【椎川氏が解説】地方創生で大切なことや、上手く行っている自治体事例をご紹介(後編)

今回の特別インタビューは、一般財団法人 地域活性化センター理事長、総務省地域力創造アドバイザーなど、様々な形で地方創生に取り組んでいらっしゃる椎川忍氏をお招きし、地方創生の現状や大切な視点、上手く行っている自治体の取り組みなどについてお伺いをさせていただきました。
前編に続き、後編をお届けいたします。

※前編はこちらから


まち・ひと・しごと創生総合戦略の第2期の現状について

住民が自治体と一緒になってまちづくりに取り組んでいる地域の共通点とは

椎川さんのお話を聞いていると、まちづくりや地方創生に大切なことは、住民の方々が前向きに、自治体と一緒にまちづくりに取り組むことなのかな、と感じるのですが、そのような地域にはどういった共通点があるのでしょうか?

[椎川氏]
そうですね、移住者の皆さんも、自然条件が良いとか、政策が良いとか、住みやすいとか、色々な客観条件が選定基準にあると思いますけれど、やっぱりそこに住んでいる人たちが、生き生きと自分たちがやりたいことに取り組んでいることが大切です。
それと、住民の皆さんに卑屈さがないということも重要です。
例えばその地域に行ってみて、「俺達んところは何もないから、こんなとこ来てもしょうがないよ」って言われると元気がなくなりますね。

海士町なんて、「ないものはない」と言っているんですよ。
これには二つの意味があって、なんでもあるという意味と、それと裏腹にないものはないと言い切る。
そうやって胸を張って、とにかく自分たちでできることやってこうっていうメッセージを発信していることで、非常に前向きな人たちがどんどん呼び込まれてきています。
そういう人たちを見ていると、移住者の方々も「自分にもできるんじゃないか」という気持ちになるわけですね。

それと、その地域の住民自身が地方創生の意味というものをよく理解をしていることも共通点の一つです。
「自分たちの集落は何をやったら将来も生き残れるのだろうか?」
「今までは人口減り続けてきたけど、少しでも頑張って生き残ろう!」
というような姿勢を持っています。

鹿児島鹿屋市の柳谷集落、通称「やねだん」と言いますけど、ここは有名ですね。
私ももう10何年通っているのですが、ここは私が最初に行っていた頃に、小中高校生だった人たちが、今結構戻って来ているんですよ。
集落ぐるみで子育てをやってきたんですね。
ですからその子どもたちは、大人になってやねだんで自分たちも子育てしたいという気持ちになる。
そういう点で全国から注目された集落ですから、小宮山宏さんも行かれましたし、それから石破茂さん、小泉進次郎さん、池上彰さんなど、様々な人が訪れています。
やねだんでは、全国から人を集めて故郷創世塾っていう塾を年2回やっているんですけれど、そういった著名な方々も講師として来てくれるようになったんです。
そういう大人たちの背中を子供たちも見ていてですね、自分たちの地域に自信を持つ、という成果が出ています。
これ20年前からやっているので20年掛かっているんですね。

だから3、4年で何か成果を出すというのは難しくて、やっぱり住民の方達が立ち上がって10年20年と頑張っている地域、そういうところが成功していくのだろうと思うんですね。
ですから、地域全員で地方創生の本質に気付き、できるだけ早く立ち上がることが必要だと思うんですよ。


自治体における外部副業人材の活用

最近、自治体の副業人材活用が少しずつ進んでいっている感じがしますけれども、そういう副業人材の活用がうまくいっている地域とそうではない地域、何か特徴があれば教えていただけますでしょうか?

[椎川氏]
それはですね、行政っていうのは守秘義務だとか、色々ややこしい事もありますので、やはり首長さんをはじめ、幹部の人たちがいかにそういうことに前向きかっていうことによるんじゃないでしょうか。
こういう発想を幹部の人たちが持てると良いですよね。
やっぱり下から積み上げるようなボトムアップ型の提案の場合、そういう新しい取り組みはやりづらい体質が行政にはあるんですよね。若い人が苦労しちゃってね。
トップダウン的に首長から「とにかく検討してみよう」と言われればみんなで取り組みやすいですよ。
ところが下から積み上げていったら「これは何か問題があるんじゃないか」と問題点ばっかり指摘されるとね、出来にくくなるのでね、やっぱりそこはトップの姿勢だと思います。


地方創生は、ビジネスであるべきか、プロボノであるべきか?

椎川さんの書籍の中に「仕事以外にプラスワンで社会貢献をする」という公務員十戒があります。
一概には言えないかもしれませんが、地方創生というのはビジネスであるべきか、プロボノ(ボランティア)であるべきか、例えば私たちのような民間の人間や、自治体職員さんたちはどちらの視点を持つべきなのでしょうか。

[椎川氏]
これはなかなか難しいですね。
民間の人は、色々と両立するのは苦労もあるでしょうけども、プロボノでもビジネスとしてやれることも、垣根なく大いにやっていただいたら良いと思いますね。
それから公務員の人ですね、先日も生駒市でオンラインでしたが、「地域に飛び出す公務員を応援する首長連合サミット10回目」が開かれてましたが、そこではここ2〜3年で副業兼業の許可のガイドラインというのを作っていましてね、今年は生駒市が主催してサミットやったんですけれど、生駒市や神戸市は熱心にそういう取り組みをやっていますね。
そして、そのメンバーの首長さん60人ぐらいおられるのですが、総じて公務員の兼業副業は、社会貢献型、地域貢献型のものであれば、常識的な報酬をもらっても原則許可してやってもらった方がいいということになっています。

特に地方は色々なところで人材が足りないんですよ。
例えば子供のサッカー指導をやる人がいないとか。
高校までサッカーやっていた人に指導をお願いする場合、民間の人が1日1万円もらえるなら、公務員の人も1日1万円もらっていいのではないかということです。
そんな例も生駒市から昔出されていました。
そういう地域貢献型、社会貢献型の副業であれば常識的な報酬をもらっても公務員がやってもいいよということだと思います。むしろ原則やってもいいということにすべきだと言っています。

今までは原則禁止で、例外的に許可するっていう制度になっているんですね。
それを自治体によっては、こういう条件を満たせば原則許可しますと、逆にしている自治体も出てきています。
それはやっぱり、地域っていうのは人材が不足しているので、公務員も多業にならなきゃ地域を支えていけないと。
地域を支える人材として、人手が足らない会社や業務を手伝いに行くということは必要なことだというふうに思います。


最後に自治体関係者の方へ応援メッセージをお願いします

[椎川氏]
私が常に言っていることは、国、都道府県、市区町村、地域というふうに、従来型の上位下達のやり方をやっていては、地方創生は中々上手くいかないということです。

やはり住民の方が立ち上がる、そのための支援、あるいは情報提供、そして集落ごと地域ごとの話し合いとか意見交換などをやっていくことが大切です。
首長さんが出かけて行くような市長懇談会とかは地域別にすでにどこでもやっているんです。
今までもやっているのだけれど、それは排水路や道路を直して欲しいとか、学校の設備を新しくして欲しいとかね、あれやってくれとかそういう要望系のことが多いんだけれども、せっかく市長との意見交換をやるんだったらやっぱり人口問題というものを地域別にきちんと議論して、集落や地域から積み上げる地方創生をぜひやってもらいたい。
そうでなければね、結局住民の人たちも本当の意味が分からないし、地域に活力が生まれてこないです。

だから公務員は今こそ是非現場に出かけていって、住民の皆さんに語りかけて、「地方創生というものをみんなでやっていくんだ!」っていう、そういうやり方をね、少し時間掛かるかもしれませんが、第二期においてはやってもらいたいなというふうに思っています。


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