地域防犯のDX化とは?自治体ができる対策や取り組み事例を紹介

安全安心で住みやすい街づくりのためには、地域ぐるみで防犯に取り組む必要があります。しかし、地域によっては少子高齢化による人手不足や予算不足などにより、十分な防犯対策を講じることができないケースもあります。

 

地域防犯にもAIなどの先端技術やデジタル技術を導入することで、実効性のある防犯対策が可能となります。さらに、防犯の人手不足を解消し、コスト削減も期待できます。

 

本記事では、防犯対策におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)、地域防犯、自治体における防犯DX導入事例などを中心に解説します。


▶監修・解説:北川哲也氏
補助金や許認可の手続きを専門とする行政書士事務所Link-Up代表 北川哲也氏。
2011年に29歳で開業し7年間個人事務所として中小企業向け行政書士サービスを展開。
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防犯DXとは?

防犯DXとは、防犯対策にAIやデジタル技術を導入し、これまでよりも効果的で効率的な防犯活動を実現する取り組みのことです。この取り組みでは、AI防犯カメラ、スマート街路灯、IoTセンサーなどの最新技術が活用されます。

 

例えば、AI防犯カメラは、人工知能を用いて特定のエリアに侵入した不審者の検知や異常行動の早期発見を可能にします。また、スマート街路灯の導入では、センサーや通信機器を搭載した街路灯によって、リアルタイムで街の情報を把握し、犯罪や事故の探知、迅速な対応が実現できます。

 

防犯DXの導入は、次世代スマートタウンづくりの推進や住みやすい街づくりにもつながります。また、デジタル技術を活用することで、自治体や企業、市民の安全意識も向上するでしょう。

このように、防犯DXはデジタル技術を活用して防犯活動の質を高め、地域全体の安全を確保するための重要な施策です
 


防犯対策にDX導入が求められる背景

防犯対策においてDXの導入が求められる背景には、いくつかの重要な要因があります。
 

人手不足の解消
 

少子高齢化による人手不足が深刻化している現代社会において、防犯対策においても効率化が必要不可欠。AIやデジタル技術を活用することで、監視業務やデータ分析を自動化し、人手不足を補うことができる。


コストの削減
 

従来の防犯対策では、多くの人員と設備投資が必要となるが、AIを活用した防犯カメラやIoTセンサーなどの技術により、運用コストの大幅な削減が可能。限られた予算内で、より効果的な防犯対策が実現しやすくなる。


テクノロジーの進化
 

最先端技術の進化によって、犯罪予防の効率化も促進されている。AI搭載の防犯カメラは、不審者の検知や異常行動の早期発見が可能。犯罪の未然防止や迅速な対応が実現し、治安の向上にも貢献できる。



防犯DXの導入は、地域全体の防犯力を高めるだけでなく、住民の暮らしの利便性や豊かさにもつながります。また、人手不足やコスト削減の解決策としてだけでなく、地域の安全と利便性を向上させる重要な取り組みとしても注目されています。

 

防犯DXを推進することで、誰もが安心して暮らせる、より良い社会の実現が期待できるでしょう。  
 


防犯まちづくりの推進とDX

防犯まちづくりは、文部科学省、国土交通省、警察庁などが推進している重要な取り組みです。また、これらの省庁は犯罪抑止のために、防犯まちづくりと地域社会の防犯力を強化するための政策や、プロジェクトを進めています。

 

例えば、警察庁は生活安全局を通じて防犯まちづくりに関する施策を展開し、文部科学省は学校と地域の連携による子どもの安全確保に注力しています。国土交通省は、住宅等の防犯性能の向上や防犯に配慮した公共施設等の整備および管理を推進するとともに、スマートシティの推進を通じて、防犯まちづくりのDXを積極的に支援しています。

 

一方で、自治体によって防犯まちづくりの推進には課題もあり、限られた予算や人員の中で、地域の実情に合わせた効果的な施策の立案、実行が求められています。また、住民や関係機関との連携を図り、地域ぐるみで取り組める体制を構築することも重要です。

 


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防犯対策の基本:4つの原則

犯罪が発生しにくい環境をつくるために、警察庁は基本的な原則を示しています。具体的には「対象物の強化」「接近の制御」「監視性の確保」「領域性の確保」の4つがあります。
出典:警察庁 「安全・安心まちづくり推進要綱」の改正について

 

これらは、直接的な手法と間接的な手法に分類されます。

 

●     直接的な手法:対象物の強化、接近の制御

●     間接的な手法:監視性の確保、領域性の確保

 

直接的な手法は犯罪機会を減らし、間接的な手法では犯罪者の心理的障壁を高めることで、効果的な防犯環境が実現されます。

 

これらの基本原則を総合的に実施しながら、行政機関、住民、事業者などが連携し、地域の特性に応じた防犯対策を講じることが重要です。また、基本原則に則りながら、防犯DXとどのように連携するのかを検討していくことも必要といえます。
 


対象物の強化

「対象物の強化」は、侵入者から対象物を物理的に守るための重要な手法で、強固な錠や防犯ガラスの設置、補助錠の取り付けなどが挙げられます。対象物の強化によって、侵入を未然に防ぐことができます。

 

まず、玄関ドアや窓には補助錠を取り付けることが効果的です。メイン錠と併用することで、侵入者は複数の錠を突破しなければならなくなるため、侵入の難易度が上がります。

 

また、窓ガラスには防犯フィルムを貼るのも有効です。ガラスが割られても飛散を防ぐことができ、建物内への侵入を遅らせる効果があります。

 

さらに、防犯性能の高い建物部品(CP部品)に交換することも推奨されています。CP部品とは、警察庁や関係省庁と民間団体が共同で認定した、一定の防犯性能基準を満たす建物部品のことです。強化ガラス、ピッキング対策された高性能錠、防犯シャッターなどが該当します。

 


接近の制御

「接近の制御」は、犯罪企図者が対象物に近づくのを防ぐための手法で、敷地や建物の境界を明確にすることが挙げられます。塀やフェンス、門扉などの設置によって、敷地内への不正侵入を物理的に阻止でき、犯罪企図者が対象物に近づくことが困難になり、犯行の機会を減らすことができます。

 

また、共用の出入口や駐車場においては、オートロックシステムや監視カメラの導入が有効です。オートロックシステムを使用することで、居住者や許可された人のみが建物内に出入りできるようになります。監視カメラは、不審者の侵入を抑止し、万が一の犯行の証拠を録画する役割も担います。

 

さらに、建物周辺には足場となり得る物を置かないようにすることも大切です。脚立やゴミ箱など、侵入の際に利用される可能性のある物を整理することで、建物への侵入を困難にします。
 


監視性の確保

「監視性の確保」は、街路や建物周辺の見通しを良くし、多くの人の目が届く環境を作ることで、犯罪を未然に防ぐ手法です。

 

この手法では、犯罪企図者に対して「ここは監視されている」と感じさせることで、犯罪を抑止する効果があるとされています。

 

具体的な方法としては、街路や建物周辺の照明を整備することが挙げられます。夜間の暗がりは犯罪者にとって好都合な環境ですが、適切な照明によって視認性を高めることで、犯罪リスクを抑えることができるでしょう。

 

また、センサーライトは、設置することで人の動きに反応して自動的に点灯し、通行人や住民の安心感を高めることができます。

 

加えて、防犯カメラの設置も監視性の確保に有効な手段です。カメラの存在自体が犯罪抑止力となり、犯罪企図者に心理的なプレッシャーを与えます。さらに、万が一犯罪が発生した場合でも、映像記録が重要な証拠となり、犯人特定や再発防止に役立ちます。

 

植栽の管理も見逃せない点です。繁茂した植木や樹木は視界を遮り、犯罪者の隠れ場所となる可能性があります。定期的な剪定により見通しを確保し、死角をなくすことが重要です。

 

また、建物の設計や改修時には、窓や玄関から外の様子が見えるように配置を工夫することで、監視性を高められます。
 


領域性の確保

「領域性の確保」とは、物理的および心理的障壁を設けることで、部外者が侵入しにくい環境を形成することを指します。具体的には、住宅やその周辺の維持管理を徹底することが挙げられます。

 

住宅の場合、フェンスや花壇で敷地を囲むことで、私有地と公共空間の境界を明確にし、侵入者に対して「ここは管理されている」という心理的なメッセージを発信します。このような物理的な障壁は、犯罪企図者の侵入意欲を削ぐ効果があります。

 

また、地域住民同士の交流を促進し、コミュニティの結束力を高めることも重要です。日常的なあいさつや声かけを励行することで、住民間の信頼関係が深まり、互いに見守り合う意識が醸成されます。これにより、地域全体が「わがまち意識」を持ち、見知らぬ人の侵入に対して警戒心を共有できます。

 

さらに、落書きやゴミの放置を防ぎ、常に清潔で整備された環境を維持することも、領域性の確保には役立ちます。手入れの行き届いた住宅地は、犯罪者にとって「注意深く管理されている」と認識されるからです。

 

住民が協力して美化活動に取り組み、地域の環境美化を推進することが、犯罪抑止につながります。
 



地域や自治体でできる防犯対策

地域や自治体が実施する防犯対策は、国土交通省が推進する「防犯まちづくり」の取り組みを支援する行政の計画や制度、事業に基づいて進められています。

 

また、国土交通省の方針に沿って、地域や自治体には条例の制定やガイドラインの策定が求められています。

 

以下は、地域や自治体でできる防犯対策の代表例です。

 

●     条例の制定やガイドラインの作成

●     設備やシステムの整備・管理

●     防犯マップ作成や防犯情報の発信

●     防犯活動の維持および強化

●     調査結果や研究成果の公表

 

地域や自治体での防犯対策は、国土交通省の「防犯まちづくり」の方針に基づき、行政と住民が協力して推進される重要な取り組みです。地域全体で統一的な防犯意識を醸成し、住民参加型の防犯活動を活性化することで、犯罪抑止力を強化できるでしょう。
 


条例の制定やガイドラインの作成

地域や自治体で防犯対策を強化するためには、条例の制定やガイドラインの作成が重要です。国土交通省は、安全なまちづくりを推進するために、地域ごとの特性に応じた防犯条例やガイドラインの必要性を示しています。

 

防犯条例の制定は、地域住民と自治体が一体となって防犯活動を推進するための基盤となります。条例には、防犯カメラの設置基準や管理方法、街路灯の設置義務、地域パトロールの実施要領など、具体的な防犯対策を盛り込みます。

 

また、ガイドラインの作成も重要な役割を果たします。ガイドラインには、防犯対策の具体的な手法や標準的な手続きを明記することで、自治体や住民が迷わずに防犯活動を実施できるようになるためです。

 

例えば、街路や公園の見通しを良くするための植栽の剪定方法や、防犯カメラの適切な設置場所と運用ルールなどを詳細に示しましょう。そうすれば、ガイドラインを参照することで、地域の実情に合わせた効果的な防犯対策を講じることができます。
 


設備やシステムの整備・管理

地域や自治体での防犯対策において、防犯カメラ、スマート街路灯、IoTセンサーなどの最新技術を導入し、適切に整備・管理することは非常に重要です。

 

まず、防犯カメラの設置は犯罪抑止に大きな効果を発揮します。

 

高解像度のカメラは、戦略的に配置すれば地域の隅々まで常に監視でき、不審な活動を見逃しません。さらに、AI技術を搭載した最新の防犯カメラは、異常な動きや行動パターンを自動で検知し、リアルタイムで警報を発することができます。これにより、犯罪の未然防止や迅速な対応が可能となります。

 

次に、スマート街路灯の導入も防犯対策の重要な要素です。

 

スマート街路灯は、高効率のLED照明に加え、センサーやカメラを内蔵しており、周囲の状況を常にモニタリングできます。LED照明は、夜間であっても明るさを確保し犯罪リスクを大幅に減らすことができます。また、スマート街路灯は省エネルギーで環境にも優しいため、長期的なコスト削減と持続可能性の観点からも有効です。

 

さらに、IoTセンサーの活用により、地域の安全性をさらに高めることができます。

 

IoTセンサーは、温度や振動、動きなどの変化を感知し、異常が発生した際には即座に通知を送信します。例えば、火災の発生や不審者の侵入などを早期に察知することで、被害を最小限に抑えることが可能です。また、IoTセンサーから収集されたデータを分析することで、地域の防犯施策の改善にも役立てられます。

 

ただし、これらの設備やシステムを導入するだけでは十分といえません。設備やシステムの定期点検とメンテナンスを行い、常に最適な状態を維持することが欠かせません。
 


防犯マップ作成や防犯情報の発信

防犯マップの作成や防犯情報の発信は、地域防犯において重要な役割を果たします。特に、データ解析の活用は、犯罪発生の傾向や高リスクエリアを特定し、より効果的な対策を講じるために有用です。

 

まず、防犯マップの作成においては、警察や自治体が保有する犯罪データを最大限に活用することが重要です。犯罪の発生場所や時間帯、手口などの詳細情報を地図上に落とし込むことで、地域ごとの犯罪リスクを住民に分かりやすく伝えることができます。

 

防犯マップは、こうした解析結果を視覚的に示すツールであり、住民の防犯意識を高める上で欠かせません。

 

また、犯罪多発エリアを特定することで、防犯カメラや街路灯の重点的な設置、パトロールの強化など、データに基づいた具体的な対策を講じることができます。防犯情報の発信も、防犯対策において欠かせません。

 

自治体のウェブサイトやSNSを積極的に活用し、犯罪発生状況や防犯対策に関する最新情報を定期的に発信することで、住民の防犯意識を高められます。特に、子どもや高齢者といった犯罪に巻き込まれやすい層に対する注意喚起は重要です。

 

また、防犯に関するイベントやセミナーの開催情報を広く発信することで、住民の防犯知識の向上とコミュニティの結束力強化にもつながるでしょう。
 


防犯活動の維持および強化

地域の見守り活動やあいさつ運動なども、防犯活動を維持・強化するために不可欠です。これらの取り組みは、地域住民が協力して行うことで、犯罪抑止力を高め、安全で安心な地域づくりに大きく貢献します。

 

見守り活動は、子どもや高齢者などの犯罪に巻き込まれやすい層を守るために重要な役割を果たします。地域住民がボランティアとして、学校や通学路、公園などを定期的に巡回することで、犯罪者に対する監視の目を増やし、犯行を思いとどまらせる効果があります。

 

また、見守られている子どもたちや高齢者は、地域の大人に守られているという安心感を得ることができ、住民全体の安全に対する意識も向上するでしょう。

 

あいさつ運動も、地域の防犯力を高める上で欠かせない取り組みです。

 

住民同士が日常的にあいさつを交わすことで、お互いの顔を知り、コミュニティの結束力が強まります。あいさつ運動は、活動を通して顔見知りが増えることで、地域に不審者が入り込みにくい雰囲気が形成され、犯罪抑止効果が期待できます。

 

さらに、あいさつが活発に行われる地域は、住民の連帯感が高く、自然と防犯意識が向上します。犯罪者にとって、そのような地域は狙いにくいターゲットとなるのです。
 


調査結果や研究成果の公表

防犯に関する調査結果や研究成果の公表も、防犯対策において重要な役割を果たします。

 

まず、警察や自治体が実施した防犯に関する調査結果は、定期的に地域住民に公表することが必要不可欠です。犯罪発生の傾向や高リスクエリアを明確に示すことで、住民が自らの安全を守るための具体的な行動指針を得られます。

 

例えば、犯罪発生マップを作成し、地域ごとの防犯状況をわかりやすく報告することで、住民の危機意識を高め、地域全体の防犯意識の向上につなげることが可能です。

 

さらに、大学や研究機関、民間企業が行った防犯技術の研究や、新しい対策方法についての成果を公表することも重要です。こうした最新の知見を地域の防犯活動に反映させれば、より効果的な犯罪抑止策を講じることができます。

 

例えば、AIを活用した高性能な防犯カメラの導入事例や、スマート街路灯の設置による犯罪発生率の低下など、具体的な研究成果を共有することで、地域の防犯対策の改善に役立てることができるでしょう。
 



自治体の防犯DX取り組み事例

ここからは、地域の防犯DXについて自治体の取り組み事例を紹介します。

 

全国のいくつかの自治体では、防犯対策へのDX導入を積極的に進め、実際に成果を挙げています。

 

防犯DXに関する自治体の取り組み事例は、地域の防犯対策の参考にもなるほか、DX導入の予算確保や政策決定への足がかりにもできるでしょう。

 


ビーコン受信器の整備|兵庫県伊丹市

兵庫県伊丹市では、安全・安心見守りネットワーク事業の一環として、1,200台の見守りカメラの設置とビーコン受信器の整備を進めています。

 

この取り組みは、子どもや徘徊する認知症高齢者などの位置情報をリアルタイムで把握し、安全を確保するためのものです。

 

また、伊丹市は全国に先駆けて、ビーコン技術を活用した見守りサービス「まちなかミマモルメ」を展開しました。

 

「まちなかミマモルメ」は、ビーコン受信器と連動して、対象者が持つビーコン発信器の位置情報を保護者のスマートフォンに通知します。これにより、子どもが迷子になったり、高齢者が徘徊して危険な場所に行ったりするのを未然に防ぐことができます。

参考:伊丹市「安全・安心見守りネットワーク事業」

参考:伊丹市「伊丹市安全・安心見守りネットワーク事業」
 


見守りカメラの設置|兵庫県加古川市  

兵庫県加古川市では、見守りサービスの一環として地域の安全を守るために1,475台の見守りカメラを設置しました。これは、子どもの通学路や学校周辺の安全確保や、高齢者の徘徊防止を目的としたものです。

 

見守りサービスでは、小学校の通学路や学校周辺、公園や主要道路の交差点などに見守りカメラの設置以外にも、カメラに内臓されているビーコンタグ(BLEタグ)検知器によって、子どもや認知症高齢者の位置情報をリアルタイムで把握しています。

 

​​ビーコンタグを携帯した見守り対象者がカメラ付近を通過すると、検知器がビーコンタグの発する電波を受信し、保護者や家族にスマートフォンアプリを通じて位置情報を通知する仕組みです。

 

さらに、加古川市では150台のAI技術を活用した高度化見守りカメラも導入しています。このカメラは、子どもの声や異常音を検知し、警報を発する機能を備えていて、犯罪や交通事故の未然防止に役立っています。

 

加古川市の見守りカメラ設置による犯罪抑止効果は顕著で、設置前と比較して刑法犯認知件数が約40%減少しています。

参考:加古川市「見守りカメラについて」
参考:加古川市「見守りサービスについて」
 


スマート街路灯の設置|東京都港区  

東京都港区の六本木商店街振興組合では、地域の安全と利便性を高めるためにスマート街路灯の設置を進めています。この取り組みは、港区の支援のもと、商店街が主体となって運用する官民連携の事例です。

 

スマート街路灯には、カメラやセンサーを用いて通行人の動きや人流データをリアルタイムで解析する機能があり、通行量や滞留時間、性別や年齢層などの情報を把握することができ、犯罪の抑止や迅速な対応に役立てられています。

 

さらに、この人流データは店舗のマーケティングにも活用され、商店街の活性化につながっています。

 

六本木商店街振興組合では、人流データを利用したクーポン連携の取り組みも行っています。スマート街路灯のサイネージ画面にQRコードを表示し、通行人がスマートフォンで読み取ることでクーポンを取得できる仕組みを採用しています。

 

また、スマート街路灯は、災害時の避難案内にも重要な役割を果たします。街路灯に内蔵されたスピーカーから避難情報を提供することで、地域住民の安全を確保することができます。

参考:大阪府「六本木商店街発のICT化を全国に」

参考:国土交通省 都市マネジメント分科会「スマート街路灯六本木商店街振興組合様の事例紹介」
 


児童の登下校データの解析|富山県富山市

富山県富山市では「こどもを見守る地域連携事業」の一環として、児童の登下校データを解析し、安全な通学環境の整備を進めています。

 

具体的には、児童がランドセルのポケットに入れたGPSセンサーを活用し、登下校の経路や時間を詳細に解析します。これにより、交通事故の多発地点や危険箇所を特定し、効果的な対策を講じることが可能となります。

 

解析の結果、例えば学校近くの陸橋付近、用水路横の信号手前などで、児童が滞留している状況なども明らかになりました。こうした情報は、学校やPTA、地域の見守り活動に活用され、安全な通学路の設定や見守り体制の強化に役立てられています。

 

富山市では、データ解析で得られた知見を基に、通学路の改善や新たな安全対策の導入を進めています。危険箇所には防犯カメラの設置や警察の巡回強化など、児童の安全を守るための具体的な施策を展開中です。

参考:富山市「富山市スマートシティ推進の取り組み」
参考:国土交通省「防犯まちづくり取組事例集」
 




防犯対策にはDX化だけでなくコミュニティ活動も重要

防犯DXは、最新のデジタル技術を活用して犯罪抑止を図るために有効な手段です。しかし、防犯対策にはデジタル技術の活用だけでなく、地域住民の連携とコミュニティ活動が不可欠です。

 

具体的には、地域住民が主体的に参加する「見守り活動」や「あいさつ運動」が挙げられます。これらの活動を通じて、住民同士が顔見知りになり、不審者が入り込みにくい環境が形成されます。定期的な地域の巡回や異常の早期発見により、住民の防犯意識が自然と高まるでしょう。

 

また、自治体主導の防犯セミナーやワークショップを通じて、住民が防犯知識を習得し、実践する機会を提供することで、地域全体の防犯力が向上します。

 

さらに、住民が積極的に参加する清掃活動や地域イベントを通じて、コミュニティの結束力を強め、犯罪抑止力を高めることができます。自治体と住民が一体となって取り組むことで、防犯だけでなく、市民生活のサービス向上や地域コミュニティの促進にもつながるでしょう。
 


▶監修・解説:北川哲也氏

補助金や許認可の手続きを専門とする行政書士事務所Link-Up代表 北川哲也氏。

2011年に29歳で開業し7年間個人事務所として中小企業向け行政書士サービスを展開。2018年春に株式会社Link-Upを立ち上げ、士業サービスでカバーしきれないコンサルティングや顧問サービスをスタート。公益社団法人茅ヶ崎青年会議所の2021年度理事長や認定NPO法人NPOサポートちがさき参画など活動多数。



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