スマートモビリティ技術はどこまで進化?
自治体などの最新情報を紹介
はじめに
スマートモビリティは、日本を含む世界各国で技術革新が進み、移動手段の最適化や高齢化社会への対応、新たなビジネス創出など、さまざまな期待が寄せられており、特に自治体を中心に、公共サービスの維持や地域社会の持続的な発展に寄与する可能性が高まっています。
本記事では、スマートモビリティと自治体の関係性に着目し、その定義から導入のポイントまでを横断的に解説します。
スマートモビリティと自治体の現状
スマートモビリティの定義
スマートモビリティは、地域の移動をより便利で効率的にするために、先端技術や通信基盤を活用して交通を最適化する考え方です。
具体的には
・自動運転
・配車システム
・ライドシェア
など、従来の公共交通ではカバーしきれない地域のニーズを補うソリューションが含まれます。
これらは、単に移動を効率化する手段ではなく、高齢化や人口減少といった社会構造の変化に適応した持続可能な交通サービスの基盤として位置づけられ、近年はAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を組み合わせることで、交通状況をリアルタイムで把握し、需要に応じた運行を可能にするプロジェクトが増加しています。
また、スマートモビリティの概念には、移動手段の高度化だけでなく、地域経済や組織運営に新たな価値を与える視点も含まれます。例えば、公共交通の運行データと連動した観光情報の配信や、乗り合いサービスと地元商店街の連携などが挙げられます。これにより、利用者の利便性向上と地域経済の活性化が期待されています。
日本の自治体への調査では、
・AV(自動運転車)
・DRT(デマンドレスポンス交通)
・ライドシェア
・MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)
の4つの革新が特に注目されており、東京・大阪・名古屋を除く65自治体で67件のプロジェクトが進行している事例が報告されています。これらのプロジェクトでは、運転手不足や収益性の悪化、交通網の縮小といった根本課題が語られています(参照*1)。
自治体とスマートモビリティの重要性
交通インフラの維持には、自治体の支援が重要です。特に中山間地域のような人口減少地帯では、従来のバスや鉄道の運行が採算面で難しくなり、高齢者や免許を持たない人々の移動手段確保が大きな課題となっており、国や自治体レベルでは、内閣府や総務省、経済産業省、国土交通省が合同で審査会を設置し、地域のスマートシティ化に向けた提案公募や事業審査を一体的に進めています(参照*2)。
自治体がスマートモビリティを導入する際には、既存インフラの活用だけでなく、地域の交通ニーズやデータ資産の現状を正確に把握することが求められます。さらに、都市OSを整備して交通や行政サービスのデータを連携させ、複数のサービスを結び付ける仕組みを構築する必要があります。
こうした取り組みには民間や大学との連携が不可欠であり、補助事業の活用や横断的な連携策の検討も進められています(参照*3)。
最新技術動向と活用事例
日本における技術開発の動き
日本では、スマートモビリティの実践に向けた技術開発や社会実装が加速しています。自治体・企業・スタートアップが協力し、観光地や都市部だけでなく、地方部の移動課題解決にも取り組んでいます。
例えば、東京都の「Be Smart Tokyo MATCHING PROGRAM」では、ウェルビーイングやモビリティ、カーボンニュートラルなどをテーマに、自治体と企業・スタートアップが協業し、社会実装を目指しています。採択されたプロジェクトには最大300万円の経費サポートや専任コンサルタントの伴走支援が用意されており、足立区ではAI分析によるバス時刻表の最適化やローカルMaaSプラットフォームによるタクシー補助の自動精算など、具体的な実証事例が進行中です(参照*4)(参照*5)。
自動車メーカーによる地域公共交通との連携も進んでいます。トヨタが展開する「my route」は、地域情報発信や複数の移動手段を組み合わせたルート検索、デジタルチケットの購入などを一括で行えるサービスです。
愛知・富山・福岡・佐賀などの自治体と連携し、マルチモーダル移動や観光客の周遊計画、地元商業施設との連携など、多様な利用シーンで活用されています(参照*6)。
海外の先進事例
海外でも、持続可能な交通サービスの実現に向けてスマートモビリティの導入が進んでいます。アメリカでは、連邦政府がスマートシティとコミュニティ法案を提出し、自治体がスマートシティ技術を導入しやすくするための支援策を強化しています。
例えば、ワシントン州レドモンド市では、交通の流れと管理の改善のためにスマート信号や歩行者検知システムを導入し、ベルビュー市では自動運転車や電気自動車、データ管理を計画するスマートモビリティ計画が進行中です(参照*7)。
ヨーロッパでは、
・英国のロンドンでロンドン交通局における公共交通データのオープン化による新サービスの開発
・オーストリアのリンツで自家用車から公共交通やカープールへの転換
・フィンランドのタンペレで次世代トラム輸送コンセプト開発を目的に、行政、企業や市民などのステークホルダーの連携に取り組むリビングラボ
の構築
など、複数のプロジェクトが報告されています(参照*8)。
アジアでは、ジャカルタ市が「JAKI」アプリを活用し、交通情報や災害情報、行政サービスを一元化して市民に提供するなど、デジタル化と住民サービスの向上を両立させる事例が増えています(参照*9)。
これらの海外事例からは、法整備や運転者の雇用転換、インフラ改修など、多様な調整が不可欠であることが分かります。
導入に向けた自治体の取り組みポイント
社会実装の課題
スマートモビリティの社会実装には、技術的な完成度だけでなく、各地域の実情に合わせた運用設計が求められます。特に人口減少地域では、潜在的な移動需要をどのように見える化し、需要と供給の不均衡を最小化するかが重要なポイントです。
データを活用せずに制度やサービスを導入すると、利用率が想定より低くなり、財政負担だけが増えるリスクがあります。
デジタル庁のモビリティワーキンググループでは、まず潜在需要を分析するステップ1、その後に小規模実証や周知を行うステップ2、最終的に大規模なデータを取り込んで地域エコシステムを構築するステップ3という段階的なアプローチが推奨されています(参照*10)。
このプロセスを踏むことで、制度的・技術的リスクを抑えつつサービスを成長させることが可能です。自治体は地域住民の生活スタイルや交通習慣を事前によく把握し、導入時の説明や合意形成に十分な時間をかけることが求められます。
データと都市OS
スマートモビリティを円滑に運用するためには、複数システムの連携を可能にする都市OSの整備が不可欠です。都市OSは、行政や民間が管理する交通データや人口動態、観光施設の稼働状況などの情報を一元的に集約し、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)を通じて共有するための基盤です。
運行管理システムから得たリアルタイムの交通量データを公共交通機関のダイヤや地域イベント情報と結び付けることで、利用者ごとに最適な移動手段を提示できるようになります。
都市OSの導入は、便利なサービス提供だけでなく、自治体の政策決定にもデータを活用し、交通インフラの有効活用や地域経済の振興に役立てることを目的としています。そのため、従来バラバラに管理されてきたデータを整理し、互換性のあるフォーマットで集約する工程が必要です。また、個人情報保護やサイバーセキュリティの強化も重要な課題となるため、技術者や法務専門家と協力しながら、長期的な視点で運用体制を築くことが求められます。
総務省や経済産業省、国土交通省などがスマートシティ関連の仕組みを合同で審査・支援している背景には、こうしたデータ基盤づくりの推進があります(参照*11)。
産官学連携
スマートモビリティを実現するためには、自治体や国の政策支援だけでなく、民間企業や大学など学術機関との連携が大きな推進力となります。研究機関による基礎技術開発、企業による事業化のノウハウ、行政が持つ公共サービスの経験を結び付けることで、包括的なモビリティサービスの構築が可能となります。
例えば、名古屋大学ではカーボンニュートラルをテーマとした次世代移動技術の研究や、自動車メーカーと協働したオープンイノベーションの事例が紹介されています(参照*12)。このような取り組みは、自治体が単独で進めるよりも、技術開発と社会実装を結び付けるうえで大きな相乗効果を生み出します。
海外では、連邦レベルでの法整備や研究開発投資への補助金、技術者育成プログラムが整備されている事例も多く、学術界と企業、自治体が一体となった官民連携プラットフォームが用意されています(参照*13)。日本国内でも国立大学などが研究チームを立ち上げ、自治体の実地データを活用した社会実装実験が広がっています(参照*14)。
おわりに
スマートモビリティの進展によって、地域社会が抱える移動や経済活性の課題解決への期待が高まっています。各自治体が積極的に導入を進め、民間や学術機関と協力することで、一人ひとりの暮らしやすさを高めるだけでなく、新たなサービスやビジネスの創出にもつながります。限られた地域資源を持続的に活用するためにも、スマートモビリティの役割は今後ますます大きくなります。
今後は、国際的な動向や先進技術の開発を積極的に取り入れつつ、地域特性に合ったサービスを設計していく必要があります。自治体を中心に、交通や環境、観光、産業など多角的な視点を組み合わせ、スマートモビリティの導入をきっかけとした地域創生を実現することが求められます。市役所や公共機関の担当者は、今後の動向をしっかりと把握し、専門家や関係組織と連携しながら、未来の交通インフラを形にしていくことがポイントです。
【出展社・来場者募集中!】
全国から自治体関係者が来場する日本最大の展示会
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参照
(*3) デジタル庁 – モビリティワーキンググループ(第9回)|デジタル庁
(*6) プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES – トヨタのMaaSアプリ “my route” が「自治体・公共Week2024」の「第4回スマートシティ推進 EXPO」に出展
(*7) U.S. Congresswoman Suzan DelBene – DelBene, Clarke Introduce Bill to Boost Smart City Tech
(*8)欧州のICT技術による交通の施策や実態の特徴等を把握(国土交通省)
(*9) Smart Cities with AI for Flooding Management A Case Study of Jakarta
(*10) デジタル庁 – モビリティワーキンググループ(第8回)|デジタル庁
(*11) スマートシティリファレンスアーキテクチャ
(*12) 名古屋大学モビリティ社会研究所 (GREMO) – 【終了】第4回GREMOシンポジウム「産学連携で加速する名大モビリティGX・DX」
(*13) Smart City Challenge
(*14) 柏の葉スマートシティ
