都市公園管理の課題と効率化のポイント!取り組み事例も紹介  

慢性的な財政難、人材不足などによって、公園管理が満足にできない自治体が増加中です。

 

施設や遊具の老朽化は、安全面のリスクもあり、早急な対応が必要であるにもかかわらず、満足な対応がなされていない公園も存在します。

 

逆に、民間事業者の手を借りて、新たな取り組みを模索している自治体もあります。

 

この記事では、都市公園の管理を効率化するポイント、自治体の公園管理に関する取り組み事例を中心にお伝えします。


▶監修・解説:北川哲也氏
補助金や許認可の手続きを専門とする行政書士事務所Link-Up代表 北川哲也氏。
2011年に29歳で開業し7年間個人事務所として中小企業向け行政書士サービスを展開。
●監修者の詳細な経歴はこちら



都市公園とは

都市公園とは、都市公園法で定められた「国または地方自治体が設置した公園や緑地」のことを指します。遊び、運動、レクリエーション、防災などの目的で整備されるため、自然環境の保護を目的とした自然公園とは異なります。

 

また、地域の課題や公園の特性に応じて、多機能性のポテンシャルを発揮することが、これからの都市公園には求められています。

 


都市公園の種類

都市公園は、目的、用途、面積などによって、以下の種類に分類されています。


種類
住区基幹公園

種別・目的
● 街区公園
もっぱら街区に居住する者の利用に供することを目的とする公園

● 近隣公園
近隣に居住する者の利用に供することを目的とする公園

● 地区公園
徒歩圏内に居住する者の利用に供することを目的とする公園


種類
都市基幹公園

種別・目的
● 総合公園
都市住民全般の休息、観賞、散歩、遊戯、運動等総合的な利用に供することを目的とする公園

● 運動公園
都市住民全般の主として運動の用に供することを目的とする公園


種類
大規模公園

種別・目的
● 広域公園
市町村の区域を超える広域のレクリエ-ション需要を充足することを目的とする公園

● レクリエーション都市
大都市その他の都市圏域から発生する多様かつ選択性に富んだ広域レクリエ-ション需要を充足することを目的とした地域



種類・種別・目的
●国営公園
都府県の区域を超えるような広域的な利用に供することを目的として国が設置する大規模な公園


種類
緩衝緑地等

種別・目的
● 特殊公園
風致公園、動植物公園、歴史公園、墓園等特殊な公園

● 緩衝緑地
大気汚染、騒音、振動、悪臭等の公害防止、緩和若しくはコンビナ-ト地帯等の災害の防止を図ることを目的とする緑地

● 都市緑地
都市の自然的環境の保全並びに改善、都市の景観の向上を図るために設けられている緑地

● 緑道
災害時における避難路の確保、都市生活の安全性及び快適性の確保等を図ることを目的として、近隣住区又は近隣住区相互を連絡するように設けられる植樹帯及び歩行者路又は自転車路を主体とする緑地


配置条件や面積などの詳細は、国土交通省「都市公園の種類」をご参照ください
 


全国にある都市公園の数と面積

令和3年度末で、一人当たりの都市公園等面積は「約10.8㎡/人」となっており、諸外国の都市と比較すると低い水準です。


種類
住区基幹公園

種別
● 街区公園
【箇所数】90,943 【面積(ha)】14,524

● 近隣公園
【箇所数】5,865   【面積(ha)】10,849

● 地区公園
【箇所数】1,646   【面積(ha)】8,733


種類
都市基幹公園

種別
● 総合公園
【箇所数】1,402 【面積(ha)】26,666

● 運動公園
【箇所数】840    【面積(ha)】13,139


種類
大規模公園

種別
● 広域公園
【箇所数】223 【面積(ha)】15,291

● レクリエーション都市
【箇所数】6     【面積(ha)】569



種類・種別
●国営公園
【箇所数】17 【面積(ha)】4,306


種類
緩衝緑地等

種別・目的
● 特殊公園
【箇所数】1,393 【面積(ha)】13,976

● 緩衝緑地
【箇所数】244    【面積(ha)】1,890

● 都市緑地
【箇所数】9,369 【面積(ha)】16,746

● 緑道
【箇所数】1,009 【面積(ha)】927


防災や地域活性化といった側面からも、都市公園等の整備推進が急務となっています。

参考:国土交通省「都市公園等整備の現況等」
 



都市公園の管理に関する課題

現在、日本では人口の減少、地方の過疎化、高齢化率の増加といった社会課題が山積しており、都市公園の管理にも影響を及ぼしています。

 

都市公園を運営管理するにあたって、様々な課題が指摘されており、これらの課題をどう解決していくかも、今後の都市公園の管理には重要なポイントです。
 


予算・財政的な制約  

都市公園を管理する多くの自治体では、人口減少や高齢化、地域経済の縮小により、税収が悪化して財政難に陥っています。そのため、公園管理に十分な予算を割くことができない自治体も多いです。

 

限られた予算の中で、すべての公園を等しく管理するのは困難であり、公園を管理するための人件費も予算を圧迫しています。

 

効果的な予算配分、ボランティアの活用、デジタル技術を導入した効率的な管理など、財政面からも様々なアプローチが必要になります。
 


施設・遊具の老朽化  

予算不足による公園内の施設や遊具の老朽化も、都市公園管理の大きな課題のひとつです。

 

遊具の老朽化は安全面でのリスクが高いため、できる限り早急な対応が必要になります。また、老朽化した施設や遊具が多いほど、メンテナンスや維持費用も増加します。

 

老朽化した施設や遊具については「定期的な点検」を実施して、安全基準に満たないものは速やかに撤去するか、取り替えや建て替えが必要です。
 


公園管理の担い手不足

近年、人件費の抑制、低報酬といったことが要因で、公園管理を担う人材が減少しています。

 

また、公園管理には、緑地管理、イベントコーディネーション、コミュニティ関係、データ分析など、多くのスキルが要求されますが、新たな担い手が育っていないという現実もあります。

 

自治体だけで公園管理の人材不足を解消することは、かなり難しい状況になってきており、官民連携によって公園管理を協働する形が求められています。

 


多様なニーズ・多機能性への対応

様々な考え方が受け入れられる現代社会では、都市公園に対するニーズも多様化しています。

 

しかし、公園の利用ルールは、都市公園条例や規則などに基づいて自治体が設定したものであり、公園を利用する人たちのニーズに対応できているとは言い切れません。

 

公園は誰でも利用できるという認識のもと、多様なニーズへ対応できるルールの見直しや、公園ごとのローカルルール作りが必要です。

 

利用ルールの考え方や運営方法について、官民合同で学べる勉強会や研修などを充実させることも重要になるでしょう。

 


生物多様性の保全

地球規模で環境問題が深刻化しているなか、いかに生物多様性を保全していくかも、都市公園の大きな課題です。

 

多様な生物が生息できる生態系を守っていくには、土壌管理、水質管理、植栽などの技術開発が必要不可欠となります。

 

都市公園をグリーンインフラとして保全・活用していくためには、戦略的に公園の緑を整備・保全して育成する必要があります。

 


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都市公園の管理を効率化するポイント

都市公園の管理・運営を効率化するためには、以下のポイントを理解しておきましょう。

 

●     戦略的に整備・保全をする

●     利用ルールに柔軟性を持たせる

●     指定管理者制度・Park-PFIの活用

●     自主的・自立的な活動を促進

●     データとデジタル技術の活用

 

これらのポイントは、新時代における都市公園の管理・運営の基本的な考え方にもなります。

 


戦略的に整備・保全をする

都市公園のポテンシャルを最大限発揮できるよう、中長期的な視点を持ち「戦略的」に公園を整備・保全することが重要になります。

 

緑の基本計画や広域緑地計画などに基づき、雨水貯留、生物生息空間の保全など、地域課題に応じた目標を立てて、各種の基礎データに基づきながら管理・運営していくことが大切です。

 

公園で利用するエネルギーについても、太陽光発電、バイオマスなど再生エネルギーを積極的に活用していきましょう。
 


利用ルールに柔軟性を持たせる

自治体が管理する公園すべての利用ルールを、単純に一括りで決めるのではなく、公園の特性などに応じて「柔軟性を持たせる」ことも重要です。

 

多様なニーズに対応するため、管理する公園に共通する画一的なルールがあれば、それを見直すことも必要になります。

 

地域住民や利用者の意見を聞きながら、公園ごとにローカルルールを作ることで、官民が協働した管理・運営にも繋げられるでしょう。

 

また、公園の利活用を促進して様々な意見を得るために、地域住民に向けてメッセージを発信し続けることも大切です。
 


指定管理者制度・Park-PFIの活用

都市公園の管理には、予算不足、人材不足といった問題があるため、以下の制度により民間の力を活用することも重要なポイントです。


◆指定管理者制度
地方公共団体が、公の施設の管理を行わせるために、株式会社をはじめとした営利企業・財団法人・NPO法人・市民グループなど法人その他の団体に包括的に代行させることができる制度


◆Park-PFI
公園に施設を設置して運営する民間事業者を公募により選定する制度


比較的大規模な公園については、公募により選定された指定管理者に委任するケースが増えてきているため、今後は「質の高い管理・運営」ができるような仕組みを自治体が作っていく必要があります。

 

民間事業者と自治体がしっかり対話をしながら、双方が「共創」の考え方をベースにして、一緒に公園を作り上げていくという認識で取り組むことが重要です。
 


自主的・自立的な活動を促進

都市公園の管理・運営を効率化するには、官民が連携するだけでなく、管理・運営の担い手となる民間事業者が利益を上げられるよう「自主的」かつ「自立的」な活動を促進することもポイントになります。

 

そのために、イベントの開催、広告物の設置などについて、柔軟に対応することが自治体には求められます。

 

収益事業を認めるときは、公園利用者の満足度向上、地域の価値向上に繋がるよう「中間的な評価」をしながら、適切な対応をしていくことが大切です。
 


データとデジタル技術の活用

公園管理にデータ活用やデジタル技術を導入することにより、業務効率化やサービス向上を図ることが可能です。

 

公園内の施設利用状況や自然環境についての情報をデジタル化することで、運営状況の評価、目標設定、取り組みの企画立案にも役立てることができます。

 

また、公園が持つ機能や効果、利用状況をデータとして把握できれば、自然環境の保全・公園の再生を、戦略的に展開していくことができます。

 

今後は、カメラ映像によるリアルタイムの人流、環境データを活用したサービス提供などによって、公園の利活用、管理・運営方法を変革していくことも重要になるでしょう。

 



都市公園管理の取り組み事例

都市公園の管理・運営において、積極的に効率化を図っている自治体もあります。ここからは、成果を出している自治体の取り組みについて、いくつか事例を紹介します。
 


東京都|DXの活用

東京都にある3つの都立公園グループ(狭山丘陵、武蔵野の公園、多摩部の公園)では、独自に開発した「パークモニタリングシステム」を活用して、公園管理のDX化を推進しています。

 

施設の不具合や故障危険箇所、樹木の枯れや害虫、希少な動植物の生息や生育、ゴミの放棄やいたずら、各種要望など、あらゆるデータを一元管理して、スマホでリアルタイム共有できるシステムです。

 

このシステムの導入により、リアルタイムな情報をデータベース化して分析できるため、より効率的で高品質な管理・運営を実現しています。

参考:国土交通省「都市公園の柔軟な管理運営のあり方に関する検討会提言」
 


北海道芦別市|利用状況を踏まえた公園の再整備

北海道芦別市|利用状況を踏まえた公園の再整備

北海道芦別市では、管理する56公園(うち都市公園は42箇所)のうち、約7割が整備後30年を経過しており、遊具や休憩施設などの老朽化が問題となっていました。

 

さらに、少子高齢化やライフスタイルの変化により、利用者のニーズと公園の機能との間に乖離が生じて、公園の利用率も低くなっていたため「都市公園整備計画」を策定しました。

 

地域住民の意見を取り入れながら、公園の特徴を5つに分類して、町内会ごとにバランスを考慮して公園を配置しています。また、施設や利用状況を踏まえた管理基準を設けて、施設の更新・維持、撤去の方針を公園毎に設定しています。

参考:国土交通省「都市公園の柔軟な管理運営のあり方に関する検討会提言」


大阪府吹田市|健康・医療をコンセプトにした整備・活用

大阪府吹田市では、健康への「気づき」「楽しみ」「学び」をコンセプトとした、健都レールサイド公園を整備しました。

 

国立循環器病研究センターおよび市立吹田市民病院の協力・監修のもとで、27基の健康遊具や4つのウォーキングコースを設置しています。

 

2020年4月からは、指定管理者が屋外運動教室、屋内運動教室、医療・介護講座、文化講座など、多彩なプログラムを実施中です。

参考:国土交通省「都市公園の柔軟な管理運営のあり方に関する検討会提言」

 


愛知県豊田市|Park-PFI事業と指定管理者の募集

愛知県豊田市にある「鞍ヶ池公園」では、民間のノウハウを活用するために、Park-PFIの事業者、公園全体の指定管理者など、複数の事業者を一括で公募しました。

 

●     キャンプフィールド:設計施工一括発注方式、事業者が管理許可を受け運営

●     カフェ、サービスセンター:Park-PFI(公募設置管理制度)

●     公園全体(動物園を除く):指定管理制度

 

選定された事業者は、Park-PFIにより設置したカフェの収益を活用したサービスセンターの整備、キャンプフィールドの整備、管理許可に基づくキャンプフィールドの運営、指定管理者としての公園施設の運営・管理、さらには乗馬体験やイベント企画など、公園の魅力向上に取り組んでいます。

参考:国土交通省「都市公園の柔軟な管理運営のあり方に関する検討会提言」

 


神奈川県横浜市|ボランティア団体の活動支援

神奈川県横浜市には「横浜市公園愛護会」という地域住民が中心となったボランティア団体が、公園の清掃や草刈りなどの美化活動をしています。

 

横浜市では、各区土木事務所と公園緑地事務所に「公園愛護会等コーディネーター」を1名ずつ配置して、公園愛護会の窓口として支援をしています。

参考:国土交通省「都市公園の柔軟な管理運営のあり方に関する検討会提言」

 


奈良県奈良市|IoT・AI技術の活用

奈良県奈良市にある「国営飛鳥・平城宮跡歴史公園」では、2019年度から3年間にわたり、公園サービスの向上を目指して、新技術を活用した社会実験が行われました。

 

●     自動運転

●     VR歴史体験

●     ドローン航行

●     AI画像解析 など

 

これらの技術を使って、利用者の利便性向上、維持管理の省力化といった課題解決に向けて取り組みました。

 

●     自動運転車両やVR歴史体験:利用者の満足度向上に繋がる

●     クラウド公園台帳システム、AI画像解析、360度カメラの活用:管理の省力化の検証

 

結果、このような成果が得られています。

参考:国土交通省「都市公園の柔軟な管理運営のあり方に関する検討会提言」

 


神奈川県茅ヶ崎市|公園管理者と担い手をアプリで繋ぐ

神奈川県茅ヶ崎市では、2021年度にスマホアプリ「PARKFUL Watch」を導入し、公園愛護会と市職員が様々な情報を共有しています。

 

取り組みの成果として、以下のことが挙げられています。

 

【公園管理者(市)】

●     現場対応業務の効率化

●     ごみ回収の漏れ防止

●     故障施設への対応迅速化

●     人件費削減 など

 

【公園管理者・愛護会】

●     アナログ作業の負担軽減

●     報告の効率化

●     コミュニケーションの増加 など

 

愛護会、市職員ともに負担軽減に繋がっており、新たなコミュニケーションの方法として活用が期待されています。

参考:国土交通省「都市公園の柔軟な管理運営のあり方に関する検討会提言」
 


大阪府公園協会|遊具施設管理システムの構築

大阪府公園協会では「未然に防げる遊具の事故を防止する」ことと「同じ事故を二度と繰り返さない」ことを目的に、遊具事故をゼロにする検討を重ねてきました。

 

紙媒体での遊具台帳では、検索に時間がかかるだけでなく、更新作業も大変であったため、遊具施設管理システムを構築して業務効率化を図っています。

 

定期点検の記録、修繕の記録なども、このシステムで作成・管理しています。

参考:大阪府公園協会「遊具であそぼう!」
 




まとめ|都市公園管理の今後の展望

現在、個人や社会の「幸福度向上」が注目されており、都市政策においては「人中心のまちづくり」への機運を注視する必要があります。

 

人中心のまちづくりにおいて、都市公園の利用や活用は、非常に有効な手段になるでしょう。住み良いまちづくりのためにも、都市公園の管理効率化は、自治体にとって重要な課題です。

 

公園を都市の資産として利活用するためには、いかに効率的に整備し、運営・管理していくかが重要なポイントとなります。

 

今後、地域の特性を活かした柔軟な運営・管理、自治体と民間事業者の「共創」による管理・運営といった取り組みが、全国の自治体に広まっていくことが期待されるでしょう。



▶監修・解説:北川哲也氏

補助金や許認可の手続きを専門とする行政書士事務所Link-Up代表 北川哲也氏。

2011年に29歳で開業し7年間個人事務所として中小企業向け行政書士サービスを展開。2018年春に株式会社Link-Upを立ち上げ、士業サービスでカバーしきれないコンサルティングや顧問サービスをスタート。公益社団法人茅ヶ崎青年会議所の2021年度理事長や認定NPO法人NPOサポートちがさき参画など活動多数。



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