東京へ一極集中するデメリットや地方への影響を解説!
コロナ禍を経て、再び東京への人口流入が増えてきており、東京一極集中がさらに加速しています。
こういった状況に対して政府や自治体は様々な政策を打ち出しています。しかし、これらの政策は、引越しや転職、企業の意思決定といった要因が絡むため、効果検証に時間がかかる点には注意が必要です。
一極集中は都市部だけでなく地方にも多大な影響を与えるため、東京と地方が一体となって共存共栄を目指す必要があります。
そこで本記事では、東京一極集中が起こる原因やデメリット、地方への影響などを解説します。
▶監修・解説:北川哲也氏
補助金や許認可の手続きを専門とする行政書士事務所Link-Up代表 北川哲也氏。
2011年に29歳で開業し7年間個人事務所として中小企業向け行政書士サービスを展開。
●監修者の詳細な経歴はこちら
一極集中とは
一極集中とは、特定の都市に人口や産業、経済活動、文化的機能などが過度に集中する現象を指します。日本においては、東京圏への一極集中が特に顕著であり、この傾向は近年さらに強まっています。
歴史的な背景を見ると、この一極集中の起源は江戸時代にまで遡ります。徳川幕府が江戸(現在の東京)を政治の中心地として定めて以降、明治時代の首都移転を経て、政治、経済、文化の中枢機能が東京に集積していきました。
東京一極集中の特徴として、以下の点が挙げられます。
まず、経済機能の集中です。日本を代表する大企業の本社機能、金融機関、証券取引所などが東京に集中し、国内総生産(GDP)の約2割を東京都が占めています。
次に、教育・研究機能の集積があります。国内の大学生の約4割が東京圏で学んでおり、高度な研究機関や専門教育機関が集中しています。
さらに、情報・文化の一極化として、主要なメディア企業や文化施設が東京に集中し、情報発信の中心となっています。
参考:東京都「都民経済計算(都内総生産等)令和3年度年報」
参考:内閣官房・内閣府 総合サイト「基礎資料 東京の大学の定員の抑制に関する 基本的な方向性・論点」
東京一極集中の現状
総務省が発表した2023年の住民基本台帳人口移動報告によると、東京都への転入超過数は68,285人に達し、前年から30,262人増加しました。この数値は、コロナ禍前の2019年における82,982人の水準に近づきつつあり、東京一極集中が再び加速している実態が浮き彫りとなっています。
特筆すべきは、東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の1都3県)全体での転入超過数が126,515人に上り、2年連続で前年を上回ったことです。この状況は、コロナ禍で一時的に減速した東京圏への人口集中が、以前の傾向に回帰していることを示しています。
年齢層別の分析では、20~24歳が最も多い81,537人の転入超過を記録し、続いて25~29歳が32,605人、15~19歳が21,649人となっています。これら15~29歳の若い世代だけで、実に135,791人もの転入超過が生じています。
一極集中が起こる原因
東京一極集中は、複数の要因が複雑に絡み合って生じている現象です。この現象を分析していくと、以下の原因が見えてきます。
● ビジネスの機会が豊富
● インフラと交通網が充実
● 教育機関の充実
● 就職機会と高賃金への魅力
● 都市生活への憧れ
● グローバル化による影響
● 産業構造の違い
このように、東京一極集中は単なる人口の集中ではなく、政治、経済、教育、文化などの諸機能が相互に関連し合いながら、さらなる集中を促す構造となっています。
この状況は、地方創生や地域分散の取り組みが進められているにもかかわらず、依然として継続しているのが現状です。
ビジネスの機会が豊富
東京は日本経済の中心地として、ビジネスチャンスの宝庫となっています。東京都産業労働局の2023年の統計によると、2021年の東京都内の企業数は42万4,079社で全国の12.5%を占め、外資系企業は2,391社と全国の75.3%が集中しています。また、2021年度の都内総生産は113兆7,000億円に達し、日本の経済活動の中核を担っていると言えるでしょう。
特筆すべきは、金融セクターの集中度の高さで、企業の資金調達において東京が重要な役割を果たしています。この金融機能の集中は、新規事業の立ち上げやビジネス展開において大きなアドバンテージです。
企業間の取引においても、東京は効率的なビジネス環境を提供しています。同一エリアに多くの企業が集積することで、取引コストの削減や迅速な情報共有が可能となり、ビジネスの意思決定スピードが向上します。特に、対面でのコミュニケーションが重要な商談や契約締結において、この地理的近接性は大きな利点となっています。
スタートアップ企業にとっても、東京は魅力的な立地です。優秀な人材の確保が比較的容易で、新規ビジネスの創出が活発に行われています。
インフラと交通網が充実
東京圏における交通インフラの充実度は、一極集中を加速させる重要な要因となっています。この充実した公共交通網により、都市機能の効率的な利用が可能となり、経済活動の生産性向上にもつながっています。
特筆すべきは、国際的なアクセス性の高さです。羽田空港と成田空港を合わせると首都圏の国際空港機能は世界有数の規模を持ちます。さらに、東京駅を起点とする新幹線網は、全国の主要都市との迅速な移動を可能にし、ビジネスや観光における重要な役割を果たしています。
都市内の交通網も充実しており、JR線、私鉄、地下鉄が相互に連携し、シームレスな移動を実現しています。一方で、地方都市におけるインフラ整備は依然として課題を抱えており、地方の鉄道網は年々縮小傾向にあります。
この状況は、地方における企業誘致や人口流入の障壁となり、一極集中をさらに促進する要因となっています。
教育機関の充実
東京都内の大学や短期大学、専門学校を含めた高等教育機関の集積度は全国でも突出しており、若者の教育機会を大きく広げています。IT・デジタル分野から医療・福祉、クリエイティブ分野まで、幅広い専門分野をカバーする教育機関が集中しています。
このような環境下で、学生は自身の興味や適性に合わせた進路選択が可能となり、地方では得られない専門的な学びの機会を得られます。
教育機関の充実は、企業の人材確保にも大きな影響を与えています。高度な専門教育を受けた人材が毎年大量に輩出されることで、企業は必要な人材を効率的に採用できる環境が整っているからです。特に、最新技術やグローバルビジネスに対応できる人材の育成は、東京の産業競争力を支える重要な要素となっています。
一方で、地方における高等教育機関の数は東京よりも圧倒的に少なく、地元企業の人材確保にも影響しています。
就職機会と高賃金への魅力
東京における就職機会の豊富さと高賃金は、若年層を引き付ける大きな要因となっています。2024年の東京都の最低賃金は1,163円と全国で最も高く、全国平均の1,055円を大きく上回っています。
雇用機会の面では、東京都の有効求人倍率は常に高水準を維持しており、特に専門職や技術職の求人が豊富です。一方、地方圏では正規雇用の機会が限られており、特に事務職や専門職の求人は都市部と比べて著しく少ない状況です。
地方に比べて東京での生活コストは高いにもかかわらず、キャリア形成や収入増加の機会を求めて、多くの若者が東京への移住を選択しています。
都市生活への憧れ
東京は日本の文化・情報の発信地として、若者を魅了し続けています。近年「Shibuya Sakura Stage」や「東京ミッドタウン八重洲」など、新たな商業施設やエンターテイメント施設が続々とオープンし、若者の期待を集めています。
特に、文化的な側面では、東京の優位性が際立っています。最新のトレンドや文化的イベント、ファッション、音楽など、多様な文化体験の機会が豊富です。
しかし、地方都市では若者向けのエンターテイメントや文化施設が限られており、特に最新のトレンドや文化に触れる機会が少ないことが課題となっています。この状況は、若者の地方定着を妨げる要因の一つとなっており、地方自治体にとって重要な政策課題となっています。
グローバル化による影響
東京への一極集中は、グローバル化の進展とともにさらに加速しています。2023年末の統計によると、日本の外国人人口は過去最高の約341万人を記録し、そのうち約66万人が東京都に集中しています。
東京都は国内のみならず国外からも多くの人材を集めており、その多様な労働力が巨大な経済活動の下支えになっていると言えるでしょう。特に、サービス業や小売業などの対面型産業では、外国人労働者への依存度が高まっており、東京の経済活動を支える重要な労働力となっています。
一方で、地方における外国人労働者の受け入れは依然として課題を抱えています。地方自治体も外国人材の受け入れ施策を進めていますが、言語サポートや生活インフラの整備が十分でないことが多く、外国人労働者の定着率は都市部と比べて低い傾向にあります。
産業構造の違い
東京都の産業構造は、他の地域と比較して際立った特徴を示しています。第三次産業の割合は80%を超えており、特に情報通信業、金融・保険業、専門・科学技術サービス業などの高付加価値産業が大きな比重を占めています。これらの産業は、他の産業に比べて賃金水準が高いことも特徴です。
そして、高付加価値産業が集中する東京では、新たな技術やサービスを生み出すイノベーションが活発に行われ、それがさらなる企業や人材の集積を促すという好循環を生んでいます。
一方、地方都市では製造業や農林水産業などの第一次・第二次産業が中心となっており、東京都の産業構造とは大きく異なります。この産業構造の違いが、地域間の経済格差をさらに拡大させる要因となっています。
特に深刻なのは、地方における新興産業の育成の難しさです。デジタル化やグローバル化が進む中、従来型の産業だけでは地域経済の活性化に限界があり、若年層の流出に歯止めをかけることが困難になっています。
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一極集中のデメリット
東京一極集中がもたらす問題は、都市部と地方の双方に深刻な影響を及ぼしています。特に注目すべきは、人口集中による都市機能の過負荷と、地方の持続可能性の危機という二つの側面です。
ここでは、一極集中することによる都市の主なデメリットを解説します。
● 人口減少社会への影響
● 災害リスクと都市機能麻痺の懸念
● 生活環境の悪化と環境問題
● 社会的・経済的格差の拡大
● 生産性低下と競争力喪失
● 交通混雑と通勤ストレスの増加
● 住宅価格と生活コストの上昇
このような状況に対し、東京都は各地域と連携しながら地域のイノベーションを後押しするなど、地域と「共存共栄」できる取り組みを実施しています。
人口減少社会への影響
東京一極集中は、日本の人口減少を加速させる重要な要因となっています。特に東京都の合計特殊出生率は0.99と、全国で唯一「1」を下回る結果となりました。
この低出生率の背景には、東京特有の社会環境があります。都内の住宅事情や長時間通勤、高額な生活費などが、結婚や出産の障壁となっているのが実情です。
さらに深刻なのは、地方からの若年層、特に女性の東京圏への流入です。この動きが、地方の人口再生産力を低下させ、全国的な人口減少をさらに加速させる要因となっています。
社会保障の観点からも、この状況は看過できない問題です。現役世代の減少による社会保障制度の持続可能性も危ぶまれています。
災害リスクと都市機能麻痺の懸念
東京一極集中は、大規模災害発生時における国家的なリスクとして認識されています。首都直下型地震が発生した場合、最大で61万棟の建物が全壊・焼失し、約2万3,000人の死者が発生する可能性があるとの予測もあります。
経済的な影響も甚大です。直接的な被害額は約47兆円、企業活動の停滞による間接的な被害額は約48兆円と試算され、合計で約95兆円という国家予算に匹敵する経済損失が予想されています。さらに、サプライチェーンの寸断により、その影響は全国に波及する可能性が高くなっています。
交通インフラへの影響も深刻です。地下鉄は1週間、JRや私鉄は1ヶ月程度の運休が予想され、約640万人から800万人の帰宅困難者が発生すると見込まれています。また、道路網の寸断により、救助・救援活動にも支障をきたす恐れがあります。
このような状況を踏まえ、政府は地方分散化を推進していますが、その効果はまだ限定的です。
参考:内閣府「首都直下地震の被害想定 対策のポイント」
参考:内閣府「首都直下地震による経済への影響等と対応について」
参考:中央防災会議「【別添資料 2】 首都直下地震の被害想定と対策について (最終報告) ~ 施設等の被害の様相」
生活環境の悪化と環境問題
東京一極集中による人口密集は、都市部の生活環境に深刻な影響を及ぼしています。特に顕著なのがヒートアイランド現象で、東京都心部の気温は過去100年間で約3℃上昇し、これは全国平均の約2倍のペースとなっています。
この温度上昇は、都市部における緑地の減少が大きな要因です。緑地の減少は、気温上昇だけでなく、大気浄化機能の低下や生物多様性の損失にもつながっています。
大気汚染も深刻な問題です。都内の二酸化窒素濃度は環境基準は満たしているものの、交通量の多い地域では依然として高い値を示しています。特に、PM2.5などの微小粒子状物質による健康被害が懸念されており、呼吸器疾患や循環器疾患のリスクが増加しています。
これらの環境問題に対し、東京都は「ゼロエミッション東京戦略」を策定し、2050年までにCO2排出実質ゼロを目指していますが、人口集中による開発圧力が強く、環境対策は後手に回っているのが現状です。
社会的・経済的格差の拡大
東京一極集中は、都市部と地方部の間で深刻な経済格差を生み出しています。特に、IT産業や金融業などの高賃金職種は東京に集中しており、地方では従来型の製造業や小売業が中心となっています。
さらに深刻なのは、都市内部での格差拡大で、この傾向は年々強まっています。
特に、都心部の再開発により、従来の住民が郊外へ追いやられる「ジェントリフィケーション」現象も顕在化しています。こうした生活水準の差が、都市内部の社会的不安定を生む要因にもなっています。
生産性低下と競争力喪失
東京一極集中による過度な集積は、期待される経済効果とは逆に、日本の競争力低下を招いています。2024年版の世界競争力ランキングによると、日本は前年より3位下落して38位となり、3年連続で順位を下げ、過去最低を更新しました。
過度な集積がもたらす「集積の不経済」は、様々な形で企業活動に影響を及ぼしています。東京都心部のオフィス賃料は上がり続け、企業の固定費を押し上げています。また、通勤ラッシュによる時間的損失は、労働生産性の低下を引き起こしています。
一方で、ICT技術の進展とリモートワークの普及により、物理的な集積の重要性は相対的に低下しつつあるのも実情です。コロナ禍を契機に、本社機能の一部移転や分散化を検討・実施する企業も増えてきており、一極集中から脱却する動きも見られ始めています。
交通混雑と通勤ストレスの増加
東京圏における交通混雑は深刻な社会問題となっており、日常的な通勤時の混雑も深刻な状況が続いています。特に、通勤ラッシュ時の鉄道混雑率は、快適な通勤環境からはほど遠い状況です。
こうした通勤時の混雑や、長時間の通勤が、メンタルヘルスに及ぼす影響も看過できません。通勤のストレスは労働の質低下にもつながり、労働生産性にも多大な影響を与えるでしょう。
交通インフラへの負担も深刻です。平日の通勤ラッシュ時には、主要駅での乗降客数が設計容量を大幅に超過し、駅施設や車両の劣化を加速させています。この状況は、インフラの維持管理コストを増大させ、運賃への転嫁や公共投資の増加を招く要因となっています。
住宅価格と生活コストの上昇
都心部では、一部の物件で1億円を超える価格設定が一般化しつつあり、若年層の住宅取得を困難にしています。
賃貸市場においても状況は深刻です。ファミリー向け物件、単身者向けの物件ともに、都心部では家賃が高額であり、住居費負担が増大しています。
生活コストの上昇も顕著です。最低賃金は1,163円と全国で最も高いものの、生活費の高騰がその上昇を上回っています。住宅費を含めた生活コストの上昇が、若年層の実質的な生活水準を圧迫しています。
この状況は、都市内での経済格差をさらに拡大させています。都心部と郊外部との地価価格差は拡大傾向にあり、居住地域による経済的な分断が進んでいます。
一極集中のメリット
東京一極集中にはデメリットも多いですが、日本経済の成長を支える重要な役割を果たしているのも事実です。
一極集中がもたらすメリットは、主に以下が挙げられます。
● 経済活動の効率化
● 労働市場の拡大と優秀な人材確保
● 国際的なビジネス拠点
● 政治・行政機能の集中による統治効率化
● 文化・クリエイティブ産業の発展
このように、東京一極集中は経済活動の効率化、インフラの充実、雇用機会の創出など、多面的な効果をもたらしています。ただし、これらのメリットを最大限に活かしつつ、地域間格差の是正や災害リスクへの対応など、課題解決への取り組みも同時に進めていく必要があります。
経済活動の効率化
東京一極集中は、経済活動の効率化という観点から重要な利点をもたらしています。東京都内には数多くの企業が集中しており、この集積は様々な経済効果を生み出しています。
企業の集積は、取引コストの大幅な削減を実現しています。例えば、企業間の商談や契約締結において、物理的な近接性により移動時間やコストが最小限に抑えられ、意思決定のスピードが向上しています。また、金融機関や専門サービス業者が集中していることで、資金調達や専門的なアドバイスを迅速に受けることが可能です。
さらに、東京を中心とした大規模な市場は、新商品やサービスの実験的な導入を容易にし、企業のイノベーション活動を促進する基盤となっています。
デジタル技術を活用した新しいビジネスモデルの創出も活発に行われており、企業間の密接な情報交換により、技術革新のスピードが加速し、競争力の向上につながっています。
労働市場の拡大と優秀な人材確保
労働市場の拡大とともに教育機関の集積も、労働市場の質を高める重要な要因となっています。特に、理工系や情報系の専門人材の供給が豊富で、企業のイノベーション創出を支える人的資源となっています。
また、若年層を中心に東京での就職を希望する人も多いため、都市部に比べると人材供給はかなり安定していると言えるでしょう。外国人留学生の就職も増加傾向にあり、グローバル人材の確保においても東京は優位性を保っています。
企業の採用活動においても、東京の優位性は明確です。労働市場が大きいため、新卒採用から中途採用まで、幅広い採用チャネルを活用できます。さらに、転職市場も活発で、専門性の高い人材の流動性が確保されています。
国際的なビジネス拠点
東京は、アジア太平洋地域における重要な国際ビジネスハブとして確固たる地位を築いています。
特筆すべきは、フォーチュン・グローバル500に選出される大企業の本社数が世界トップクラスであることです。東京には資本金10億円以上の大企業が約3,000社あり、これは日本全体の約半数に相当します。この企業集積は、さらなる企業誘致を促進する強力な磁力となっています。
また、多国籍企業や金融機関の本社機能が集積していることもあり、グローバルなビジネスチャンスを生み出しやすい場となっています。
知的財産権の保護においても、東京はアジアで最高水準の体制を整えています。これは、研究開発拠点や地域統括本部の設置を検討する外資系企業にとって、重要な判断材料です。さらに、事業継続性の観点から、高度な耐震性能と非常用電源を備えたオフィスビルが多数存在する点も、国際企業から高く評価されています。
さらに、金融センターとしての機能も充実しており、世界の主要な金融機関の多くが東京に拠点を構えています。特に、アジア時間帯における取引の中心地として、グローバルな金融取引の重要な役割を担っています。
政治・行政機能の集中による統治効率化
東京への政治・行政機能の集中は、国家運営の効率性向上に大きく貢献しています。中央省庁の大半が東京都千代田区周辺に集中しており、この地理的近接性により、省庁間の連携や情報共有が迅速に行われています。
特に注目すべきは、政策決定プロセスの効率化です。国会議事堂、各省庁、経済団体の本部が近接して立地していることで、重要政策の立案から実施までの時間が大幅に短縮されています。
また、中央政府と地方自治体との連携も強化されています。各都道府県の東京事務所が霞が関周辺に設置されており、地方の要望や課題を直接中央政府に伝える体制が整っています。この仕組みにより、地域特有の課題に対する迅速な対応が可能となっています。
企業活動の面では、政府との密接なコミュニケーションが可能です。規制改革や産業政策に関する提言を直接行政機関に届けることができ、官民連携の促進と政策の実効性向上につながっています。
文化・クリエイティブ産業の発展
東京は日本のクリエイティブ産業の中心地として、独自の文化的価値を生み出し続けています。特に、渋谷区や港区には、映画、音楽、ファッション関連企業が高度に集積し、新たな文化的価値を創造する拠点となっています。
注目すべきは、文化施設の充実度です。特に、六本木アートトライアングルに代表される文化施設の集積は、アートツーリズムの新たな形を提示しています。
クリエイティブ産業の雇用面でも、東京の優位性は顕著です。特に、デジタルコンテンツ制作やファッションデザイン分野での雇用が増加傾向にあり、若手クリエイターの活躍の場となっています。
このような文化的集積は、新たなビジネスチャンスも生み出しています。クリエイティブ産業と他産業との融合により、従来にない商品やサービスが開発され、日本の産業競争力向上にも寄与しています。
東京一極集中が引き起こす地方への影響
東京一極集中は、様々なデメリットやメリットを引き起こすと同時に、地方にも深刻な影響を及ぼしています。特に若年層の流出が顕著となっており、地方の社会構造や経済基盤に重大な変化をもたらしています。
一極集中により地方が受ける影響としては、以下が挙げられます。
● 地方の人口減少と高齢化の加速
● 地方経済の衰退と産業空洞化
● 地域間格差の拡大
● 地方自治体の財政悪化とサービス低下
このような状況に対し、地方自治体には独自の地域振興策が求められています。デジタル技術を活用した新産業の育成や、地域資源を活かした観光開発など、持続可能な地域づくりへの取り組みが始まっています。
地方の人口減少と高齢化の加速
東京一極集中による地方の人口減少が、年々深刻化しています。多くの自治体で人口流出が拡大し、特に18〜22歳の若年層の流出が顕著となっています。長野県では2024年に人口が約50年ぶりに200万人を割り込むなど、地域社会の存続が危ぶまれる状況です。
地方における高齢化の進行も加速しています。また、出生率の低下はかなり深刻で、子育て世代の減少により、地域の将来的な担い手確保が困難になっています。
地方自治体の財政状況も悪化の一途をたどっています。人口減少に伴う税収減少により、医療や介護などの基本的な行政サービスの維持を困難にしています。
政府は地方創生政策を推進していますが、その効果は限定的です。当初2024年度としていた東京圏と地方の転出入均衡目標は2027年度に先送りされ、地方分散化の実現は依然として課題となっています。
地方経済の衰退と産業空洞化
地方では企業の撤退や新規投資の減少がより進んでおり、産業空洞化が深刻化しています。この産業空洞化の進行は、地域経済の根幹を揺るがす重大な問題となっています。
特に深刻なのが、若年労働力の流出です。特に製造業やIT産業では、必要な技術を持つ人材の確保が課題となり、事業の縮小や撤退を余儀なくされるケースが増加しています。また、若年労働力の不足により、地場産業の継続が困難になるケースもあります。
地域経済への影響も深刻で、地方の小売業販売額は減少し、地元商店街の空き店舗も目立つようになりました。この消費低迷は、地域経済の循環を妨げ、さらなる経済の衰退を招いています。
地域間格差の拡大
東京と地方では賃金や雇用機会の格差が拡大しており、都市部に比べて地方で暮らす人たちの生活しやすさにも影響しています。これは収入面に限ったことではなく、交通や買い物の利便性なども含みます。
都市部では高賃金職種が増える一方で、地方では高賃金職種や安定した雇用機会が少なく、このような格差は若年層の都市部への流出を加速させる要因となっています。
都市部と地方における経済、インフラ、教育など、このような多面的な格差の拡大は、地方からの人口流出をさらに加速させ、地方自治体の財政基盤を弱体化させています。
地方自治体の財政悪化とサービス低下
人口減少地域では税収の減少が著しく、基礎的な行政サービスの維持すら困難な状況に陥っています。
公共インフラの維持管理においても深刻な問題が生じています。建設後50年以上経過した橋梁やトンネルなどは更新時期を迎えていますが、財政難により必要な補修・更新が進んでいません。
また、一部の自治体では財政難により公共施設の統廃合を余儀なくされており、住民の利便性が低下しています。
医療・福祉サービスの提供体制も危機に瀕しており、医療体制の維持が困難になってる地域も少なくありません。また、介護施設の運営も人材不足と財政難により、サービスの質の低下が懸念されています。
財政悪化により地域振興策への投資も縮小傾向にあり、地域活性化のための新規事業の立ち上げが停滞するケースがあります。この状況は、地域経済の活力低下をさらに加速させる要因となっています。
地方自治体による持続可能な地域振興がポイント
一極集中の課題解決には、地方自治体によるSDGsを活用した持続可能な地域振興が重要です。この取り組みは、地域の持続可能性を高める新たな発展モデルとして注目を集めています。
特に注目すべきは、環境・社会・経済の三側面を統合したアプローチです。例えば、北海道下川町では、地域の森林資源を活用した再生可能エネルギー事業により、年間約2億円の地域内経済循環を生み出し、新たな雇用創出にも成功しています。
地域振興には住民の主体的な参加が必要不可欠です。地域住民が自らの意思で地域活性化へ取り組むことで、地域への愛着や帰属意識が高まり、持続可能なコミュニティ形成につながるでしょう。
参考:内閣官房・内閣府 総合サイト「①地域経済循環システム構築の 基本的な考え方と事例 ②企業の地方創生への取り組み を後押しするために」
▶監修・解説:北川哲也氏
補助金や許認可の手続きを専門とする行政書士事務所Link-Up代表 北川哲也氏。
2011年に29歳で開業し7年間個人事務所として中小企業向け行政書士サービスを展開。2018年春に株式会社Link-Upを立ち上げ、士業サービスでカバーしきれないコンサルティングや顧問サービスをスタート。公益社団法人茅ヶ崎青年会議所の2021年度理事長や認定NPO法人NPOサポートちがさき参画など活動多数。