フェーズフリーとは?メリットや防災グッズの選び方を解説
防災意識の高まりとともに、近年では「普段の生活」と「災害時の生活」のどちらでも使える商品が増えつつあります。
これは「フェーズフリー」という新しい考え方に基づいたものです。また、このフェーズフリーは、自治体による地域防災にも浸透し始めています。
そこで本記事では、フェーズフリーの基本概念やメリット、フェーズフリー商品の例、防災グッズの選び方などを解説します。
▶監修・解説:北川哲也氏
補助金や許認可の手続きを専門とする行政書士事務所Link-Up代表 北川哲也氏。
2011年に29歳で開業し7年間個人事務所として中小企業向け行政書士サービスを展開。
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フェーズフリーとは?
フェーズフリーは、日常時と非常時の境界を取り払い、どちらの状況でも活用できる商品やサービスを提供する新しい防災コンセプトです。2014年に社会起業家の佐藤唯行氏が提唱したこの概念は、従来の防災の枠を超えた革新的なアプローチとして注目を集めています。
フェーズフリーの本質は「備える」という特別な行動ではなく、日常生活の中に自然と防災の要素を組み込むことにあります。例えば、普段使用する紙コップにメモリを付けることで、災害時には計量カップとしても活用できるようになります。
このように、日常的に使用するアイテムに工夫を加えることで、非常時にも対応できる柔軟性を持たせるのがフェーズフリーの特徴です。
自治体職員や関係者にとって、フェーズフリーの概念を理解し、導入することは重要です。また、地域住民への防災啓発活動においても、フェーズフリーの考え方を伝えることで、より実践的で持続可能な防災対策を促進できるでしょう。
フェーズフリーの5つの原則
フェーズフリーの概念を実現するために、以下の5つの重要な原則が定められています。これらの原則は、自治体が防災対策を検討する際の重要な指針となります。
● 常活性:どんな状況でも利用可能であること
● 日常性:日常から使えるデザインであること
● 直感性:使用方法がわかりやすいこと
● 触発性:災害への意識を喚起するデザインであること
● 普及性:広く普及しやすいこと
「常活性」は、あらゆる状況下で活用できる特性を指します。停電時にも使用可能な太陽光充電式のLEDライトや、水害時でも機能する防水設計の通信機器など、状況に左右されない機能性が求められます。
「日常性」は、平時から違和感なく使用できるデザインを重視します。従来の防災用品は非常時専用として保管されがちでしたが、フェーズフリー製品は日常的な使用を前提としています。オフィス家具や文具など、普段使いの製品に防災機能を組み込む発想が特徴的です。
「直感性」は、誰もが迷わず使用できる分かりやすさを意味します。災害時の混乱した状況下でも、特別な説明や訓練なしで使用できることが重要です。この原則は、高齢者や障害者、外国人など、多様な利用者への配慮にもつながります。
「触発性」は、製品やサービスを通じて自然と防災意識が高まる特性を指します。メモリ付きの紙コップは、日常的な使用を通じて災害時の計量用途を意識させる効果があります。このような無意識の気づきが、持続的な防災意識の醸成につながります。
「普及性」は、多くの人々に受け入れられやすい特徴を表します。コストや入手のしやすさ、維持管理の容易さなど、幅広い普及を促進する要素が含まれます。自治体の限られた予算内で効果的な防災対策を実現するためにも、この原則は重要な意味を持つでしょう。
これらの原則は、単独ではなく相互に関連し合って機能します。自治体が防災対策を検討する際は、これら5つの原則を総合的に評価し、地域の特性や住民のニーズに合わせた効果的な導入を図ることが求められます。
フェーズフリーとローリングストック法
フェーズフリーの考え方を実践する具体的な方法として、ローリングストック法が注目を集めています。この方法は、従来の「備蓄」という概念を覆し、日常生活の中で自然と防災対策を実現する画期的なアプローチです。
ローリングストック法の基本的な考え方は、普段から少し多めに食品や飲料水を購入し、古いものから順番に消費しながら、定期的に新しいものを補充することにあります。これにより、備蓄品の賞味期限切れを防ぎ、無駄なコストを削減できます。また、非常時には新鮮な状態の食品を使用できるため、避難生活の質の向上にもつながるでしょう。
自治体での実践例として、学校給食センターや公共施設の食堂でローリングストック法を導入する取り組みが始まっています。例えば、通常の在庫より1週間分多めに食材を保管し、定期的にローテーションすることで、災害時の初動対応に必要な食料を確保しています。
従来の備蓄方法では、賞味期限切れによる廃棄が避けられませんでしたが、ローリングストック法では計画的な消費が可能となり、食品ロスを大幅に削減できます。
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フェーズフリーのメリット
フェーズフリーを導入することで、自治体と住民の双方に大きなメリットがもたらされます。その効果は防災面にとどまらず、行政運営の効率化や地域コミュニティの活性化にまで及びます。
以下は、フェーズフリーの主なメリットです。
● 日常生活へ統合できる
● 防災意識が向上する
● 保管スペースとコストを効率化できる
● 災害時のQOL(生活の質)が向上する
● 環境負荷を軽減できる
● 地域コミュニティが強化できる
このように、フェーズフリーの導入は、防災対策の効率化だけでなく、持続可能な地域づくりにも大きく貢献するでしょう。
自治体には、これらのメリットを十分に活かせるような取り組みが期待されています。
日常生活へ統合できる
フェーズフリーの最大の特徴は、防災を特別な活動としてではなく、日常生活の自然な一部として組み込める点です。この考え方により、自治体職員や住民の防災に対する心理的なハードルを大きく下げることができます。
例えば、公共施設での実践として、会議室の椅子を災害時にベッドとして使用できる折りたたみ式のものを選択したり、カフェテリアの食器を非常時の計量カップとしても使えるデザインにしたりすることで、特別な備蓄品を用意することなく防災機能を確保できます。
また、自治体の庁舎や公共施設での備品選定においても、防水機能付きの文具や、停電時にも使用可能なソーラー充電式の機器など、日常的に使用する物品に防災機能を持たせることで、自然な形で防災対策を進めることが可能です。
食料や飲料水の備蓄においても、ローリングストック法を取り入れることで、従来の「備蓄のための備蓄」から脱却できます。例えば、学校給食センターや公共施設の売店で扱う商品を、通常より少し多めに在庫として持つことで、災害時の備蓄としても活用できます。
防災意識が向上する
フェーズフリーの考え方を取り入れることで、特別な努力をすることなく、自然と地域全体の防災意識を高められます。従来の防災対策は、定期的な訓練や特別な準備が必要でしたが、フェーズフリーでは日常生活の中で自然と防災力が養われていくでしょう。
また、地域のイベントや行事にフェーズフリーの要素を組み込むことで、楽しみながら防災意識を醸成できます。例えば、地域の運動会で防災要素を取り入れたプログラムを実施したり、地域の祭りで防災クイズを開催したりすることで、参加者は楽しみながら防災知識を習得できます。
学校教育の場面でも、フェーズフリーの考え方は効果的です。給食当番や掃除当番などの日常的な活動を通じて、協力することの大切さや規律を学ぶことができ、これらは災害時の共助の精神につながります。また、社会科の授業でまち探検をする際に、避難場所や危険箇所を確認することで、防災の視点を自然と身につけることができます。
さらに、フェーズフリーな防災訓練を実施することで、より実践的な対応力を養えます。従来の形式的な避難訓練ではなく、日常生活の延長線上で防災スキルを習得できるプログラムを提供することで、参加者の意識と実践力を効果的に高められるでしょう。
保管スペースとコストを効率化できる
フェーズフリーの導入により、自治体の防災対策における保管スペースとコストの課題を効果的に解決できます。従来の防災対策では、非常時専用の備蓄品を大量に保管する必要がありましたが、フェーズフリーの考え方を取り入れることで、より効率的な運用が可能です。
コスト面でも大きな効果が期待できます。従来は日常用と非常用で二重に購入する必要があった備品を、フェーズフリー製品一つで対応できるようになります。また、定期的な更新が必要な備蓄品も、日常的に使用しながら補充するローリングストック方式を採用することで、廃棄ロスを最小限に抑えられます。
さらに、保管場所の確保に苦心していた防災備蓄品を、日常的に使用する場所に配置できるようになります。これにより、倉庫やストックルームの有効活用が可能となり、限られた施設スペースを最大限に活用できます。
このような効率化は、単なるコスト削減にとどまらず、防災対策の質の向上にもつながります。節約できた予算を、より高度な防災システムの導入や、地域防災力の強化に向けた取り組みに振り向けることができるでしょう。
災害時のQOL(生活の質)が向上する
フェーズフリーの導入により、災害時でも日常生活に近い質の高い生活を維持することが可能です。従来の防災対策では、非常時には特別な備蓄品や非常用品を使用することが前提でしたが、フェーズフリーでは普段使い慣れたアイテムを活用できるため、より快適な避難生活を送れます。
避難所での生活においても、普段使用している家具や備品をそのまま活用することができれば、環境の変化によるストレスを最小限に抑えられるでしょう。フェーズフリー対応の椅子やテーブルは、日常的なオフィス家具としての機能を持ちながら、災害時には簡易ベッドや作業台として転用できるため、避難生活の質を大きく向上させられます。
特に高齢者や障害者、小さな子どもがいる家庭にとって、急激な生活環境の変化は大きなストレスとなります。フェーズフリーの考え方を取り入れると、これらの方々も普段使い慣れたものを使用し続けることができ、心理的な負担を軽減させられるでしょう。
環境負荷を軽減できる
従来の防災対策では、日常用品と防災用品を別々に購入・保管する必要がありましたが、フェーズフリーの考え方を取り入れることで、より環境に配慮した運用が可能となります。
例えば、防災備蓄品の賞味期限切れによる廃棄を大幅に削減できます。ローリングストック法を活用することで、備蓄品を定期的に消費・補充するサイクルが確立され、食品ロスを最小限に抑えられるでしょう。これは、自治体の廃棄物処理コストの削減にもつながります。
また、フェーズフリー製品は耐久性が高く、長期間使用できるように設計されています。防水機能付きの文具や、多機能な家具など、一つの製品で複数の用途に対応できるため、製品の総量を減らせます。これにより、製造時のCO2排出量や資源消費を抑制することが可能です。
地域コミュニティが強化できる
フェーズフリーの考え方を地域に導入することで、防災力の向上だけでなく、地域コミュニティの絆も自然と深まっていきます。従来の防災対策は、定期的な訓練や特別な活動として実施されてきましたが、フェーズフリーでは日常的な交流の中で防災意識が育まれていきます。
例えば、公共施設をフェーズフリーの考え方で設計することで、新たなコミュニティの場が生まれます。カフェやフィットネスジムを併設した防災拠点型の施設では、住民が日常的に集い、交流する中で自然と防災についての会話が生まれ、地域の結びつきが強まっていくでしょう。
また、地域の祭りやイベントにフェーズフリーの要素を取り入れることで、楽しみながら防災意識を高めることが可能です。フェーズフリー製品を使用した料理教室を開催したり、防災機能付きの遊具を活用した子ども向けイベントを実施したりすることで、世代を超えた交流が生まれます。
さらに、地域住民が主体となってフェーズフリーの取り組みを進めることで、自主防災組織の活性化にもつながります。住民参加型のワークショップを通じて、地域に必要なフェーズフリー設備や備品を検討することで、地域の特性に合った防災対策を講じることができるでしょう。
フェーズフリー商品例と4つの分類
フェーズフリーな商品やサービスは、その特性によって4つのカテゴリに分類されます。この分類を理解することで、自治体での効果的な導入計画を立てることができます。
以下は、一般社団法人フェーズフリー協会による4つの商品分類です。
● 日常的に利用している商品
● 利用方法によって価値が出る商品
● 日常時と非常時で価値を提供する商品
● 災害時に役立つ商品
フェーズフリー商品は様々な形で日常生活に溶け込みながら、災害時の備えとしても機能します。自治体がこれらを導入する際は、各カテゴリーの特性を考慮し、バランスの取れた配置を検討することが重要です。
日常的に利用している商品
フェーズフリーの考え方において、特定の職業やアウトドア愛好者が日常的に使用する道具は、そのまま防災用品としても優れた機能を発揮します。これらの商品は、使い慣れているからこそ、災害時にも効果的に活用できる利点があります。
アウトドア用のテントは、キャンプなどで定期的に使用することで、設営方法や収納手順が自然と身についています。災害時に避難所のスペースが不足した場合でも、迅速にプライベート空間の確保が可能です。また、テント内は外気温の影響を受けにくいため、真夏や厳冬期の避難生活でも快適な環境を維持できます。
寝袋も同様に、キャンプや旅行で使用経験があれば、その保温性や快適な使用方法を熟知しています。避難所での就寝時に、毛布だけでは寒さ対策が不十分な場合でも、寝袋があれば安心して休めるでしょう。
カセットコンロは、アウトドア料理や非常時の調理器具として重宝します。日頃からバーベキューなどで使用していれば、ガスの残量管理や安全な取り扱いにも慣れています。停電時でも温かい食事を提供でき、避難生活の質を大きく向上させられます。
LEDランタンは、キャンプでの夜間照明として使用する機会が多いです。停電時には、手持ちの照明だけでなく、部屋全体を明るく照らすことができ、避難所での共用スペースの照明としても活用できます。
利用方法によって価値が出る商品
既存の日用品に新たな使い方を提案することで、防災的な価値を付加できる商品があります。これらは特別な機能を追加することなく、使い方の工夫だけでフェーズフリーの価値を生み出すことができます。
メジャー付き紙コップは、通常のオフィスや家庭での飲料用途に加えて、災害時には計量カップとしても活用できます。目盛りには、ml/cc、合、カップなど様々な単位が印字されており、液体だけでなく、粉ミルクや米の計量にも対応可能です。多くの職場や家庭に常備されている紙コップに、このような工夫を加えることで、特別な備蓄品を用意することなく防災機能を確保できます。
また、日常的に使用する食品や飲料水をローリングストック方式で管理することも、利用方法の工夫によるフェーズフリーの好例です。賞味期限の近いものから順番に消費し、使用した分を補充することで、常に新鮮な状態の備蓄を維持できます。特に、レトルト食品や缶詰など、調理の手間が少なく保存期間の長い食品は、この方式に適しています。
トイレットペーパーも、日常的な使用と備蓄を組み合わせることで、フェーズフリーの価値を発揮します。普段使いの分に加えて、少し多めに購入しておくことで、災害時の備えとすることができるでしょう。また、使用済みの芯は、非常時には簡易コップや小物入れとして活用することも可能です。
日常時と非常時で価値を提供する商品
フェーズフリー商品の中でも、日常時と非常時の両方で同じ機能を発揮する製品は、特別な使い方を覚える必要がなく、災害時でもスムーズに活用できる利点があります。
防災LED付きモバイルバッテリーは、普段はスマートフォンの充電器として使用しながら、非常時には長時間使用可能な照明器具として機能します。大容量バッテリーを搭載し、防塵・防水性能も備えているため、過酷な環境下でも安定して使用できます。また、ソーラーパネル付きの製品であれば、停電時でも充電が可能です。
蓄光LED電球も、日常的な照明器具としての役割に加えて、停電時には蓄積した光で周囲を照らし続けることができます。従来の非常灯と異なり、インテリアとしても違和感なく使用できるデザインが特徴です。特に階段や廊下など、避難経路となる場所に設置することで、非常時の安全確保に貢献します。
防水機能付きの筆記用具も、雨天時や水回りでの作業など、日常的な場面で重宝する上、災害時の記録用具としても確実に機能します。特に加圧ボールペンは、あらゆる角度や濡れた紙面でも書くことができ、避難所での情報共有や安否確認にも活用できます。
災害時に役立つ商品
フェーズフリー商品の中でも、日常では一般的な用途で使用しながら、災害時に特別な機能を発揮する製品群があります。これらの商品は、普段はインテリアや日用品として違和感なく使用でき、いざという時に防災アイテムとして活躍します。
超撥水バッグは、日常的にはエコバッグやショッピングバッグとして使用できますが、災害時には水を運ぶバケツとして機能します。軽量で折りたたみ可能なため、普段から持ち歩きやすく、非常時には給水活動に重宝します。
また、壁掛けアートとして楽しめる「アートトワレ」は、見た目はおしゃれな絵画でありながら、内部に非常用トイレを収納しています。インテリアとしての価値を持ちながら、災害時には重要な衛生設備として機能する製品です。
「SONAENO」というクッションは、普段はソファやベッドのアクセサリーとして使用できますが、災害時には寝袋やポンチョとして使用可能です。特にプライバシー確保が難しい避難所での着替えや休息に役立ちます。
フェーズフリー防災グッズの選び方
自治体での防災対策において、フェーズフリー防災グッズの選定は重要な課題です。様々な商品が開発されているため、どのような目的で、どういった商品を選ぶかは、とても大切なポイントです。
また、効果的な選択のためには、以下のポイントを考慮する必要があります。
● 品質と耐久性の確認
● 利便性と操作性を重視
● 保存期間とメンテナンスの容易さ
● 多機能性と用途の広さ
● デザインやインテリアとの調和
● 実際の使用感
これらの選定基準に基づいて商品を選ぶことで、より効果的なフェーズフリー防災対策を実現することができるでしょう。
さらに、無駄なコストをかけることなく、防災に役立つ商品を選ぶことができます。
品質と耐久性の確認
フェーズフリー商品を選ぶ際、最も重視すべきは品質と耐久性です。これらの商品は日常的な使用と非常時の過酷な状況の両方に対応する必要があるため、通常の製品以上に高い性能が求められます。
まず、商品の基本的な性能として、防水性や耐衝撃性を確認することが重要です。例えば、防水機能付きのバッグは、日常的な雨天時の使用だけでなく、災害時の水の運搬にも耐えられる強度が必要です。また、電子機器類は、落下や振動に対する耐久性も重要な選定基準となります。
素材の選択も重要なポイントです。長期間の使用や保管に耐えられる高品質な素材を使用しているか、紫外線や温度変化による劣化が少ないかなどを確認します。特に、プラスチック製品は経年劣化による強度低下が懸念されるため、耐候性の高い素材が使用されているかどうかをチェックしましょう。
また、商品の構造にも注目が必要です。複数の部品で構成される製品の場合、接合部分の強度や、部品の交換可能性なども確認します。メンテナンス性が高く、必要に応じて部品交換や修理が可能な設計になっているものを選ぶことで、長期間の使用が可能になります。
利便性と操作性を重視
フェーズフリー商品の選定において、利便性と操作性も重要な要素です。災害時の混乱した状況下でも、誰もが直感的に使用できる商品を選ぶことで、より効果的な防災対策が実現できます。
まず、操作手順の簡便さを重視します。複雑な設定や専門的な知識を必要とする商品は、非常時には使用が困難になる可能性があります。例えば、多機能LEDライトは、シンプルなスイッチ操作で明るさの調整や点滅モードの切り替えができるものを選びましょう。
電源の確保も重要なポイントです。停電時でも使用できるよう、手回し充電やソーラー充電など、複数の充電方式に対応した製品を選ぶことが推奨されます。特に、モバイルバッテリーは、USB充電だけでなく、手動での充電機能を備えたものが望ましいでしょう。
また、ユニバーサルデザインの観点も重要です。高齢者や障害者、子どもなど、様々な利用者が使いやすい設計になっているかを確認します。大きな文字や分かりやすいピクトグラムの使用、握りやすい形状など、誰もが直感的に使える工夫が施されているかどうかをチェックしましょう。
さらに、日常使用における利便性も考慮が必要です。例えば、収納時のコンパクト性や、清掃のしやすさなども、継続的な使用を考える上で重要な要素となります。日常的に使いやすい商品であれば、定期的なメンテナンスも確実に行われ、非常時にも確実に機能を発揮できるでしょう。
保存期間とメンテナンスの容易さ
フェーズフリー商品を選ぶ際、保存期間の長さとメンテナンスの容易さは重要な判断基準となります。自治体での導入を考える場合、特に長期的な運用コストと管理の効率性を考慮する必要があります。
長期保存が可能な商品を選ぶことで、定期的な入れ替えの手間を軽減できます。例えば、防水機能付きLEDライトは、一般的な懐中電灯と比べて耐久性が高く、電池の交換頻度も少なくて済みます。また、多機能防災ラジオは、ソーラー充電や手回し充電に対応しているため、電池切れの心配がなく、長期保存が可能です。
消耗品については、ローリングストック法を活用することで、常に新鮮な状態を維持できます。例えば、紙コップや文具類は、日常的に使用しながら定期的に補充することで、劣化や期限切れを防ぐことができます。
また、保管環境への配慮も必要です。温度や湿度の影響を受けにくい商品を選ぶことで、特別な保管設備を必要とせず、通常の倉庫や事務所でも長期保存が可能になります。これにより、管理コストの削減と保管スペースの効率的な活用が実現できます。
多機能性と用途の広さ
フェーズフリー商品を選ぶ際、一つの製品で複数の機能を備えていることは、効率的な防災対策を実現する上で重要な要素となります。多機能性を持つ商品は、保管スペースの有効活用とコスト削減にも大きく貢献します。
例えば、超撥水素材を使用したバッグは、日常的にはエコバッグやショッピングバッグとして使用でき、災害時には水を運ぶバケツとしても活用できます。また、レジャーシートや防寒具としても使える多目的な機能を備えているため、一つの商品で複数の防災ニーズに対応することができます。
蓄光LED電球も優れた多機能性を持つ商品の一つです。通常の照明として使用しながら、停電時には蓄積した光で周囲を照らし続けることができます。さらに、省エネ効果も期待できるため、平時の電気代削減にも貢献します。
また、モバイルバッテリー付きLEDライトは、日常的なスマートフォンの充電器としての機能に加え、非常時には長時間使用可能な照明器具として活用できます。ソーラーパネル付きの製品であれば、停電時でも充電が可能で、より高い実用性を発揮します。
デザインやインテリアとの調和
フェーズフリー商品を選ぶ際、機能性だけでなく、デザイン性も重要な選定基準となります。特に自治体の公共施設では、来訪者や職員が快適に過ごせる空間づくりと防災機能の両立が求められます。
おしゃれなデザイン性をもつ商品を来庁者の目に触れる場所に設置することで、空間の装飾性を高めながら、いざという時のための備えを確保できます。また、定期的に目にすることで、自然と防災意識も醸成されます。
また、クッションや座布団として使用できる防災グッズは、オフィスや待合スペースのインテリアとして自然に溶け込みます。カラーバリエーションも豊富で、施設の雰囲気に合わせた選択が可能です。非常時には寝袋やブランケットとして活用できる実用性も備えています。
このように、デザイン性の高いフェーズフリー商品を選ぶことで、防災用品を「隠さない防災」として日常空間に取り入れることができます。これにより、定期的なメンテナンスも忘れることなく、常に使用可能な状態を維持できます。
実際の使用感
フェーズフリー商品の導入を検討する際、カタログやウェブサイトの情報だけでなく、実際の使用体験を通じた評価が重要です。特に自治体での導入においては、多くの職員や住民が使用することを想定し、様々な観点からの検証が必要となります。
防災機能付きの家具や備品を導入する場合、まずは少数の部署で試験的に使用してみることをお勧めします。日常業務での使い勝手はもちろん、定期的な防災訓練時に非常時の機能も確認することで、実践的な評価が可能となります。
また、フェーズフリー食品については、職員の昼食時や会議での試食会を実施することで、味や使い勝手を確認できます。特に、高齢者や子どもなど、様々な年齢層での受け入れやすさを検証することが重要です。水を加えるだけで食べられる商品や、常温保存が可能な商品など、調理設備が限られた状況でも対応できるかどうかの確認も必要でしょう。
さらに、防災用品としての機能を検証する際は、実際の災害を想定した環境下でのテストも有効です。例えば、停電を想定して夜間に照明器具の明るさを確認したり、雨天時に防水製品の性能を試したりすることで、より実践的な評価が可能となります。
フェーズフリーによる新たな防災モデル
フェーズフリーの考え方を地域全体に導入すると、従来の防災対策とは異なる、より実効性の高い防災モデルを構築できます。この新しいアプローチは、日常生活と防災の境界をなくし、より自然な形で地域の防災力を高めることを可能にします。
教育現場でも、フェーズフリーの考え方を取り入れた革新的な取り組みが始まっています。給食当番や掃除当番などの日常的な活動を通じて、協力することの大切さや規律を学ぶことで、災害時にも活かせる基本的な生活能力が育成されるでしょう。
また、社会科の授業でまち探検を行う際に、避難場所や危険箇所の確認を組み込むなど、教科学習と防災教育を効果的に結びつけています。
公共施設においても、会議室の家具を非常時にベッドとして使用できるものを選ぶなどの「フェーズフリーの考え方」を導入することで、より効果的な防災対策が可能になるでしょう。
▶監修・解説:北川哲也氏
補助金や許認可の手続きを専門とする行政書士事務所Link-Up代表 北川哲也氏。
2011年に29歳で開業し7年間個人事務所として中小企業向け行政書士サービスを展開。2018年春に株式会社Link-Upを立ち上げ、士業サービスでカバーしきれないコンサルティングや顧問サービスをスタート。公益社団法人茅ヶ崎青年会議所の2021年度理事長や認定NPO法人NPOサポートちがさき参画など活動多数。