効果的なクマ対策とは?各自治体の行なっている最新の対策と、
自治体向けクマ対策サービスを紹介
はじめに
全国的にクマの出没や被害が相次ぎ、社会的な関心が高まっています。特に山間部から市街地へとクマが侵入する事例が増加し、自治体では緊急の体制整備が求められています。住宅地で人がクマに襲われる被害が急増しており、対応の遅れや情報不足から住民が犠牲となるケースも見受けられます。
国や自治体が一体となって総合的なクマ対策を打ち出すことが重要です。
本記事では、まず国レベルのクマ対策方針を概観し、次に各自治体で実施されている最新事例を紹介します。ドローンやAIを活用した先進的な取り組みから、自治体間の連携強化や緊急銃猟制度の運用まで、自治体が注目すべきポイントを幅広く解説します。
国が掲げるクマ対策の方向性
クマ被害対策パッケージ
全国的なクマ被害の深刻化を受け、国では対応策をまとめたクマ被害対策パッケージを策定しています(参照*1)。このパッケージは平成から令和にかけて段階的に更新され、令和6年2月8日にクマ被害対策方針、同年4月15日に施策パッケージとして公表されました。
具体的には、次の5つから構成され、
1.人の生活圏への出没防止
2.出没時の緊急対応
3.クマ類の個体群管理の強化
4.人材育成・確保
5.クマ類の生息環境の保全・整備
地域の実情に合わせたパトロール強化やわなの設置、居住地近辺でクマが見られた際の連絡体制の整備などが盛り込まれています。さらに、関係閣僚会議や省庁連絡会議が開催され、国全体で自治体を支援しながら、予算確保と施策の実施方法を提案・検討する場が設けられています。
特筆すべきは、政府が公共の安全を守るための狩猟免許保持者の育成や追加人材の雇用などの予算を確保する方針を示している点です(参照*2)。
こうした人的資源強化は、地区ごとに専門スタッフを配置し、緊急事態にはすぐに現場対応が取れるようにする目的があります。さらに、鳥獣保護管理に関わる実務研究や普及活動、自治体向けの事務連絡の強化なども含まれており、地元の自治体担当者が必要とする情報をいち早く入手できる体制づくりが重視されています。
国としては、各自治体が独自の工夫を加えながら対策を進められるよう、支援策を広く情報提供する姿勢です。
最新の統計と方針
クマ被害の拡大を裏付けるデータとして、自民党が2025年10月31日に鳥獣被害対策特別委員会を開き、政府への緊急申し入れを行う方針を決めたとの報道があります(参照*3)。
その席で環境省が示した推計によると、ヒグマは1990年の約5300頭から2022年には約1万2200頭へと増加し、ツキノワグマは約4万2000頭以上に達しています。今期の出没件数は令和5年度8月時点で昨年度比約2500件増の1万6213件となり、10月30日現在の死者は過去最多の12人(岩手県5人、秋田県3人、北海道2人、宮城県1人、長野県1人)に及びます。特に東北や北海道では被害が深刻で、広域的に発生しています。
国としてはこの緊急性を踏まえ、クマ被害対策等に関する関係閣僚会議を開き、具体策を詰めています(参照*2)。
対策方針では狩猟免許を持つ人材の育成だけでなく、緊急事態時の予算措置などを自治体が迅速に利用できる仕組みが提示されています。また、クマによる人身被害や農林業被害に関する補助制度の見直しも検討されており、地域によっては独自の追加補助や情報連携を推進する取り組みが始まっています。
短期的には被害の抑制、長期的には里山環境の管理や野生動物との共存を模索する方針が重視されています。
自治体が取り組む最新事例
ドローンとAIの活用
近年、クマ対策として先進技術を活用する自治体が増えています。秋田県五城目町の株式会社スリーアイバード(代表取締役 伊藤 驍)は、ドローンとAI解析を組み合わせたクマ早期発見・追跡・位置情報共有システムを開発し、2025年11月21日から寄付や協賛の募集を開始すると発表しています(参照*4)。
このシステムは赤外線カメラを搭載したドローンで上空からクマを捉え、AIが映像を解析する仕組みです。解析結果は即時に自治体やハンター、住民代表などに共有され、夜間や山間部でクマの動向を素早く把握できるメリットがあります。実証訓練や地域啓発活動も進められており、現場判断を支える安全な仕組みを秋田から全国へ広げることを目指しています。
加えて、FMラジオ局J-WAVE iが提供する自治体向けソリューション「Groupair Plus」では、住民や専門家からのクマ出没情報を一元管理し、適切な地域へ素早く情報を配信する仕組みが注目されています(参照*5)。
自治体全体で情報を共有することで、クマ目撃情報の拡散にタイムラグが生じにくく、効果的な誘導や警告が可能になります。こうしたシステムにより、複数地区にまたがるクマの移動ルートを追跡しやすくなることも期待されています。
自治体連携と緊急銃猟制度
クマは広範囲を移動する特性があるため、隣接する自治体と連携して対策に取り組む動きが広がっています。
例えば、山間部をまたいでクマが移動する可能性が高い自治体では、同じ情報基盤を導入し、クマの出没状況を共有することで被害の拡大を抑えようとしています。こうした広域連携は、ハンターや住民の安全確保にもつながります。
2025年9月1日に施行された緊急銃猟制度は、こうした自治体連携の重要性を踏まえて整備された側面があります(参照*6)。従来、市街地で銃器を使用する際には都道府県知事の許可が必要でしたが、現在は市区町村長の判断で迅速に駆除が可能となりました。
これにより、住民に切迫した危険がある場合に即座に対応できるメリットがあります。ただし、この制度を適正に運用するためには、自治体同士の情報連携だけでなく、警察や防災部門との連絡体制の確立が重要です。場合によっては複数の自治体や国の機関との協調が必要となるため、役割分担を明確にする指針づくりが進められています。
住民への啓発と教育
クマ対策を効果的に進めるためには、住民に対する啓発と教育の充実も不可欠です。富山市では、独自のパンフレットや回覧板などを活用し、クマの行動範囲や出没しやすい季節を周知する動きが広がっています。
特に秋口から冬眠前のクマは積極的に食料を探すため、人里近くに出没しやすい傾向が多くの調査で指摘されています(参照*7)。こうした行動特性を住民が理解することで、家庭ゴミの出し方や夜間の外出時、ペットの散歩などで安全確保に気をつけやすくなります。
最近では自治体の広報誌だけでなく、アプリやSNSを活用したリアルタイムの情報配信も広がっています。出没情報が即座に届くことは、住民が危険を回避する上で有効です。さらに、初期対応やクマと遭遇した際の具体的な対処法を学ぶ研修や、地域の子ども向け学習プログラムを行う自治体も増えています。
こうした取り組みが住民の意識向上につながり、自治体全体の被害防止に寄与すると期待されています。
クマ対策を強化するためのDXと情報共有
AI通知と監視カメラ
人手不足や広大な領域での監視が求められるクマ対策において、DX(デジタルトランスフォーメーション)技術の活用が注目されています。
エゾウィン株式会社が提供する野生鳥獣対策DXソリューション「クマハブ」では、北海道標津町のヒグマ出没時にハンターの安全確保と迅速な駆除支援が実施されました(参照*8)。
AIを活用した通知システムは、クマが道路や家屋周辺に近づいたタイミングで自動アラートを発する仕組みで、関係者が早期に動ける点が評価されています。加えて、複数の自治体が導入を検討している防犯・監視カメラ技術は、映像を記録するだけでなく、リアルタイムで異常を検知して担当部署へ知らせる機能を持っています(参照*9)。
AIと監視カメラを組み合わせたシステムが各地で運用されることで、人員配置の限界を補うことができます。焼却場や農地周辺などクマが寄りやすい場所にカメラを設置しておけば、遠隔地からでも状況を把握でき、必要に応じて緊急対応を呼びかけることが可能です。
ハンター・警察・住民の連携
クマが高速道路や市街地など予想外の場所に侵入する事例も増えており、適切な連携体制を構築するにはハンター、警察、住民それぞれと自治体の情報共有が重要です。
緊急銃猟が必要な場面では警察の指示や安全確保が求められるため、自治体主導でのハンター投入だけでなく、周辺住民の避難誘導まで視野に入れた包括的な仕組みが欠かせません。特に子どもや高齢者は移動に時間がかかるため、あらかじめ避難ルートを定めるなどの手配が必要とされています。
一方、自治体向けのクマ対策AIソリューションをモニター募集する動きも見られ、既存のパトロールやわな設置に加え、デジタル技術で高精度な位置情報を提供する事例が増えています(参照*10)。
ハンターが現場に到着する前にクマの居場所を把握できれば、発砲リスクを減らし、周囲の安全を担保しやすくなります。さらに、一部自治体では警報音を発する装置を市街地に配備し、幹線道路沿いでクマを追い払う試みも行われています。技術と人的連携を組み合わせることで、クマの脅威を最小化する方向へと進んでいます。
自治体職員が注目すべき支援策
保険制度と費用補助
自治体がクマ対策を推進するうえで意外と見落とせないのが、駆除や追い払いの際に起こり得る物損・人的トラブルへの対応です。2025年7月16日、東京海上日動火災保険がクマ駆除時の流れ弾による建物への損害などを補償する自治体向け保険の提供を開始することを公表しました(参照*11)。
緊急銃猟が県知事ではなく市町村長の判断で可能になったことで、市街地や人口密集地で発砲が行われる機会が増える可能性があります。そのリスクを補償する制度は、自治体にとって備えておきたい選択肢です。加えて、環境省や農林水産省の補助事業を活用して、わな設置や監視カメラ導入の費用負担を軽減する事例も増えています。財政的に厳しい自治体にとって、こうした補助金や保険制度をうまく組み合わせることで、対策の幅を広げることができます。
特に山間地域では人口が少なく、税収も限られるなかでのクマ対策が必要とされます。助成制度の情報をいち早くキャッチし、国や保険会社を巻き込んだ包括的な費用補助スキームを構築することが、効果的なクマ対策を実現するポイントです。
専門家派遣と連携強化
自治体職員だけでクマ対策を完遂するには、やはり専門性や経験が不足しがちです。そこで活用したいのが、鳥獣プロデータバンクなどを通じて自治体や団体が専門家を紹介してもらう仕組みです(参照*12)。
この仕組みでは、鳥獣保護管理の知識や経験を持つ技術者を探すことができ、地域に応じた対策指導を受けることができます。特にクマの生態に詳しい専門家などが自治体へ派遣されれば、わなやパトロール経路の選定、緊急時の避難誘導など、現場に即したアドバイスを得やすくなります。
また、秋田県などではクマの被害が急増し、死者を含む人的被害も50人を超える厳しい状況となっています。こうした中、秋田県は防衛省へ自衛隊の支援を要請し、箱わなの運搬などの後方業務を中心に負担を軽減する動きも見られます(参照*13)。
支援要請を受けた自衛隊が直接駆除を行うことは想定されていませんが、後方支援により自治体職員やハンターらが本来の対策業務に集中できるメリットがあります。最終的には、地元の猟友会や警察、行政が一丸となって取り組む必要があるため、専門家や支援部隊との緊密な連携が課題となっています。
おわりに
クマ対策には多面的な方策が求められます。国の施策パッケージや自治体の創意工夫、さらには先端技術の導入を組み合わせることで、クマ被害を最小限に抑える体制づくりが進んでいます。連携やDX技術の活用にとどまらず、住民一人ひとりがクマの行動を理解し、自ら安全を守る行動を取ることも重要です。特に自治体職員の方々にとっては、支援制度の拡充や保険、専門家派遣などの動向を見極めながら、地域の実情に合った対策を選び取ることが求められます。
クマとの共存を前提としつつ、被害を抑制するための総合的なアプローチを考える際に、本稿が参考になれば幸いです。
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参照
(*1) 野生鳥獣の保護及び管理[環境省]
(*2) クマ被害対策パッケージ(概要)
(*3) 農政 – クマ対策で機動隊派遣 自治体への財政支援など政府に申し入れ 自民PT|JAcom 農業協同組合新聞
(*5) プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES – 【クマ対策】自治体向け地域コミュニケーションアプリ「Groupair Plus」が熊問題の「ソフト対策」を提案
(*6) 緊急銃猟制度[環境省]
(*7) 富山市公式ウェブサイト – クマ対策の基本|富山市公式ウェブサイト
(*8) プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES – 北海道・標津町(しべつ)のハンターと自治体職員が、ヒグマ対策DX「クマハブ」を活用し、迅速な対応を実現!
(*9) 遠隔監視・リアルタイム通信の防犯・監視カメラで、自治体業務はどう変わるか(事業者インタビュー)|まちの掲示板|一般社団法人 自治体DX推進協議会
(*10) プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES – クマ対策AI通知ソリューション モニター募集キャンペーン開始
(*11) 47NEWS – クマ駆除の流れ弾被害を補償 東京海上、自治体向け保険で提供
(*12) 鳥獣プロデータバンク
