アニメ×町おこし。聖地巡礼や観光誘致につながる取り組みとは?

日本国内だけでなく、海外からも熱い人気を集めている日本のアニメ。
アニメのモデル地や、アニメに関連している地は、ファンにとっていつかは訪れてみたい場所として挙げられることが多いですよね。

 

今回の記事では、日本で人気のアニメ聖地を紹介しながら、アニメが地域にもたらす経済効果や各地の成功例などをまとめました。



1.日本で人気のアニメの聖地

日本各地にあるアニメの聖地と呼ばれる場所を紹介します。
 


1-1.ゆるキャン△

女子高校生の各務原なでしこは、一人キャンプ好きの志摩リンと出会い、キャンプの面白さを体感。その出会いをきっかけに高校の野外活動サークルに入部し、部員たちとキャンプを楽しみます。山梨県の身延町を舞台にしたアウトドア好きの女の子たちの物語です。

 

山梨県身延町

聖地として上記の市が挙げられています。作中内で山梨県内のキャンプ場をめぐるので、各々のキャンプ場も聖地として認識されています。
 


1-2.心が叫びたがってるんだ。

自分の発言が引き金となって両親が離婚してしまった主人公の少女・順は、突然現れた妖精に人を傷つけることがないようにおしゃべりを封印されてしまいます。高校2年生のある日、クラスメイトとミュージカルに挑戦することになって……という青春物語です。

 

埼玉県秩父市

埼玉県横瀬町

 

上記2市が聖地となっています。
 


1-3.君の名は。

主人公の瀧が育った東京新宿区とヒロインの三葉が育った岐阜県の飛騨がそれぞれ聖地になっています。それぞれの体が時々入れ替わる新海誠監督作品のファンタジーアニメ映画。

 

岐阜県飛騨市

東京都新宿区

 

上記の2市が聖地と言われていますが、作中内に登場する糸守湖のモデルは長野県の諏訪湖と言われています。また、主人公とヒロインの育った環境が別々ということもあって、聖地が分かれています。作中で最も有名な聖地である四ツ谷の須賀神社前階段も人気スポットになっています。
 


1-4.らき☆すた

聖地巡礼ブームの火付け役ともいわれる「らき☆すた」。陵桜学園高等学校に通うオタクな女子高生・泉こなたら4人の女子高生が過ごすスクールライフを描いた物語です。

 

埼玉県久喜市

 

漫画家の原作者・美水かがみの出身地である埼玉県が舞台となっています。関東最古の大社と言われている久喜市の鷲宮神社。聖地として知られるようになってから初詣の参拝客が一気に増加しました。

 


1-5.ゲゲゲの鬼太郎

街中で科学では説明がつかないような不可解な出来事が起こり、13歳の少女・まなは、半信半疑で妖怪ポストに手紙を出します。そうするとゲゲゲの鬼太郎がやってきて、鬼太郎は妖怪の仕業と確信し、人間の世界に現れる妖怪を退治していく……という物語。

 

鳥取県境港市

東京都調布市

 

上記の2市が舞台となっています。初アニメから50年以上も経つアニメの王道ともいえます。
 



2.アニメがもたらす経済効果の一例

日本のアニメは、国内初のアニメ作品が作られてから数えると2017年で100周年を迎えましたが、ある一定の地域を舞台に描かれるアニメの経済効果は目を見張るものがあります。

 

株式会社日本政策投資銀行の、埼玉県久喜市商工会鷲宮支所の資料の数値を元にした試算によると、“試算内容は様々な過程に基づいているために留意が必要”と前置きがありますが、「らき☆すた」についてテレビ放送以来の10年間での経済波及効果は約31億円、誘発された雇用者数は約316名であるとしています。

 

アニメファンによる聖地巡礼によってもたらされる経済効果は、数字はもちろんのこと地域のファンという数値に示せない財産も生んでいます。
 



3.観光誘致などにつながっている成功例とその理由

コンテンツツーリズムやフィルムツーリズムの一種とされるアニメの聖地巡礼。

 

作品のファンは、作品に共感を抱いたり、感動したりといった経験から、作品の世界観を実際に体験したいと感じることが多いようです。ここでは、まさにそのような思いを持ったファンに来てもらって楽しんでもらうための取組を行い、観光誘致に成功している事例を紹介します。
 


3-1.アウトドアブームが火付け役「ゆるキャン△」

なかなか気軽に外出することがはばかられるようになった状況で、密を避けて楽しめるアウトドアブームがきています。

2020年9月~11月のキャンプ場検索・予約サービス『なっぷ』の新規会員数は、前年比200%超えをしており、いかにキャンプ需要があるかが分かります。

 

この状況が後押しとなって、

 

●  ショートアニメ『へやキャン△』の中で主人公のなでしこたちが体験した『梨っ子スタンプラリー』のモデル地を巡るデジタルスタンプラリー

●  山梨県峡南地域5町(市川三郷町、富士川町、早川町、身延町、南部町)にて開催されていたオリジナルボイスドラマが聴ける地域イベント
『梨っ子 町めぐり』の期間限定再開催

●  身延どんぶり街道とのコラボ企画によるグルメイベント「ゆる~く食べ歩きチャレンジ」

●  市川三郷町内の飲食店・商店で飲食・お買い物をすると非売品缶バッチが貰える市川三郷町「へやキャン△ 缶バッチプレゼントキャンペーン」

●  県内のグリーン・ゾーン認証を受けた宿泊施設のご利用でもらえるノベルティプレゼント企画

 

など「ゆるキャン△」ファンにとってはたまらないコンテンツを通して、山梨県内各地で「食べる・見る・体験する」を満喫する取組が行われています。

 

参加しなければもらえないグッズがあるのは、ファンの収集心をくすぐりますよね。
 


3-2.印象的な映像美「君の名は。」

2016年8月に上映された映画「君の名は。」では、劇中の象徴的な場面で幾度となく岐阜県飛騨市が描かれています。

 

行政主導で行われた取り組みは、映画で使用された飛騨市内の場所の情報を一覧できる聖地マップの作成と配布、飛騨市の公式SNSアカウントを中心に広報活動など。また、映画のワンシーンで使われた飛騨市図書館への入場と撮影に関するルールを定め、旅行者のアニメ追体験を行うことを容易にしました。他にも、バス停のシーンを作品の情景に近づけるために一度撤去した看板と時刻表を再度設置したりといった取り組みも。

 

行政が積極的に聖地巡礼をする際の環境を整えたことが成功要因の1つ大きな点として挙げられますが、劇中の世界観に浸れるようにするため、あまり過剰な演出をしすぎないというのも大事です。
 


3-3.作中アニメを現実化「花咲くいろは」

2011年4月~9月テレビ放送の「花咲くいろは」の舞台となった温泉街「湯乃鷺温泉(ゆのさきおんせん)」のモデル聖地になっている温泉街が石川県金沢市の湯涌温泉。金沢市の東南部に位置し、市内の観光地「兼六園」から車で20分のところにあります。

 

作中には、現実では存在しない架空のお祭り「ぼんぼり祭り」と言うものが出てくるのですが、湯涌温泉観光協会の発案によって、現実世界でも実際に「湯涌ぼんぼり祭り」が実現しました。

 

作品放送年の2011年から毎年10月に開催されていて、初年度の来訪者数は約5,000人でしたが2016年には3倍の約15,000人ほどになっています。(コロナ禍の状況を鑑みて、残念ながら2021年度は中止のようです。)

 

成功要因としては、作品にちなんだイベントを開催するにあたり、普遍性があって毎年開催される神事として祭りを立ち上げたことや、お祭り初年度から対外広報や開催準備などでアニメ制作会社側の手厚い協力を得られたこと、温泉街自体に地域資源の魅力があったことなどが挙げられます。

 

アニメの中と現実の世界が融合したような幻想的な空間ができたことでファンは自分が大好きなアニメの中の世界とリンクしている感覚に魅了されます。また、単発のお祭りではなく、普遍的で長く続くお祭りとして立ち上げることにより持続可能なお祭りになります。



4.まとめ

アニメ×町おこしにおいて、以下の3つを意識するとファンも訪れやすくなるのではないでしょうか?

 

● 地場の環境を整備することに尽力する

● 巡礼マップなどを作り、他の地域の観光資源も掛け合わせた魅力の発見をして回遊性を高めること

● 単発ではなく持続可能な取組をすることで、何度も訪れてもらえればアニメのファンであり、地域のファンにもなってもらえるということ

 

また、あまりに勝手に自治体が主導でアニメありきの地域施策をしてしまうと、地域住民からの反感を買ってしまう場合もありますので、そのあたりも考慮しておきたいポイントです。



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