要が出てきました。

 

●     高齢者個別の課題を分析して在宅生活の支援を充実させる

●     高齢者の自立支援のために地域課題やニーズを吸い上げる

 

また、地域ケア会議は「地域包括ケアシステム」を実現するための重要な役割を担っており、多職種協働による地域包括支援ネットワーク構築の1つの手法として位置付けられています。
 



地域ケア会議の目的

以下は、地域ケア会議の目的について記載したものですが、これは厚生労働省の「地域包括支援センターの設置運営について」で明示されています。

 

①個別ケースの支援内容の検討を通じた、

●     地域の介護支援専門員の、法の理念に基づいた高齢者の自立支援に資するケアマネジメントの支援

●     高齢者の実態把握や課題解決のための地域包括支援ネットワークの構築

●     個別ケースの課題分析等を行うことによる地域課題の把握

 

②地域づくり、資源開発並びに政策形成など、地域の実情に応じて必要と認められる事項

引用元:厚生労働省 地域包括支援センターの設置運営について


個別ケースの検討

地域ケア会議は、個別ケースにおける課題について話し合いながら、支援する内容を決めることが主な目的です。また、個別ケースの検討による介護支援専門員(以下ケアマネジャー)の実践力向上も目的としています。

 

個別ケースでは、以下のことが話し合われます。

 

●     必要な支援ができていない

●     権利の擁護が必要である

●     支援内容が自立を阻害している など

 

さらに、個別ケースの検討を通じた、地域包括支援ネットワークの構築、地域課題の把握といったことも地域ケア会議の目的となります。

 


地域課題の検討

地域ケア会議の目的は、個別ケースの検討だけではありません。

 

個別ケースから得られた地域課題、支援に対する成功要因、ニーズ調査で把握できた地域課題などをもとにして、以下の取り組みも実施されます。

 

●     その地域に不足している社会資源の開発

●     課題解決のために必要となる人材の育成

●     新たな仕組みづくりに向けた政策形成

 

地域の実情に応じた課題について検討して解決していくことも、地域ケア会議の重要な目的です。

 



地域ケア会議5つの機能

地域ケア会議は、主に以下の5つの機能を有しています。

 

●     個別課題解決機能

●     ネットワーク構築機能

●     地域課題発見機能

●     地域づくり・資源開発機能

●     政策形成機能

 

これらの機能は、相互に関係し合いながら循環しています。また、各機能が相互に補完できるように、地域の実情に合わせてその他の会議を組み合わせる必要もあります。

参考:厚生労働省「地域包括支援センターの設置運営について」

参考:厚生労働省「地域ケア会議の概要」

 


個別課題解決機能

個別ケースについて、多機関・多職種による多角的な視点から課題解決をする機能です。また、個別ケースの検討を通じてケアマネジャーの実践力向上を図り、ケアマネジメントなどの支援の質を高めることも含まれます。

 

個別の事例検討では、支援に困難を感じているケース、自立に向けた支援が難しいケースだけでなく、その地域を通じての課題だと考えられるケースが取り上げられます。

 

そして、個別ケースについて検討をすることで、次から紹介していくネットワーク構築機能などに繋がっていきます。


ネットワーク構築機能

地域の関係機関、専門家による相互ネットワークを構築して連携強化をする機能です。

 

個別ケースの検討を重ねることで、個別課題や地域課題を解決するために必要な役割が明確になり、より具体的な連携ができるようになります。それと同時に、不足している社会資源なども明確になり、地域の課題発見などに繋げていくことが可能です。

 

関係機関や専門家の連携が強化されることで、先ほど紹介した個別課題解決機能も高まっていきます。
 


地域課題発見機能

個別で検討したケースと同様のニーズを抱えた人やその予備群を見つけ出しながら、解決すべき地域課題を発見する機能です。

 

たとえば、認知症高齢者の独居、障害者の虐待など、新たに発見された課題に対して検討していくプロセスで、関係機関や専門家それぞれの役割が明確になっていきます。

 

また、必要となる公的サービスや、インフォーマルサービス(家族や友人、地域住民、ボランティア団体、NPO法人などによる支援)を検討することにより、地域ケア資源の開発や政策形成へと繋がっていきます。


地域づくり・資源開発機能

ボランティア団体、NPO法人、地域の高齢者見守りネットワークなど、地域ケアに必要な資源を地域で開発していく機能です。地域ケアに必要な資源には、家族や地域住民も含まれます。

 

地域の実態や特性によって地域課題は異なるため、地域ケア会議ではその点を踏まえながら、各機関や専門家の役割や得意分野を活かして地域づくりを推進していきます。

 

地域づくりや地域ケアの資源開発をしていくことで、個別ケースへの支援のネットワークが密になり、個別課題の解決機能はより高まります。


政策形成機能

地域に必要な施策・政策の立案、事業の立案などに繋げていく機能のことです。ここには、都道府県や国への政策提言も含まれます。

 

地域ケア会議を通じて発見された新たな地域課題の解決に向けて、必要となる政策を立案したり、地域づくりや資源開発に必要な施策などを立案したりしていきます。

 

政策や事業は一度実施すれば終わりではなく、評価をした上でさらなる課題の発見をしたり、関係機関や専門家の役割を見直したりしていきます。


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地域ケア会議と個別ケア会議の違い

地域ケア会議は、役割によって以下の2つの会議に分かれます。自治体によって会議の名称は異なることもありますが、会議の役割自体は変わりません。

 

●     地域ケア個別会議:個別ケースについて検討

●     地域ケア推進会議:地域課題について検討

 

地域ケア会議の中に、個別ケア会議が含まれているというイメージです。

 

また、地域ケア個別会議と地域ケア推進会議という2つの会議を連動させることが、価値ある地域ケア会議にするポイントです。

 

地域包括支援センターは目的に応じて「地域ケア個別会議」を活用し、個別課題を検討しながら地域共通の課題や自立を促進させる要因などを把握していきます。

 

そして、地域課題への対応を検討するために「地域ケア推進会議」を開き、施策や政策の立案、事業の立案へと繋げていきます。

 

市町村で対応が必要な課題については、市町村レベルでの地域ケア会議開催が望ましいです。

参考:一般財団法人長寿社会開発センター「政策形成につなげる地域ケア会議の効果的な活用の手引き」




地域ケア会議とサービス担当者会議の違い

地域ケア会議とサービス担当者会議の違いについて、まずは以下の表をご覧ください。

 

地域ケア会議


主催者:市町村または地域包括支援センター    
目 的

・ケアマネジメントの支援
・地域包括支援ネットワークの構築
・地域課題の把握と解決など 
参加者

・行政職員
・センター職員
・医療従事者(医師・看護師・理学療法士など)
・ケアマネジャー
・介護事業者
・民生委員
・本人および家族など
 

サービス担当者会議


主催者:ケアマネジャー(介護支援専門員)    
目 的

・利用者や家族の課題についての共通理解
・地域の公的サービスなどの情報共有
・支援の方針や支援計画などの協議
・サービス事業者の役割の相互理解など 
参加者

・各サービスの担当者
・医療機関の担当者(主治医・看護師・理学療法士など)
・利用者やその家族など
 

個別ケースを検討する地域ケア会議は、包括的支援事業の一環として開催されます。一方、サービス担当者会議は、ケアマネジメントの一環として開催されます。

 

地域ケア会議への参加を通じてケアマネジャーのケアマネジメント実践力が向上することで、サービス担当者会議がより充実するでしょう。

 

参考:一般財団法人長寿社会開発センター「地域ケア会議運営マニュアル」

 



地域ケア会議の流れと進め方

ここからは、地域ケア会議を開催するにあたっての流れや会議の進行について解説します。

 

地域ケア会議の運営は、主に以下の流れで進めます。

 

●     会議の日程と頻度を決める

●     参加者を選定する

●     参加者の役割を決める

●     会議に必要な資料を準備する

●     会議の流れを決めておく

 

地域ケア会議の運営では、会議当日だけでなく会議終了後の振り返りも重要です。

参考:厚生労働省「地域ケア会議の運営について」

参考:一般財団法人長寿社会開発センター「地域ケア会議運営マニュアル」
 


会議の日程と頻度を決める

会議の開催日程については、とくに決まりはありません。それぞれの地域での判断によります。定期的に開催している地域もあれば、課題解決の必要時のみに開催する地域もあるようです。

 

定期で開催する場合は、開催週・開催曜日・開催時間まで決めておくと、参加者にも周知徹底しやすくなります。

 

一方、不定期に開催する場合は、参加者の日程調整に苦慮することもあり、日程に余裕をもって周知することが求められます。

 

意義ある会議にするためにも、参加者の負担にならないような頻度で開催するようにし、多くの人が参加できるよう開催日や時間帯にも配慮しましょう。

 


参加者を選定する

地域ケア会議は、主催者(地域包括支援センターまたは市町村)が参加者を選び、それぞれに参加を依頼します。

 

会議の目的に応じて、以下のメンバーの中から参加者を決定します。

 

●     行政職員

●     センター職員

●     医療従事者(医師・看護師・理学療法士など)

●     ケアマネジャー

●     介護事業者

●     民生委員

●     本人および家族 など

 

個別ケースを検討するときは、本人や家族が参加したほうが良い場合もありますし、参加しないほうが良い場合もあります。担当者とも連携しながら慎重に判断しましょう。

 

参加者を決定して依頼をするのと同時に、人数に応じた適切な広さの会場を確保してください。

 


参加者の役割を決める

会議に参加する人が決まり次第、会議での役割も決めておきます。最低でも、以下の役割は事前に決めておきましょう。

 

●     司会進行

●     記録係

●     事例提供

 

司会進行は会議の主催者(地域包括支援センターあるいは市町村の職員)が担当します。

 

司会者の役割の1つとして、参加者同士の意見交換を活発にすることがあります。たとえば、個別ケースに直接関係しない第三者が参加する場合は、会議から置き去りにならないよう客観的な視点での意見を求めると良いでしょう。

 

個別ケースを検討するときは、あらかじめケアマネジャーに事例提供を依頼する必要もあります。

 


会議に必要な資料を準備する

地域ケア会議の検討内容によって、準備する書類は異なります。たとえば、準備する書類としては以下のものがあります。

 

●     アセスメントシート

●     家族図

●     エコマップ

●     時系列整理

●     生活機能評価

●     課題整理

 

この他にも、会議で必要だと思われる書類については、随時準備しておきましょう。

 

個別ケースを検討する場合は、事例提供者に負担をかけない配慮が必要です。専門家同士の会議であれば、アセスメントシートをそのまま使用することも検討してください。

 

また、家族や地域住民など専門知識を持っていない人たちが参加する場合は、誰でも理解できるようなわかりやすい資料を準備しましょう。

 


会議の流れを決めておく

当日スムーズに会議が進むよう、あらかじめ流れを決めておくことも大切です。主な流れとしては、以下になります。

 

1.参加者に自己紹介をしてもらう

2.会議の目的を確認する

3.全体の流れを説明する

4.個人情報保護の確認を行う

5.配布資料を確認する

6.事例提供者にケース概要を報告してもらう

7.ケース概要を共有する

8.ケース当事者の課題を明確にする

9.長期・短期目標を決定する

10.優先順位を決定する

11.優先順位の高いものから、支援や対応および支援者や対応者を検討する

12.会議をコントロールする

13.モニタリング方法を決定する

14.決定事項を確認する

15.必要に応じて個人情報保護の確認を行う

16.会議を終了する

 

会議を進行するにあたり重要なことは、会議の目的を明確にし、意見交換を活発にさせることです。

 

また、他職種が参加するメリットを最大限活かすため、より深く個別ケースの評価をすることや、様々なケアサービスを組み合わせることなどを意識してください。

 

適切なタイミングで情報整理をしながら参加者が共有しやすくすることも、会議の進行役としての重要な仕事です。
 



地域ケア会議の事例紹介

各自治体による地域ケア会議の事例を紹介します。地域包括ケアに取り組む際、これらの事例もあわせて参考にしてください。
 


東京都国分寺市

国分寺市はもともと農家が多く、一戸建ての割合も高い住宅地域です。しかし、坂道が多く、高齢者が外出しにくい環境も多くあります。

 

国分寺市では、市町村レベルで開かれる「地域ケア会議」を親会議として、日常生活圏域レベルで開催される「小地域ケア会議」と、個別レベルで開催される「個別支援会議」で構成されています。

 

また、市主催の地域ケア会議では、小地域ケア会議や個別支援会議で取り上げた事例報告をしながら、住民のニーズ、認知症に関する地域の理解、専門医不足などの課題、各機関の取り組みなどが共有されています。

 

その結果、市の方針が地域包括支援センターや各機関の取り組みに、しっかりと反映されています。

参考:厚生労働省「地域ケア会議実践事例集」
 


兵庫県朝来市

朝来市は高齢化率が高く、後期高齢者数も増加している地域です。そのため、転倒や閉じこもりなど、高齢者に多いリスクに対する危機意識も高くなっています。

 

また、警察や医師会などが地域包括ケア推進に協力的である点も大きな特徴です。

 

朝来市の地域ケア会議は、以下の会議で構成されています。

 

【個別レベルで開催】

●     向こう三軒両隣会議

 

【日常生活圏と市町村レベルを統一して開催】

●     ケアマネジメント支援会議

●     在宅医療連携会議

●     脳耕会

●     地域包括ケアシステム推進会議

●     介護保険事業計画策定委員会

 

個別ケースの検討を積み重ねたり、関係機関の報告をまとめたりしたところ、医療と介護の連携に課題が見つかりました。

 

その後、1年半にわたり地域ケア会議でグループワークを繰り返した結果、医療・介護の連携に関するマニュアルが作成されています。

 

参考:厚生労働省「地域ケア会議実践事例集」
 


青森県青森市

青森市は高齢者夫婦世帯が多いだけでなく、降雪量が多いという地域性もあり、日常生活に様々な制約が生じやすい地域です。

 

かつての地域ケア会議は、地域包括支援センターごとに開かれており、個別ケースの検討を主目的に運営されていました。その後、地域ケア会議の位置付けが見直され、個別ケースだけでなく地域課題についても検討されています。

 

市内の金融機関から「来店する認知症高齢者を、どうやって地域包括支援センターへ繋ぐかがわからない」という課題が提起され、地域ケア会議で意見交換をした結果、金融機関への周知を図るためのチラシ作成や配布が実施されました。

 

この取り組みにより、金融機関と地域包括支援センターのネットワークが構築できています。

 

参考:厚生労働省「地域ケア会議実践事例集」
 



地域ケア会議を運営するときの注意点


地域ケア会議の運営にあたっては、以下の点に注意する必要があります。

 

●     地域の特性を理解しておく

●     個人情報の取り扱いに気をつける

 

より良い会議にするためにも、これらには十分に配慮して会議を開催しましょう。  
 


地域の特性を理解しておく

地域ケア会議を開くにあたり「地域の特性」を理解しておくことは、課題解決に向けてとても重要なポイントです。

 

たとえば、高齢者の割合はどれくらいか、独居高齢者数はどれくらいか、ボランティア団体やNPO法人はあるか、地理的・気候的リスクはあるか、地域コミュニティは協力的かなど、それぞれの地域ごとに特性があります。

 

この地域特性をしっかり理解しておけば、潜在的な課題を見つけたり、地域住民に受け入れられる解決策を発見できたりします。

 

画一的な会議になってしまわないよう、各専門家が地域特性を理解しておくことが望ましいです。

 


個人情報の取り扱いに気をつける

個別ケースを取り扱う地域ケア会議では、個人情報の取り扱いには十分注意してください。個人情報の取り扱いについては、参加者全員へ周知徹底することが重要です。

 

個人情報が記載してある書類については、会議終了後にすべて回収します。

 

また、必要以上に本人や家族の情報を出さないことも大切です。本人あるいは家族が参加する場合は、あらかじめ情報の取り扱いについて話し合っておくと良いでしょう。

 




まとめ:地域ケア会議の成功には担当者の前向きな参加が必要

地域ケアをより充実させるためや、ケアに関連する地域課題を解決するために、地域ケア会議はとても重要な役割を担っています。もちろん、サービス担当者会議など他の会議との役割分担やスムーズな連携も大切なことです。

 

また、地域ケア会議の主催者は、しっかりと事前準備をしておき、会議当日は参加者の意見交換が活発になるような進行が求められます。

 

個別ケースの課題解決はもちろんですが、地域の潜在的な課題の発見や、地域課題の解決に向けた政策を立案するためには、より多くの専門家が積極的に会議へ参加することが重要となるでしょう。

 


▶監修・解説:北川哲也氏

補助金や許認可の手続きを専門とする行政書士事務所Link-Up代表 北川哲也氏。

2011年に29歳で開業し7年間個人事務所として中小企業向け行政書士サービスを展開。2018年春に株式会社Link-Upを立ち上げ、士業サービスでカバーしきれないコンサルティングや顧問サービスをスタート。公益社団法人茅ヶ崎青年会議所の2021年度理事長や認定NPO法人NPOサポートちがさき参画など活動多数。



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