デジタル田園都市国家構想とは?基本方針や地域が目指す姿について

デジタル田園都市国家構想の「概念や背景、目的、取り組み方針などの基礎知識を知りたい」「利用できる交付金を知りたい」「取り組むにあたっての条件や活用事例を知りたい」と思ってはいませんか。

 

本記事では、地方自治体の関係者に向けて、デジタル田園都市国家構想が生まれた背景や内閣府が求めていること、詳細な施策内容を網羅的にまとめました。最後まで読むことで、デジタル田園都市国家構想が地域格差を縮めるチャンスと捉えられ、自地域において何をすべきか考えるきっかけになるでしょう。


▶監修・解説:並木将央氏
日本の成熟社会の専門家、経営コンサルタント、株式会社ロードフロンティア代表取締役社長 並木将央氏。
2014The Japan Times「次世代のアジアの経営者100人 2014」に選出。企業セミナーや大学での講演などを幅広く行う。
●監修者の詳細な経歴はこちら



デジタル田園都市国家構想とは?

デジタル田園都市国家構想は、産業が空洞化した地方都市をデジタル技術で活性化させる国家構想です。

 

2021年10月8日に岸田首相が所信表明演説で表明し、2022年6月7日に閣議決定されました。

 

官民協働で地方の成長と利益分配の好循環を目的にしており、具体的にはテレワークや遠隔教育・遠隔医療などのデジタル技術を用いて地方と都会の差をなくし、「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」を目指しています。

 

2021年補正予算と2022年当初予算を合わせて約5.7兆円を投じることが予定されており、注目が集まっている都市構想の一つです。

 


構想の背景

岸田内閣がデジタル田園都市国家構想を打ち出した背景には、都会と地方都市の格差が存在していることです。この地域間格差は戦後復興や高度経済成長などの日本経済の歴史と深くかかわっており、現代でも続く根深い社会問題です。

 

また、新型コロナの影響で観光産業を中心に据える地方都市に打撃を受けました。これまで抱えてきた高齢化や過疎化の問題に加えて観光客の減少と、さらに状況を悪化させたのです。しかし、新型コロナがもたらした影響は悪いものだけではありません。

 

民間企業がテレワークをはじめ、働き方や国民の意識・行動に変化が出てきました。これらを背景にデジタルの力で、地方の個性を活かしながら社会課題の解決と魅力の向上させようと、デジタル田園都市国家構想が生まれたのです。

 

まず前提として高度経済成長期から続く都会と地方の人口偏りはどのようになっているのでしょうか。
東京圏の状況について詳しく解説します。

 

1.東京圏への転入超過

「地方から東京圏への転入者」を「東京圏から地方への転出者」で差し引いたとき、東京圏は転入者が多くなります(転入超過といいます)。また、2011年の転入超過は約6万人だったのに対し、2019年は約14万人と増え、東京圏の人口が年々増え続けているのです。

 

なお、以下の図によると、東京圏へ転入する年齢層は10代後半から20代の若年層が占めており、地方の若者が東京圏へ移動していることがわかります。
 

2020年は新型コロナにより転入超過数が約10万人と減少傾向にありますが、いまだに東京圏は転入超過で人口増加傾向にあります。

 

2.地方自治体が抱える「地域格差」問題

東京圏に人口が流れる根底には、「地方には仕事が少なく、仕事があっても待遇が良くないこと」や「希望する進学先がない」「公共交通機関や日常生活が不便」「医療・福祉施設が少ない」「子育て環境が良くない」など、多くの課題が存在しています。

 

地方自治体でも精力的に地方創生に取り組んでいますが、いまだに雇用・教育・交通・医療福祉・娯楽などの多くの問題は解決できていません。

 


構想の意義・目的

デジタルの力で、地方の個性を活かしながら社会課題の解決と魅力の向上を図ることであり、地方に都市の利便性を、都市に地方の豊かさを実現することです。

 

例えば、先端技術を用いて、地方で働きながらも東京圏にしかない教育を受けられるようにするなど様々なメリットがあります。ただ、いくら便利になったとしても交通の利便性を高めることは必要不可欠です。そのため、デジタル化とともに交通インフラ整備も行う計画となっています。

 

また、デジタル田園都市国家構想のもう1つの目的として、自然災害や感染症の際の被害分散、食料やエネルギーの供給源として地方を維持・発展させようとしています。
 



デジタル田園都市国家構想の4つの取り組み方針

デジタル田園都市国家構想の取り組みでは4つの方針が示されています。

 

4つの方針は次のとおりです。
 

1.デジタルの力を活用した地方の社会課題解決

2.ハード・ソフトのデジタル基盤整備

3.デジタル人材の育成・確保

4.誰もがデジタル化の恩恵を受けるための取組

 

内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局を参考に、上記4つの取り組みについて詳しく解説します。

参考:内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局

 


1.デジタルの力を活用した地方の社会課題解決

政府は、2024年度末までに地方自治体1,000団体がデジタル実装とサテライトオフィスの設置を目標としています。また、地方の地域やまちづくりを推進する経営人材を国内100地域に配置する予定です。地方の社会課題であった仕事・教育・子育て・交通の課題に対しては、以下4つの柱を用意しています。


4つの柱

地方に仕事をつくる

主な施策

●  スタートアップ・エコシステムの確立
●  中小・中堅企業DX
●  スマート農林水産業・食品産業
●  観光DX
●  地方大学を核としたイノベーション創出


4つの柱

人の流れをつくる

主な施策

● 「転職なき移住」の推進など地方への人材の還流
●  関係人口の創出・拡大、二地域居住等の推進
●  地方大学・高校の魅力向上
●  女性に選ばれる地域づくり


4つの柱

結婚・出産・子育ての希望をかなえる

主な施策

●  デジタル技術を活用した子育て支援等の推進
●  結婚・出産・子育てへの支援
●  仕事と子育て・介護が両立できる環境整備


4つの柱

魅力的な地域をつくる

主な施策

●  質の高い教育、医療サービスの提供
●  公共交通・物流・インフラ分野のDXによる地域活性化
●  まちづくりDX
●  地域資源を活かした個性あふれる地域づくり
●  防災・減災、国土強靱化等による安心・安全な地域づくり
●  地域コミュニティ機能の維持・強化


「地方に仕事をつくる」では、スタートアップ企業に向けて投資や支援、地方の中小・中堅企業にはDX支援、そして農業や観光産業には効率化・生産性向上の推進とマーケティング支援を行います。

 

また、イノベーション創出を目指して大学や高専などの教育機関とも連携を図り、自らの力で稼ぐ地域をつくる計画です。

 

「人の流れをつくる」では、テレワークで働く人材を地方へ呼び込んだり地方にサテライトキャンパスを設置したりして、地方でも東京圏と同等の仕事や学習ができる環境をつくります。

 

「結婚・出産・子育ての希望をかなえる」では、新生活への経済的支援、ライフステージに応じた総合的な少子化対策を推進予定で、育児や介護休暇の取得促進を目指しています。

 

「魅力的な地域をつくる」では、児童生徒1人1台デジタル端末を与えるGIGAスクール、遠隔教育や遠隔医療を活用して質の高い教育や医療を提供。

 

交通インフラに関しては、IT技術を活用してマイカー以外の移動をシームレスにつなぐ概念「MaaS(マース:Mobility as a service)」の推進やドローンを活用した物流サービスの改革などを実現させることで、これまでの不便を取り除くことを目標にしています。

 


2.ハード・ソフトのデジタル基盤整備

全国各地に十数か所の地方データセンター拠点を整備するため、総務省「デジタル⽥園都市国家インフラ整備計画」に基づき、光ファイバ・5G・データセンターや海底ケーブルのハード整備を地方のニーズに合わせて推進していきます。

 

具体的には、光ファイバは2027年度末までに世帯カバー率99.9%、5Gは2030年度末までに人口カバー率99%の普及目標です。

 


5つの柱

デジタルインフラの整備

主な施策

●  光ファイバ
●  データセンター/海底ケーブル等
●  5G
●  Beyond 5G


5つの柱

マイナンバーカードの普及促進・利活⽤拡⼤

主な施策

●  マイナンバーカードの利活⽤拡⼤
●  オンライン市役所サービス
●  市⺠カード化
●  本⼈確認機能の⺠間ビジネス等での利⽤


5つの柱

データ連携基盤の構築

主な施策

●  公共・準公共領域
●  産業領域


5つの柱

ICTの活⽤による持続可能性と利便性の⾼い公共交通ネットワークの整備

主な施策

●  新たな協議の場の設定等
●  公共交通ネットワークの再構築
●  実効性のある新たな支援策の検討
●  リニア中央新幹線の早期整備


5つの柱

エネルギーインフラのデジタル化

主な施策

●  送電網の増強
●  送電線容量の効率的な利⽤
●  地域配電網の運⽤⾼度化



ハード面の基盤整備として、送配電のインフラ強化、ダイナミックレイティング技術(気温や風の影響で送電量が変わる現状をリアルタイムに把握し、効率的な送電量で電力安定供給するもの)を推進します。

 

ソフト面では、マイナンバーカードの機能である本人確認証明を利用し、生活のなかで使用する機会を増やします。マイナンバーカードがあればオンラインで行政手続きが可能になり、デジタル化により安心安全で利便性の高い社会を実現することが目標です。

 

そして、「国・地方間」「地方・企業間」のデータ連携基盤を構築し、グローバルサプライチェーンのデータ共有、スマートホームやスマートビルのシステム骨格を推進します。

参考:デジタル⽥園都市国家インフラ整備計画

 


3.デジタル⼈材の育成・確保

デジタル推進人材とは、専門的なデジタル知識・能力を有し、地域の課題をデジタルの力で解決できる人材のことです。政府は、2026年度までに230万人のデジタル推進人材の育成を目指しています。

 

また、デジタル推進人材が都市部に偏らないよう、地方でのデジタル分野等のマッチング支援や、地方公共団体によるU・I・Jターン者への就業・起業支援により人材が地域でも活躍できるような環境づくりを推進する予定です。

 


4つの柱

デジタル人材育成プラットフォームの構築

主な施策

●  デジタルスキル標準の設定
●  デジタルスキル標準に紐づける形での教育コンテンツの整備
●  地方におけるDX促進活動支援


4つの柱

職業訓練のデジタル分野の重点化

主な施策

●  公共職業訓練、求職者支援訓練、教育訓練給付におけるデジタル分野の重点化
●  人材開発支援助成金の拡充
●  3年間で4,000億円規模の施策パッケージの創設による人材育成等の推進


4つの柱

高等教育機関等におけるデジタル人材の育成

主な施策

●  数理・データサイエンス・AI教育の推進
●  リカレント教育の推進


4つの柱

デジタル人材の地域への還流促進

主な施策

●  地域企業への人材マッチング支援
●  地方公共団体への人材派遣
●  起業支援・移住支援等



「デジタル人材育成プラットフォームの構築」では、全ビジネスパーソンへ学びの指針「DXリテラシー標準」などを作成。地方の企業や産業のDXに必要なデジタル人材を育成し、実践的な学びの場を提供します。

 

「職業訓練のデジタル分野の重点化」では、IT分野の資格取得を目指す訓練コースの充実、IT技術の知識や技能習得訓練への支援の拡大を図ります。人材開発支援助成金や教育訓練給付とも連携し、デジタル人材の育成や確保を目指します。

 

「高等教育機関等におけるデジタル人材の育成」では、地方の高等教育機関等からデジタル人材を継続的に輩出できるよう、全国各地にある大学で数理・データサイエンス・AI教育を促進します。大学や専門学校が自治体・企業と連携し、ビジネスパーソンに向けてリスキリングを実施する計画です。

 

4本柱のうちの1つである「デジタル人材の地域への還流促進」では、次の3点が指針となります。
 


内閣府によるプロフェッショナル人材戦略拠点と地方金融機関、株式会社地域経済活性化支援機構の取り組みの強化。



ベンチャーキャピタルやスタートアップ専門の職業紹介事業者との連携で、人材のマッチング支援の実施。



地方の課題解決に努める地方公共団体に対してスキルの高い外部人材を派遣。デジタルを活用し、地方の課題解決を目指す起業を支援。




4.誰もがデジタル化の恩恵を受けるための取り組み

地理的な制約、年齢、性別、障害の有無にかかわらず、誰もがデジタル化の恩恵により豊かさを実感できる社会の実現を目指しています。

 

例えば、高齢者が身近な人からデジタル機器などについて学ぶことができるよう、「デジタル推進委員」の取り組みがスタート。また、地域の子どもがICT活用について学ぶことができる「ICTクラブ」の普及も進めていくとしています。


5つの柱

デジタル推進委員の展開

主な施策

●  デジタル機器・サービス利用方法の学びの場を提供


5つの柱

デジタル共生社会の実現

主な施策

●  ICT活用スキルを学び合う「地域ICTクラブ」の普及促進
●  障害者に対するデジタル機器の紹介・貸出・利用についての相談等を行うサービス拠点の設置


5つの柱

経済的事情等に基づくデジタルデバイドの是正

主な施策

  ICT環境の整備
●  ICT支援人材の学校への配置促進
●  低所得世帯向けの通信環境の整備


5つの柱

利用者視点でのサービスデザイン体制の確立

主な施策

●  サービスデザイン体制を確立するための取り組み推進


5つの柱

「誰一人取り残されない」社会の実現に資する活動の周知・横展開

主な施策

●  個人や団体への表彰等
●  社会全体のデジタルへの理解・普及
●  事例の横展開




デジタル田園都市実現へ向けた地域ビジョンとモニタリング

デジタル田園都市国家構想実現へ向けた具体的な地域ビジョンは次の6つです。
 

1.スマートシティ・スーパーシティ

2.「デジ活」中山間地域

3.産学官協創都市

4.SDGs未来都市

5.脱炭素先行地域

6.MaaS実装地域

 

上記の地域ビジョンは地域の実状や資源に合うようにカスタマイズしながら決める必要があります。

地域ビジョンの例

1.スマートシティ・スーパーシティ
データ連携により市民生活の質向上、都市活動の効率性向上などを実現。新たな価値を創り出して持続可能な地域・まちづくりを目指します。また、地域課題を解決するために国家戦略特区制度を活用して規制改革を実現。データ連携や先端的サービスの実施を図ります。


2.「デジ活」中山間地域
中山間地域の基幹産業である農林漁業の「仕事づくり」を中心に、社会課題解決と地域活性化を図ります。農林漁業関係者に加え、デジタル技術に長けた内外の人材を巻き込みながら、豊かな自然、魅力ある地域資源・文化を活用していきます。


3.産学官協創都市
若者を地方に惹きつけるための学びの場・働く場を確保。そのため、地元企業や地方公共団体が連携し、地方大学に向けて地方活性化の取り組みを促します。


4.SDGs未来都市
地方課題とSDGsが対象とする社会課題は、共通するものが多いです。そこで、SDGsの理念である「経済」「社会」「環境」の三側面を地方活性化に取り込み、未来志向で持続可能な地域づくりを目指します。


5.脱炭素先行地域
2030年度までに家庭および業務の電力消費にともなうCO2排出実質ゼロ地域(脱炭素先行地域)を実現。そのため、2025年度までに脱炭素先行地域を少なくとも100か所創出します。地方の雇用や資本を活用しつつ豊かな地方資源と自然界エネルギーを有効利用する取り組みは、エネルギー安全保障や2050 年のカーボンニュートラルにも寄与します。


6.MaaS実装地域
地域住民や旅行者一人ひとりの移動手段に対して複数の公共交通機関やタクシーなどの民間移動サービスを組み合わせ、一括で検索・予約・決済できるサービス(MaaS)を社会実装。これにより、移動の利便性向上や外出機会創出による地域活性化を図ります。


取り組みの成熟度を測るためのType1〜3分類

デジタル田園都市国家構想実現に向けた取り組みを以下の3タイプに分類し、各地方の成熟度をモニタリングしていく方針です。この分類は各地方の取り組みを政府が支援する指標となるので、自治体担当者の方は理解しておく方が望ましいでしょう。


Type1(スターター)
デジタル原則を参照した検討を開始しており、他の地域等で既に確立されている優良なモデル・サービスを活用して、地域の個性を活かしたサービスを地域・暮らしに実装する取り組み。なお、優良なモデル・サービスの事例集は別途提供予定。

Type2(プレイヤー)
デジタル原則と構造を遵守し、オープンなデータ連携基盤を活用するもの。

Type3(リーダー)
Type2の中でも、デジタル田園都市国家構想の達成までのやり取りを先行開発できるもの。


 

これら3つの分類は以下の要件で評価されます。

 



【共助要件】
特定されたビジョンのもと、複数の事業者が連携し、サービスの生活実装に取り組んでいること。
なお、技術実証ではなく「生活への実装」を目指すものであり、継続的に取り組め、将来的には全国展開可能なものであることが必要。

【デジタル原則要件】
官民及び民間事業者間での相互連携性の確保をはじめ、デジタル原則にコミットしていること。

【オープン基盤要件】
オープンなデータ連携基盤を活用する(予定のものである)こと。全国展開の可能性を持つこと。


 

そして、それぞれのタイプは以下の条件によって分類されます。

 

Type1の条件|共助要件 + ベストプラクティス横展開型ができる

Type2の条件|上記3要件を全て満たし、取り組みを本格化できる

Type3の条件|上記3要件を全て満たし、全国の取り組みをリードできる



デジタル田園都市実現への指標「Well-Being」指標とは

Well-Being指標とは、デジタル田園都市国家構想を実現していく中で、事業ごとの活動が市民のためになっているかどうか確認するための指標です。これまでのまちづくり事業は、事業ごとにKPIを設定して活動していましたが、ユーザーである市民の満足度を確かめることなく進められていました。

 

しかし、市民の幸福感は、経済や社会などの外的要因にも影響されやすく、可視化することも難しいです。そこで、市民の幸福感(Well-Being)を見える化するために、身体的健康・精神的健康・社会的健康の3項目を各自治体でアンケート調査をしています。このアンケート調査結果は「主観データ」と呼ばれ、各自治体の現状を表わすものです。

 

そして、主観データと外部統計データ(客観データ)を比較し、各自治体の現状分析が可能となっています。これら「主観データ」と「客観データ」を用いた各自治体の分析結果は、Type1〜3の成熟度評価に使われたり、他の自治体の参考になったりとさまざまな使い方がされています。

 

なお、各自治体の分析結果はレーダーチャートとサマリで表されており、参考にしたい自治体のデータも一般社団法人スマートシティ・インスティテュートの下記リンクより無料ダウンロード可能です。

参考:一般社団法人スマートシティ・インスティテュート
 



デジタル田園都市国家構想の交付金

国からのデジタル田園都市国家構想推進交付金は、取り組み内容によって評価・分類の結果、採択されます。交付金は「デジタル実装タイプ」と「地方創生テレワークタイプ」の2種類あり、どちらも事業立ち上げに必要なハード面・ソフト面に対する財政支援です。

 

交付金は、デジタル活用に意欲的で自主的な取り組みをする地方公共団体に対して採択され、地方課題解決や魅力向上をデジタル化で実現を目指す取り組みに使われます。

 

それでは、「デジタル実装タイプ」と「地方創生テレワークタイプ」を詳しく解説します。

 


デジタル実装タイプ

対象者は、「都道府県や市町村または地方自治法(昭和22年法律第67号)第284 条第1項の一部事務組合もしくは広域連合」となっており、申請上限は同一都道府県で最大9事業、同一市町村で最大5事業です。

 

事業の申請上限はType1〜3を含めた数のため注意しましょう。

 

交付対象事業費の上限・補助率は以下になります。


種別
Type1

補助率
1/2

交付上限額
1事業あたり国費1億円(事業費ベース2億円)


種別
Type2

補助率
1/2

交付上限額
1事業あたり国費2億円(事業費ベース4億円)


種別
Type3

補助率
2/3

交付上限額
1事業あたり国費6億円(事業費ベース9億円)


地方負担は通常、交付対象事業費の50%となりますが、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の充当が可能です(算定率は通常の地方負担分より80%)。デジタル実装タイプの交付金を申請するには共通要件と各種タイプ別の要件があり、両方を満たさなければなりません。

 

Type1〜3の共通要件は以下の二つです。


1.デジタルを活用して地域の課題解決や魅力向上に取り組むものであること
(当該事業の成果が地域課題解決や魅力向上に資するものであり、複数年にわたって計測するためのKPIを設定していること)

2.コンソーシアムを形成する等、地域内外の関係者と連携し、事業を実効的・継続的に推進するための体制が確立されているものであること
(地方公共団体、民間事業者、地域の団体、国、専門家など、地域内外の関係者が1つの共同体を作り、事業の実現に向けて参加・連携する体制を構築していること)


 

 

そして、各種タイプの要件は以下になります。


Type1
● 他の地域等ですでに確立されている優良なモデル・サービスを活用して、地域の個性を活かしたサービスを地域・暮らしに実装する取り組みであること
(地方公共団体等が関与してすでに実証、導入されているモデルやサービスを当該地域に迅速に横展開するもの。ただし、これらのモデルはデジタルを活用して地域課題解決や魅力向上に努めたものでなければならない。)
● 相互運用性の確保などデジタル原則(構造改革のための基本原則)の遵守に向けた検討を開始していること
(データの相互運用性により将来的な横展開や地域間・分野間の連携が期待できる取り組みを優先して評価する)

Type2
● 官民および民間事業者間が相互連携できており、デジタル原則に準拠している旨と、技術実証ではなく生活への実装を目指すもので、継続的に取り組み、将来的には全国展開を志向するビジョン等を表明しているもの(実施計画に記載)
● データ連携基盤(デジタル庁の提供するもの又は海外や他地域で実証/実装実績あるもので事前にデジタル庁と調整済のもの)を活用し、複数のサービス提供事業者が同基盤上でサービス提供する予定があること

Type3
● Type2の要件を満たし、2022年夏までに試行を含む一部サービスをリリースすること


 

 

デジタル実装タイプの先進事例は以下の通りです。

● 相乗りマッチングシステムによる「地域の足の確保」
● 遠隔双方向ライブ授業による 「教育機会の充実」
● 自動走行トラクター・ドローン農薬散布


地方創生テレワークタイプ

本タイプは地方創生テレワーク交付金の後継であり、「転職なき移住」を実現させる制度です。

 

申請タイプはKPIの違いで2種類に分かれており、S~Cの4段階評価で採択結果が変わります。たとえば、高水準タイプで申請していても、評価がB、Cであれば標準タイプでの採択となるため補助率が変わるのです。

 

具体的な申請タイプの内容は以下を参照ください。


タイプ
高水準タイプ

補助率
3/4

タイプ内容
●  2026年度末のサテライトオフィス等施設を利用する企業数を設定のうえ、そのうち、所在都道府県外の企業が3社以上
●  2026年度中のサテライトオフィス等施設の利用者数を設のうえ、そのうち、所在都道府県外の利用者数の割合が5割以上
●  事業開始から2025年度末までの移住者数がサテライトオフィス等施設の所在する市町村の人口の0.01%以上

審査者
有識者


タイプ
標準タイプ

補助率
1/2

タイプ内容
●  2026年度末のサテライトオフィス等施設を利用する企業数を設定のうえ、そのうち、所在都道府県外の企業が1社以上
●  2026年度中サテライトオフィスの等施設の利用者数を設定のうえ、そのうち、 所在都道府県外の利用者数の割合が3割以上
●  事業開始から2025年度末までの移住者数を設定

審査者
事務局


 

 

そして、地方創生テレワークタイプの申請対象者は3パターンです。


1.「東京都・埼玉県・千葉県及び神奈川県(東京圏)」以外の地方公共団体
2.東京圏内の条件不利地域を含む市町村又は東京圏内の2010年~2020年の人口減少率が10%以上の市町村
3.東京圏内の都県のうち、2の域内に事業を限定して行う都県



対象事業は5パターンあり、以下のいずれかまたは組合せにより実施する事業が対象となります。

1.サテライトオフィス等整備事業(自治体運営施設整備等)
2.サテライトオフィス等開設支援事業(民間運営施設開設支援等)
3.サテライトオフィス等活用促進事業(既存施設拡充促進)
4.進出支援事業(利用企業助成)
5.進出企業定着・地域活性化支援事業

また、対象施設はテレワークで働く環境または機能を有しており、事業を実施する地方公共団体の区域内に所在する施設でなければなりません。

出典:令和4年度デジタル田園都市国家構想交付金デジタル実装タイプ 地方創生テレワーク制度概要



まとめ

デジタル田園都市国家構想を実現するポイントとして、デジタル化で地方でも住みやすい環境をつくり、地方が継続的に利益を生み出す仕組みをつくること、また、環境づくり・仕組みづくりは地方公共団体や大学、企業の垣根を超えた共同体で取り組むが重要となります。


▶監修・解説:並木将央氏

日本の成熟社会の専門家、経営コンサルタント、株式会社ロードフロンティア代表取締役社長。

1975年生まれ。東京理科大学大学院工学研究科電気工学専攻博士前期課程修了、日本テキサス・インスツルメンツ株式会社、つくば研究開発センター研究員勤務。法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科修士課程修了。株式会社ロードフロンティアを設立し、成熟社会経営コンサルティング、企業セミナーや大学での講演などを幅広く行う。2014The Japan Times「次世代のアジアの経営者100人 2014」に選出。人口減少に伴う「成長社会」から「成熟社会」という社会の大きな変化に対応した経営変支援。人材獲得、人材育成、業務効率化、資金繰り、売上UPなどの課題を同時解決するコンサルティングサービスを提供。




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